
●この記事のポイント
・人口減少と低金利で貸出先を失った地方銀行にとって、再生可能エネルギー融資は数少ない成長分野となった。しかし、その拡大の裏で、事業実態を伴わない“金融商品化”が進みつつある。
・地域資源を生かし、再エネ収益を地元に還流させる成功例がある一方、審査の甘さや転売目的の案件も増加。地銀の「目利き力」が今、厳しく問われている。
・金利上昇、出力制御、FIT終了後の設備老朽化──再エネ融資は将来、座礁資産化するリスクも抱える。地銀は伴走者としての覚悟を持てるのかが分岐点だ。
かつて地方銀行にとって、エネルギー事業への融資は、電力会社やインフラ企業向けの「堅実だが地味」な案件にすぎなかった。しかし、2012年のFIT(固定価格買取制度)導入を境に、その景色は一変する。
今や再生可能エネルギー事業は、人口減少と低金利に喘ぐ地方銀行にとって、数少ない「成長ストーリー」を描ける分野となった。だが、融資競争の過熱とともに、事業実態を伴わない“金融商品化”が進み、再エネは次第にマネーゲームの様相を帯び始めている。
再エネ融資は地方創生の福音となるのか。それとも、かつての不動産バブルのように、地域金融を蝕む負の遺産となるのか。その分水嶺はいま、静かに迫っている。
●目次
地方経済の地盤沈下が続くなか、地銀の伝統的な貸出先は急速に細っている。製造業や小売業の設備投資は鈍く、住宅ローンも人口減少で伸び悩む。その一方で、際立って増えているのが再エネ関連融資だ。
環境省や金融庁の資料を見ても、地域によってはエネルギー関連事業への融資残高の伸び率が、全産業平均を大きく上回っている。太陽光や風力は広大な土地を必要とするため、必然的に地方が主戦場となり、地銀にとっては「地元で完結する数億円規模の大型案件」となる。
さらに近年は、融資にとどまらず、地銀自らが事業スキームに深く関与する動きも目立つ。
■成功例:秋田銀行に見る「地域密着型モデル」
風力発電の適地として知られる秋田県では、秋田銀行が中心となり、地域一体での風力発電事業を支援してきた。同行は子会社「あきぎんリサーチ&コンサルティング」などを通じ、事業計画の策定から関与し、単なる資金提供者にとどまらない役割を果たしている。
外資ファンド主導になりがちな再エネ事業において、売電収益を地域内に還流させるこのモデルは、「地銀ならではの価値」を示す好例だろう。
一方で、再エネ事業がFITによる「安定収益」というお墨付きを得たことで、金融商品としての側面が過度に肥大化しているのも事実だ。
太陽光発電設備を小口証券化し、個人投資家から資金を集めるスキームはすでに一般化した。資金調達の裾野が広がった反面、「発電効率」や「O&M(運転・保守)」の実態よりも、表面上の利回りだけが独り歩きする土壌が生まれている。
問題は、こうした案件に対する地銀の目利き能力だ。融資残高の拡大を求められる営業現場では、「再エネ」という看板だけで審査が甘くなるケースも否定できない。
■失敗例:不適切融資と事業破綻のリスク
過去には、地権者との調整不足や土砂災害リスクを軽視したまま融資が実行され、工事中断に追い込まれた太陽光案件も報告されている。また、発電設備を完成後すぐに転売する「キャピタルゲイン狙い」の事業も少なくなく、長期的なエネルギー供給という本来の目的が後景に退いている例も目立つ。