赤羽、せんべろの街が“住みたい街”に変貌…「まるで吉祥寺」専門家が指摘するわけ

「新しく移ってきた人たちが既存住民と摩擦を起こさず、新しい生活をゼロから始められるのが赤羽の特徴です。これも住みやすさにつながっています」

 赤羽駅周辺では再開発計画も進んでいる。新たな商業施設や高層マンション建設が予定され、街の魅力はさらに高まる見込みだ。

 ただし価格はすでに高止まりしている。3LDKで1億円を超える物件も出てきたが、実需層にとって1億円は現実的ではない。

「一般的に6000万円台までが“なんとか手が届く”水準です。投資目的の買い手が集まらない限り、これ以上の急騰は難しい。ただ、今の水準で下がりにくい“高止まり”は続くと考えられます」

「赤羽人気は間違いなく長期的に続きます」と櫻井氏は断言する。共働き世帯が増えるなかで、都心アクセスの良さと買い物利便性、教育環境を兼ね備えた街は貴重だ。夜も活気がある街のほうが「住んで楽しい」と感じる人も多い。

周辺エリアへの波及は?

 価格高騰で赤羽に手が届かなくなった層は、戸田や川口など近隣エリアにも目を向けている。ただし、外国人住民が多い地域では好みが分かれるため、実際に現地を確認することが重要だという。

「川口は赤羽より安く、潜在的な魅力があります。外国人コミュニティの存在をどう捉えるかで評価が分かれますが、実際に行ってみれば“住みやすい”と感じる人も多いはずです」

 東京全体で見ると、住宅価格は上昇一辺倒ではない。超高額化した都心部に対し、城北・城東エリアは“最後の手の届く場所”として注目を集めてきた。赤羽や北千住はその象徴だ。

 今後、価格が大幅に下がることは考えにくいが、実需層の購買力を超える水準に達した物件は動きにくくなる。結果として「高止まり」が続く可能性が高い。

 赤羽はもはや「せんべろの街」という枠を超え、「暮らす街」として存在感を増している。街の活気、交通の便、生活インフラ、教育環境――これらを兼ね備えた赤羽は、東京の住宅事情の縮図でもある。

「赤羽は楽しい街です。街の賑わいが生活を豊かにし、共働き世帯にとっても暮らしやすい。だからこそ多くの人が憧れるのです」と櫻井氏は結んだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=櫻井幸雄/住宅評論家)