東京都心中古マンション高騰にブレーキ…1.8億円で頭打ち、値下げ物件が急増

 日経ヴェリタスの分析でも、中古マンション価格は本来、株価に遅れて連動する傾向があるとされるが、足元では株高のペースに価格上昇が追いついていないとの指摘がある。資産価値の先行指標としての株式市場と、不動産市場との連動性に乱れが出ている点は注視に値する。

 第三に、実需層の「様子見」姿勢だ。 東京カンテイの上席主任研究員・高橋雅之氏はこれまで、新築マンションの供給減少を背景に実需層が中古市場へ流入し、株高による資産効果も相まって富裕層の購入意欲が価格を押し上げてきたと分析してきた。しかし、都心の価格が高止まりする局面では、無理のある価格帯まで背伸びして購入していた層が、相場の先行きを見極めるために購入を先送りする動きも出やすい。

「暴落」と決めつけるのは早計

 ここで強調しておきたいのは、現時点のデータは「高騰の一服」「値下げ物件の増加」を示すものであり、価格の急落・暴落を裏付けるものではないという点だ。東京23区全体で見れば、新築マンションの供給減少を背景に中古市場へ実需が流入する構造は変わっておらず、都心の希少な立地・物件には根強い需要が残る。東京カンテイは年内についても東京23区の価格上昇継続を見込む分析を示しており、市場全体が一様に縮小に向かっているわけではない。

 価格動向には地域差・物件差が大きい点にも注意が必要だ。千代田区のように希少性の高いエリアでは高値が維持されやすい一方、投資・投機目的の比率が相対的に高いとされる湾岸エリアや、コロナ禍のテレワーク需要を背景に価格が上昇した郊外エリアの一部では、需給バランスの変化が価格に表れやすいとの見方もある。ただし、これらはあくまで構造的な特性に基づく可能性の指摘であり、個別の確定的な予測ではない。

「価格調整局面に入ったとしても、都心マンション市場は一枚岩ではありません。立地、築年数、管理品質、ブランド力によって価格形成は大きく異なります。『東京のマンションが下がる』という一括りの議論は実態を正確に表していません」(同)

 不動産取引においては、売り出し価格がそのまま成約価格になるとは限らない。検討中の物件がどの程度の期間売りに出されているか、近隣の成約事例と比較してどう評価されるかを冷静に確認する姿勢が、これまで以上に重要になっている。

 市場が転換点を迎えつつあるのか、一時的な踊り場にとどまるのかを見極めるには、今後数カ月の東京カンテイなどの統計データの推移を注視する必要があるだろう。過熱と冷静さのあいだで揺れる都心マンション市場の行方は、引き続き取材を続けていきたい。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=秋田智樹/不動産ジャーナリスト)