
●この記事のポイント
三井不動産らは2026年10月、鹿児島県指宿市で同軸二重管型クローズドループ方式の地熱発電の掘削を完了した。27〜28年度に実証を行い、早ければ29年度の商用化を目指す。大成建設は9月、CO2を熱媒体とする地熱発電の実現可能性調査に着手。熱水に頼らない2つの次世代地熱技術について、強みと課題、国の導入目標(2050年に7.7GW)を比べて検証する。
日本の地熱資源量は約2347万kWで、世界3位とされる。ところが、国内の発電電力量のうち地熱が占める割合は約0.3%(2022年度)にすぎない。資源はあるのに使えていない状態が、もう何十年も続いている。
ここにきて、2つの大手企業がこの状況を変えようと動き出した。三井不動産は10月14日、鹿児島県指宿市で「同軸二重管型クローズドループ方式」の実証に必要な掘削を終えたと発表した。その約1カ月前の9月8日には、大成建設がCO2を熱媒体に使う地熱発電の実現可能性調査(FS)に着手している。
デベロッパーとゼネコンでは、本業も技術の筋もまるで違う。両社の公表資料をもとに、それぞれの到達点と課題を整理してみたい。
●目次
従来型の地熱発電が成り立つには、3つの自然条件が必要になる。地下の「熱」、その熱を地上に運ぶ「熱水・蒸気」、そして熱水を地下にためておく「器(貯留層)」だ。このうち地表から確かめられるものはない。調査井を掘っても、十分な蒸気が出ずに撤退する例は珍しくない。
有望な地点の多くは国立・国定公園や温泉地と重なっている。そのため、自然公園法や温泉法の手続き、温泉事業者との合意形成に長い時間がかかる。調査から運転開始までは10年以上が一般的とされる。しかも資源エネルギー庁によれば、1地点の出力は1万5000kW程度と小さい。リスクが高く時間もかかるのに、規模は大きくならない。地熱が伸びなかった理由はこれに尽きる。
国も方針を改めた。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、次世代型地熱を「地熱ポテンシャルを現状の4倍以上に拡大する可能性がある技術」と明記した。同年4月には官民協議会が発足している。ロードマップの目標は、2030年代早期に次世代型の運転を始め、2040年までに1.4GW、2050年までに7.7GWを導入すること。2040年度の電源構成の見通しでは、地熱の比率を1〜2%程度に引き上げるとしている。
三井不動産、新日本科学、ジャパン・ニュー・エナジー(JNEC)の3社が採用したのは、1本の坑井に内管と外管を重ねた「同軸二重管」を入れる方式だ。地上から送り込んだ水を管の中で循環させ、地中の熱で温めて取り出す。地下の熱水や蒸気、それに含まれる成分を地上に出さない点が最大の特徴になる。必要な自然条件は「熱」の一つだけ。ここが従来型との決定的な違いだ。
実証の場所は「メディポリス指宿」。新日本科学が2015年から地熱発電所を運営している土地で、2025年度は温泉発電と合わせて年間約1400万kWhを発電した。地下の情報と運営の経験がすでにある場所を選んだことは、実証のリスクを下げるうえで理にかなっている。
報道によれば、2026年度後半に実証プラントを着工し、27〜28年度に実証を行い、早ければ29年度に商用化を目指す。実現すれば国内初になる。