テスラ・BYD・グーグルがサムスンに殺到…TSMC「キャパオーバー」で半導体に地殻変動

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●この記事のポイント
TSMCの先端プロセス(2nm・3nm)が2028年まで完全予約済みとなる中、テスラ(AI6チップ、165億ドル契約)・BYD(自動運転チップ)・グーグル(TPU・Axion)がサムスンのファウンドリに相次ぎ接触。サムスンの2nm歩留まりは60%超に改善、2026年Q3の黒字転換が視野に入る。

 先端半導体の製造能力は2028年まで完全予約済み。追い詰められた世界のテック大手が、苦境からの脱出を図るサムスンに熱い視線を送っている。

 2026年6月、半導体業界に大きな地殻変動が報じられた。Nikkei Asiaの報道によると、グーグル、AMD、BYD、テスラといった世界的な大手企業が、相次いでサムスン電子のファウンドリ(半導体受託製造)事業との協業を本格化させているという。

 その背景には、台湾積体電路製造(TSMC)が引き起こした、かつてないスケールの「製造能力の限界」がある。

 TSMCの先端プロセス(3nm・2nmクラス)は、エヌビディアのAI GPU、アップルのiPhone・Macチップ、ブロードコムのデータセンター向け半導体といった超大口顧客の受注で、2028年まで事実上フル稼働の状態だ。ブロードコムの幹部が「TSMCの生産能力は限界に近い」と公式の場で認めたほど、逼迫感は臨界点に達しつつある。

 TSMC自身も手をこまねいているわけではない。2026年末までに3nm・2nmウエハーの生産量を最大20%増やす計画を進め、TSMC会長のC.C.ウェイ氏も「今年は全力で稼働する」と発言している。それでも供給不足は2027年以降も続くと同氏は認める。価格面でも、2nm製造コストは1枚あたり約3万ドル超と3nm比で5割以上高く、2029年まで毎年3〜5%の値上げが続くとされる。

「お金があってもTSMCには割り込めない」という現実が、世界の大手テック企業を次の選択肢へと動かしている。

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「走るスマホ」から「走るAI」へ EVメーカーが焦る理由

 特に注目されるのが、電気自動車(EV)メーカーの動きだ。かつてEVの競争力の源泉はバッテリーとモーターにあったが、今日の戦場は自動運転AIの処理能力に移った。高度な自動運転を実現するには、スマートフォンのフラッグシップ機と同等か、それ以上の先端半導体が必要になる。

 テスラはすでに、次世代FSD(完全自動運転)チップ「AI5」をTSMCとサムスンの両社で製造する体制を敷いた。さらにその先の「AI6」については、サムスンのテキサス州テイラー工場での製造が確定しており、契約規模は165億ドル(約2.4兆円)に上ると報じられている。イーロン・マスク氏がSNS上でサムスンへの謝意を公開したことで、この契約が広く知られるところとなった。

 EVで世界販売首位を争うBYDも同様だ。自社開発の自動運転チップ「璇璣(Xuanji)A3」シリーズの4nm版と、次世代2nm GAA(ゲート・オール・アラウンド)版の製造について、サムスンと交渉を進めていると報道されている。

 EV大手がサムスンに接近する背景には、もう一つの構造的な問題がある。TSMCが優先するのは、エヌビディアやアップルのような「大量・高頻度」の発注先だ。自動車向けチップは需要量がスマートフォンやAIアクセラレータほど大きくなく、どれだけ資金力があってもTSMCの生産スケジュールで後回しになりやすい現実がある。