2025年通年のエネルギー・発電部門の売上高は127億ドルと、前年から27%成長した。自動車部門の売上高が前年比10%減となった一方、エネルギー事業は堅調に拡大を続けた。テスラの収益構造は静かに、しかし確実に変容している。
テスラの年次報告を注意深く読んでいる投資家はすでに気づいている——「EVメーカー」という括りで同社を評価するのは、もはや実態に即していないことに。
市場の一部では、テスラが「EV事業から離脱しつつある」という解釈も聞かれる。しかし正確にはこうだ——テスラはEVの「台数を売る」ビジネスから、「移動をプラットフォーム化する」ビジネスへとピボット(戦略転換)しようとしている。
その象徴がCybercab(ロボタクシー)だ。
2026年Q1において、ロボタクシーの有料走行マイルは前四半期比でほぼ倍増した。テスラはすでにダラスとヒューストンでサービスを展開しており、2026年末までに約12の州へ拡大する方針を示した。マスクは「今年の収益インパクトは限定的だが、来年は本格的に意味のある規模になる」と述べた。
さらに注目すべきはモデルSとモデルXの生産終了だ。テスラは1月、フリーモント工場のモデルS/X生産ラインを停止し、そのスペースをヒューマノイドロボット「Optimus」の生産に転用すると発表した。高級EVのラインがロボット工場に変わる——この事実は、テスラの優先順位が何であるかを端的に示している。
「モデルSは2012年に自動車業界の常識を覆した名車でした。その生産を打ち切ってロボット工場にするという決断は、マスクにとってもセンチメンタルな選択肢ではなかったはず。それだけロボティクスへの確信が強い、ということです」 (同)
250億ドルという設備投資の内訳を理解するには、テスラが今年何を同時並行で進めているかを把握する必要がある。
第一にCybercabの量産立ち上げ。年内の量産開始が予定されており、既存のモデルYロボタクシー車両を段階的に置き換えていく計画だ。
第二にOptimusの本格生産体制の構築。テスラはQ2からOptimus大規模工場の建設準備を開始し、年産100万台ラインの構築を目指している。Gen3(第3世代)の披露は2026年中頃を予定、量産開始は7〜8月の見通しだ。現時点での生産速度は「非常にゆっくりとしたものになる」とマスクは認めつつも、「いずれOptimus事業はテスラの他すべての事業の合計を上回る規模になる」と断言する。
第三に次世代AI計算基盤の増強。Dojoスーパーコンピュータの拡充と、次世代AIチップ「AI5」の開発が進む。このAI5はOptimus向けおよびデータセンター向けが優先され、車両への実装は2027年以降の見通しだ。
これらすべてに資金を投じながらも、Q1においてFCFは黒字を維持した。経営の効率化と在庫管理の徹底による「守りの黒字」が、攻撃的な投資の原資となっている構図だ。
「250億ドルというCapexは、一見するとリスクに映る。しかし1社でEVプラットフォーム、蓄電池インフラ、ロボタクシーネットワーク、ヒューマノイドロボットを同時に開発できる企業はほかに存在しない。スケールメリットとデータ資産の複合効果が、先行投資のリスクを相当程度緩和している」(同)
この1年、テスラの経営環境を語るうえで避けられないのがトランプ政権の政策変更だ。インフレ抑制法(IRA)に基づく最大7,500ドルのEV購入税額控除は縮小・撤廃の方向へ向かい、消費者のEV購入意欲を削ぐ要因となった。これが2025年第1四半期の自動車売上高が前年比20%減という苦境をもたらした大きな要因の一つだ。