しかしテスラは逆説的にも、この逆風から一定の恩恵を受ける側面がある。
BYDやNIOなど中国メーカーへの関税強化は、米国市場における競合を実質的に排除する効果を持つ。またトランプ政権が電力インフラへの民間投資を促す政策を推進しているため、Megapackビジネスの需要は構造的に増大する可能性がある。EV補助金の消滅はテスラにとっての向かい風だが、自国保護的な貿易政策は相対的な追い風でもある。
テスラを評価する「ものさし」は、静かに変わりつつある。
四半期ごとの「販売台数」や「売上高」は依然として重要な指標だ。しかし今のテスラを本質的に理解するためには、別の3つの指標に目を向けるべきだろう。
(1)ロボタクシーの展開速度——自律走行マイルの累積、展開州数、有料顧客数の伸び。
(2)FSDの有料加入者数——現在約130万人。ここからどれだけの速度でサブスクリプション収入が積み上がるか。
(3)Optimusの初期生産実績——2026年7〜8月に量産ラインが動き出した際、初年度に何台を生産できるか。
短期的なリスクは明確だ。CFO自身が「FCFのマイナス転落」を認めており、250億ドルの投資が計画通りに成果をもたらすかどうかは未知数だ。ロボタクシーの規制対応、Optimusの歩留まり、そして市場競争の激化——いずれも予断を許さない。
しかし中長期の視野で見れば、テスラが取り組んでいるのはEVの販売という「製品ビジネス」から、移動・エネルギー・ロボティクスを統合した「プラットフォームビジネス」への転換だ。マスクがかつて掲げた「年間50%成長」という量的目標は、今や「AIインフラの構築スピード」という質的目標に取って代わられている。
今のテスラを”売上高で見るべき会社”と思っている投資家は、本質を見誤っているかもしれない。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=高野輝/戦略コンサルタント)