一方で、AIに全面的に判断を委ねている企業は少数派だ。前出の調査では、約6割の企業がAIのスコアをあくまで参考情報として扱い、最終的な合否判断は人間が行う「ハイブリッド判定」を採用している。
大手企業の事例もこの傾向を裏づける。キリンホールディングスは新卒採用にAI面接を導入し、コース数を5から12へと拡大しているが、AIが担うのは行動特性のスコアリングによる評価の均質化までであり、最終的な合否判断や配属適性の見極めには人が関わる設計になっているとされる。ローソンも新卒・インターンシップ採用にAI面談を導入し、学生の98%が「体験してよかった」と好意的に評価し、内定承諾率も従来の対面面接のみの場合と比べて1割向上したと報じられている。これらの事例に共通するのは、AIが「候補者との最初の接点」や「評価の下地づくり」を担い、最終的な意思決定や候補者との関係構築は人が引き取るという役割分担だ。
学生側が面接評価へのAI活用に慎重な姿勢を示していたことを踏まえれば、こうした線引きは合理的といえる。カルチャーフィットの見極めや、候補者の懸念を対話の中で解消するといった、定型化しにくいコミュニケーションは、依然として人が担うべき領域として位置づけられている。
「AI面接がうまく機能している企業の共通点は、AIに『合否を決めさせる』のではなく、『評価の材料を揃えさせる』という位置づけで導入している点です。逆にうまくいかない企業は、AIスコアをそのまま合否基準にしてしまい、候補者体験を損なったり、本来採用すべき人材を取りこぼしたりするケースが見られます」(人事・労務コンサルタントの松本祐樹氏)
AI面接の満足度は総じて高く、ある調査では導入企業の86.7%が「満足」と回答している。ただし、その裏側にはいくつかの共通した失敗パターンも見えてくる。一つは、AIスコアへの過度な依存だ。スコアリングの数値だけを基準に機械的に合否を決めてしまうと、数値化しにくい強み(潜在的なリーダーシップや、特定分野への深い関心など)を持つ候補者を取りこぼすリスクがある。もう一つは、候補者体験への配慮不足だ。AI面接に対して前向きな学生がいる一方、「AIに評価されること」への不安や違和感を抱く候補者も一定数存在する。導入の目的や評価の仕組みを候補者に丁寧に説明しないまま導入すると、企業への印象を損ないかねない。
AI面接サービスは、対話型・録画型など方式によって特性が異なり、国内だけでも導入企業数を伸ばすサービスが複数存在する。ビデオ面接ソフトウェア市場は世界的にも拡大が見込まれており、2025年の75億米ドルから2030年には124億米ドル規模に成長するとの予測もある。選択肢が広がるなかで重要になるのが、「なぜそのスコアになったのか」を人事担当者が候補者や社内に説明できる、評価ロジックの説明可能性だ。ブラックボックス化したスコアリングをそのまま合否に使うことは、候補者への説明責任の観点からもリスクを伴う。
ここまで見てきた事例を整理すると、AI活用に向いている業務と、人が引き取るべき業務の輪郭が見えてくる。書類選考の代替や一次面接での均質的なスクリーニング、行動特性データの収集といった「定型化・標準化になじむ業務」はAIとの親和性が高い。一方、カルチャーフィットの最終判断や、候補者の懸念に寄り添う対話、配属先とのマッチング見極めといった「個別性の高い判断」は、引き続き人が担うべき領域として残る。
自社の選考フローを一次面接から内定通知まで棚卸しし、それぞれの工程が「標準化になじむ業務」か「個別の対話が必要な業務」かを仕分けることが、AI面接導入の出発点になる。導入すること自体を目的化せず、自社の採用課題(評価のブレなのか、候補者の取りこぼしなのか、単純な工数不足なのか)に照らして、任せる範囲を設計することが求められている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=松本祐樹/人事・労務コンサルタント)
※本稿のデータはフォワード社、マイナビ、レバレジーズ(NALYSYS)、労働政策研究・研修機構(JILPT)などの公表資料および各種報道をもとに構成しています。