東京23区の新築マンション平均2.65億円…世帯年収1500万円でも手が届かない構造

 もっとも、首都圏の平均価格上昇は超高額物件による押し上げ効果が大きく、市場全体が一様に「1.6億円化」しているわけではない点には注意が必要だ。中古マンション成約価格や郊外エリアの新築価格は、都心の突出した伸びに比べれば緩やかな上昇にとどまっている。したがって今後の焦点は「価格が全面的に下落するか」ではなく、金利上昇局面の中で高額帯と実需帯の価格差、および契約率の格差がどこまで拡大し続けるか、という二極化の行方にあると考えられる。

「暴落待ち」ではなく、現実的な資金計画を

 不動産価格が「自分の給与水準で買える金額まで下がってくる」のを待つという発想は、少なくとも短期的には有効な戦略とは言い難い。実需層にとって現実的な選択肢は、新築・都心という条件にこだわらず、中古物件のリノベーションや、広さを確保できる郊外エリア、あるいは賃貸を続けながら資金を金融資産に振り向けるなど、レバレッジを抑えた選択肢を組み合わせることだろう。

 1億6493万円という数字が示しているのは、景気の良さの証明ではなく、金融機関や不動産事業者が提示する「買うための」超長期ローンやペアローンの設計を、十分な検証なく受け入れることのリスクが高まっているという警鐘だと捉えるべきだ。数十年という時間軸で家計に影響を及ぼす意思決定だからこそ、金利上昇、世帯収入の変動、売却時の不確実性という複数のシナリオを踏まえた冷静な資金計画が求められている。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=伊藤健吾/不動産アナリスト)

【主な参照データ・出典】
・不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向」2026年6月・7月分
・日本経済新聞「首都圏新築マンションの7月平均価格、最高の1.6億円 港区で大型物件」(2026年8月20日)
・TBS NEWS DIG/NHK「首都圏新築マンション平均価格 7月は約1億6500万円 過去最高に」(2026年8月)
・日本銀行 金融政策決定会合発表資料(2026年6月・7月)
・モゲチェック「日銀追加利上げで住宅ローンはいつ上がる?2026年の変動金利予想」(2026年8月4日更新)
・住宅金融支援機構 フラット35/フラット50、リ・バース60 各商品説明