湯淺教授が指摘するように、研究現場においても「経済安全保障」の名の下にセキュリティクリアランスが強化され、中国人研究者や技術者の参加が制限される可能性がある。これは人材流動性を抑制する一方で、日本国内の研究力を高める契機ともなり得る。
さらに、AI関連技術の輸出規制が導入されることで、中国への技術流出を防ぎつつ、日本企業には政府の支援を伴う開発投資が集中する可能性がある。
高市政権がAI推進に舵を切れば、日本企業にとっては大きな成長機会となる。特に生成AI、半導体、クラウド基盤などの分野で研究開発支援が強化される可能性が高い。
一方で、国内規制が緩やかなままでは、個人情報流出や著作権侵害といったリスク対応が不十分になる懸念もある。世界市場で競争力を確保するには、推進と規制のバランスが欠かせない。
欧州や米国が規制を強めるなか、日本が「推進一辺倒」に見えると、国際協調から孤立するリスクもある。日本企業がグローバル市場で取引する上で、国際基準に適合したAI倫理やガバナンスが求められることは避けられない。
高市政権下で日本が目指すべきは、単なる規制緩和や支援の拡大ではなく、「支援型規制」というバランスモデルだろう。すなわち、研究開発と産業競争力を後押ししつつ、安全性や倫理を担保する最低限の規制を整備するアプローチである。
湯淺教授の指摘する「対中国戦略」の要素は今後も色濃く反映されるだろうが、それに加えて国際社会との足並みを揃える取り組みがなければ、日本のAI産業は孤立する可能性がある。
世界がAI規制を強化する流れの中で、日本は高市政権の下、「推進」に重きを置く可能性が高い。ただし、それは単なる緩和ではなく、経済安全保障や対中国戦略の一環としての色合いを帯びることになるだろう。日本企業にとっては追い風となるが、国際基準との整合性やリスク対応を欠いたままでは、長期的な成長は難しい。
いま日本に求められるのは、AIを国家戦略の中核に据えつつ、国際的な規範形成にも積極的に関与する姿勢である。高市政権がその舵取りをどう行うか、日本の未来を左右する重要な局面に差し掛かっている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)