●この記事のポイント
・グーグルがAI検索「AI Overviews」に広告導入を進める中、回答文中や下部・上部など多様な広告表示形式を検証しており、検索の収益構造が大きく変わろうとしている。
・AIO最適化やGEOマーケティングを名乗るサービスが乱立するが、AIの引用ロジックは非公開であり、従来SEOと本質が変わらないケースも多い。安易な投資より一次情報の発信が鍵。
・AI検索はSEOで評価された信頼性の高い情報を基盤としており、E-E-A-Tや構造化データの整備は依然重要。中小企業がAIに“信頼される”存在になることが最大の差別化となる。
「GoogleがAI Overviews(AIO)やAIモードで広告表示を検証している」――。このニュースが静かにマーケティング業界をざわつかせている。
これまで、グーグルの広告モデルは「検索結果ページに広告を表示し、クリック課金で収益を得る」という明快な構造だった。しかしAIOでは、ユーザーが入力した質問に対し、AIが複数の情報源を統合して“答え”を返す。その回答文中に、広告が自然な形で挿入されるケースが報告されている。
さらに最近では、AI回答の下部に関連性の高いショッピング広告が並ぶパターンや、AI概要(Overviews)の上部に広告枠を配置するテストも確認されている。つまり、AIOでの広告表示は「回答内」「回答下」「回答上」と多層的な形で実験が進んでおり、広告の表示形式そのものが多様化しているのが現状だ。
検索行動が「リンクを探す」ものから「答えを得る」ものに変わりつつある今、企業は“AIにどう見つけてもらうか”を戦略設計の中心に置かなければならない。
●目次
これまでのSEO(検索エンジン最適化)は、ドメインの歴史・外部リンクの数・公的な信頼度といった“権威性”の指標を重視してきた。そのため行政、上場企業、大手メディアが自然に上位を独占し、創業間もない企業や中小事業者は検索上位に食い込むことが難しかった。
「良いサービスを作っても、大手が似た情報を出すだけで負けてしまう」――そんな嘆きは、中小企業経営者の共通の実感だっただろう。
一方で、AI Overviewsでは「誰が発信したか」よりも「何を、どれだけ有用に説明しているか」が重視される。AIは複数のサイトを横断的に読み込み、ユーザーの質問に“最適な要約”を返すため、ドメインパワーよりも情報の具体性や独自性が評価されやすくなる。
「AI検索では“権威”よりも“有用性”が重要になります。専門性の高いコンテンツを出していれば、中小企業でもAIに拾われる可能性が十分あるのです」(ITコンサルタント・小平貴裕氏)
AIOは、検索結果の最上部に「AIによるまとめ」を提示する機能だ。たとえば「中小企業 採用 成功事例」と検索すれば、AIが複数サイトの情報を統合し、「採用成功のポイントは〇〇」「中小企業の実例は△△」と簡潔な回答を返す。
この構造では、ユーザーが“クリックせずに理解できる”ようになる一方、従来のウェブサイトへの流入数(CTR)は大きく減少する。米国では、AIOが表示された検索でクリック率が平均40%以上減少したとの報告もある。