売上1割増でも純利益2割減のココイチ、客増でも減益の鳥貴族…「加算型の価格」とコスト高の関係

 それでも国内の営業利益は60億円と、19.4%増えた。客数が増えれば、家賃や設備といった固定費を1人あたりで薄められる。仕入れや生産の規模も大きくなる。国内5工場への設備投資や、センター機能による店舗作業の削減といった取り組みも、その後押しをしている。

 もう一つ、見落とせない数字がある。連結営業利益164億円のうち、約6割にあたる97億円は中国などのアジア事業が稼いでいる。国内単体の営業利益率は3.0%にとどまる。「値上げしない」を国内単独の利益だけで支えているわけではない、と読むのが自然だろう。

「サイゼリヤの強みは価格そのものよりも、製造から物流、店舗作業までを自社で設計できる点にあります。一方で、為替の影響を直接受ける構造でもある。円安が長引けば、据え置きを続けられるかどうかは常に問われます」(同)

 実際、同社は今後の価格改定を「状況に応じて」行うとも記している。据え置きは絶対的な公約ではなく、効率化で吸収できる範囲で続ける判断だと受け取るのが妥当だ。

 壱番屋と比べると、違いは利益の压迫要因をどこで吸収できるかにある。壱番屋も米などの食材価格と物流費の上昇を減益の理由に挙げる。ただし既存店の客数が横ばいで、固定費を薄める「量」の効果が働きにくかった。

ココイチの減益は「つまずいた」のか、「切り替えの途中」なのか

 壱番屋は通期予想を変えていない。売上高726億円(前期比10.8%増)、営業利益50億円(同6.0%増)の計画だ。ただし上期の営業利益は20.9億円にとどまった。達成には、下期だけで約29億円を稼ぐ必要がある。前期の下期実績(約22億円、筆者計算)と比べると3割近い増益で、低いハードルとは言いにくい。

 ただ、この減益をブランドの衰えとみるのは早計だ。国内CoCo壱番屋1205店のうち直営は120店。約9割をFCが担う以上、人件費や光熱費の上昇を加盟店側に押しつけるわけにはいかない。客単価を上げて加盟店の採算を守ることは、本部にとって避けられない選択だったともいえる。

 成長の軸も増えてきている。海外のCoCo壱番屋は220店で、店舗売上高は103.6億円(前年同期比14.6%増)。3月には米大リーグ・パドレスの本拠地球場内にも出店した。もつ鍋やつけ麺などの国内子会社事業も、店舗売上高は62.8%増えている。

「ココイチは、さっと済ませる日常食から、自分好みに仕立てるちょっとした贅沢へと、位置づけが移っているように見えます。その場合、問われるのは値段に見合う体験をつくれるかどうか。今回のコラボや限定メニューは、その試行とも読めます」(同)

 今後注目したいのは、月次の既存店客数がプラスに戻るかどうかだ。単価で稼ぐ構図が、客の支持を保ったまま続けられるか。その答えは下期の数字に表れるはずだ。

「単価を上げれば利益が出る」とは限らない

 4社の数字から引き出せる教訓は、大きく3つある。

 1つ目は、客数や客単価といった需要側の指標と、利益は別物だということだ。鳥貴族は客数も単価も伸ばしたのに減益だった。値上げが受け入れられても、出店費や人件費がそれ以上に膨らめば利益は残らない。

 2つ目は、値上げの「見せ方」が客の行動を左右すること。均一価格や「手頃な入り口」を残す設計は、客に合計額を意識させにくい。加算型はその逆で、値上げ局面では客数の動きをより注意深く見る必要がある。

 3つ目は、コスト高を吸収する場所がどこにあるかだ。マクドナルドは規模と店舗運営の効率で、サイゼリヤは自社の生産・物流と客数の増加で吸収している。ただしサイゼリヤの場合、国内の利益率は薄く、アジア事業の稼ぎが全体を支えている。どのモデルにも、それぞれの弱点はある。

 外食に限らず、値上げを検討している企業は多いはずだ。そのときに問うべきなのは、「いくら上げるか」よりも「自社の利益はどのコストに左右され、どこで吸収できるのか」だろう。今回の4社の決算は、その問いを考えるための具体的な材料になる。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=杉田誠/外食産業コンサルタント)

【主な参照データ・出典】
壱番屋「2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信」(2026年10月5日)
エターナルホスピタリティグループ「2026年7月期 決算短信」(2026年9月11日)
日本マクドナルドホールディングス「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信」
日本マクドナルドホールディングス「IRセールスリポート(月次)」
サイゼリヤ「2026年8月期 決算短信」(2026年10月14日)
サイゼリヤ「2026年8月期 決算説明会資料」