「Slack上での会話から直接、ワークフローや自動化スクリプトを生成できるようになったのは画期的です。たとえばエンジニアがSlack上で『毎朝10時にサーバーログを自動取得してレポートして』と入力すると、AIがコードを生成し、ZapierやGitHub Copilotと連携して自動化するのです。これは開発者専用ツールだった領域を、非エンジニアにも解放する革命的な進化です」
SlackはAIと人間の間の“翻訳者”となり、誰もがソフトウェアを動かせる時代を切り開こうとしている。
SlackとTeamsの戦いは、実はマイクロソフトとセールスフォースという巨大企業のAI戦略の代理戦争でもある。
マイクロソフトは「Copilot」を全面に押し出し、Office製品やTeams内にAIを組み込む“閉じたAI統合”を進める。セールスフォースは「Einstein Copilot」とSlackを連携させ、CRMデータとAIを結びつける“開かれたAI連携”を推進する。
前者は「自社製品の中でAIを完結させる」モデル、後者は「外部AIを自在に呼び出す」モデル。どちらが企業ユーザーに受け入れられるかが、次の数年で明確になるだろう。
SlackのAI統合が評価され始めた背景には、企業が「1社にロックインされないAI環境」を求め始めたことがある。Copilot一強ではなく、ChatGPTやClaude、Geminiなど複数AIを使い分けるのが現実的という流れが生まれているのだ。
Slackは2021年にセールスフォースに約2.8兆円で買収された。当初は統合の混乱もあり、Teamsとの競争で後れを取っていたが、AI統合を軸に成長が再加速しつつある。
市場調査会社IDCによれば、2024年時点でビジネスチャット市場におけるSlackのシェアは約22%、Teamsが38%。ただし「ユーザーあたりの利用時間」「プロジェクト単位でのアクティブ率」ではSlackが上回るという。特にスタートアップやクリエイティブ系企業では、Slackの軽快さと拡張性が高く評価されている。
今回の機能拡張で、Slackは単なる“チャットアプリ”から、“AIネイティブな業務基盤”へと進化する。今後3年以内に市場シェアでTeamsに並ぶ可能性も現実味を帯びてきた。
生成AIの進化によって、ビジネスチャットは「人と人をつなぐツール」から「人とAIをつなぐハブ」へと変わりつつある。Slackの戦略はまさにその転換を先取りしている。
Teamsが“企業の統制と標準化”を象徴する存在であるのに対し、Slackは“現場の創造性と柔軟性”を支える存在。AIの民主化が進む中で、後者の価値が再び脚光を浴びる可能性がある。
Slackの公式ブログではこう語られている。
「これからの職場では、AIエージェントも同僚の一人になる。Slackはその会話の場を提供する」
AIと共に働く時代、Slackは「会話から仕事を動かす」プラットフォームの最前線に立とうとしている。Slackの進化は、単にビジネスチャットの覇権争いにとどまらない。それは「AIと人間が同じ職場で働く」という、次世代のワークスタイルの原型を提示しているのだ。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)