三菱商事「ベトナム石炭火力」稼働…脱炭素時代の現実解とエネルギー地政学

 核融合と SMR の商用化へのカウントダウン。 実験段階にあった核融合発電は、2020年代に入り民間投資の流入が急増し、商用化へのタイムラインが現実的な議論になりつつある。小型モジュール炉(SMR)については、日本でも規制整備と技術開発が並行して進む。実現にはなお課題が多いが、2040年代の電源構成に加わる可能性は十分にある。

石炭火力は「滑走路」である

 資源を持たない国家が、いかに技術と外交によってエネルギーの自律性を高めるか——それが日本のエネルギー戦略の本質である。

 ブンアン2の稼働は、その文脈から切り離しては評価できない。石炭火力は「終着点」ではなく、水素・アンモニア・SMRといった次世代技術を社会に実装するまでの「滑走路」だ。その滑走路を使いながら、並行してエネルギー技術の知的財産を蓄積し、アジア全域のインフラ権益を確保していく——これが日本企業の描く「現実的な脱炭素」の全貌である。

 理想を語るだけでは電力は灯らない。一方で、現実に甘えれば脱炭素の目標は空文化する。その狭間で綱渡りを続ける日本のエネルギー地政学は、ブンアン2の開所式を経てもまだ、長いリレーの第一走者を送り出したにすぎない。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=佐伯俊也/エネルギー政策研究家)