EUではGDPR(一般データ保護規則)により、生体情報の収集には極めて厳格なハードルが課されている。日本は実装の速度でリードしているが、規制面では「後追い」の状態だ。
「便利だから」という理由だけで突き進むのではなく、利用者がいつでも「自分の顔データ」の利用を停止・削除できる権利(顔パス拒否権)を実効性のある形で担保しなければ、将来的な社会的反発を招くリスクがある。
2030年代、私たちは財布もスマホも持たずに一日を過ごしているかもしれない。鉄道、コンビニ、オフィス、そして自宅のドアまでもが、私たちの「顔」を鍵として認識する未来だ。
しかし、その便利さの代償として、私たちの行動履歴がすべてデジタルデータとして紐付けられる重みを忘れてはならない。技術の社会実装を持続可能にするのは、以下の三つの信頼設計である。
(1)同意の実質性:形式的な規約同意ではなく、ユーザーがリスクを理解した上での選択。
(2)データの透明性:誰が、何の目的で、いつまでデータを保持するか。
(3)代替手段の保障:顔認証を使わない自由を、技術的に疎外しないこと。
企業・行政・立法の三者が、技術の加速に法とガバナンスの速度を合わせられるか。日本が「監視社会」ではなく、真に「快適なスマート社会」を構築できるかの瀬戸際に、私たちは立っている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=小平貴裕/ITジャーナリスト)