2024~2025年に利上げが始まり、5年据え置きが適用された場合、最初の本格見直しは2029年前後となる。これがいわば「2029年の崖」だ。
「変動金利を選んだこと自体が問題なのではない。問題は“金利が上がっても返済額は変わらない”という誤解だ。実際には、将来の自分にツケを回しているにすぎない」(同)
では、どの程度の利上げがあれば固定への借り換えが合理的になるのか。田中氏に具体的なモデルで試算してもらった。
【前提条件】
・借入残高:4,500万円
・残期間:30年
・現在の変動金利:0.45%
・固定金利(借り換え):1.80%
・借り換え諸費用:約100万円

結論は明快だ。今後0.25%刻みで「6回(計1.5%)」の利上げがあると見込むなら、100万円の手数料を支払ってでも固定に切り替えた方が合理的となる。
逆に、利上げが2~3回で止まると読むなら、現時点での借り換えは得策とは言い切れない。
「住宅ローンは“金利の予想ゲーム”ではない。重要なのは、金利が上がったときに家計が耐えられるかどうかというリスク許容度だ」(同)
1. 残期間と残高
残期間が短い、あるいは残高が小さい場合、金利上昇の影響は限定的だ。手数料負担の方が重くなるケースも多い。
2. キャッシュフロー耐性
金利2%時に月2~3万円増えても生活が破綻しないか。教育費ピークと重なる世帯は要注意だ。
3. 団信の再審査
借り換えには健康審査が伴う。将来の持病リスクを考えれば、保障内容を見直す機会にもなり得る。
田中氏は次のように助言する。
「固定への借り換えは“保険料”を払って不確実性を消す行為。精神的安定という価値も無視できない」
多くの日本人は住宅ローンを「一度組んだら終わりの借金」と考える。しかし、金利が動く世界では、それは運用商品と同様に定期的な見直しが必要な“負債ポートフォリオ”だ。
変動金利が8割を占める現状は、低金利という“追い風”の中で形成された結果にすぎない。環境が変われば最適解も変わる。
2029年の見直し期を目前に、私たちは問われている。「みんなが変動だから」という同調ではなく、自分の家計と人生設計に照らしてリスクを再定義できているか。
金利のある世界では、判断を先送りすること自体がリスクになる。
住宅ローンは“借金”ではなく、“戦略”である。10年後の資産形成の明暗は、今この瞬間の選択にかかっている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=田中真一/ファイナンシャルプランナー)