ジャングリア「年利6.9%・赤字173億円」の真実…日本の事業金融と地方創生の歪みを解剖する

●大手資本の後ろ盾があるパーク
・主な後ろ盾…東京ディズニーリゾートは京成電鉄などの大株主、USJは米コムキャスト傘下のNBCユニバーサル
・借り入れの拠り所…グループの信用力
・不足時の補い方…親会社の追加出資や内部資金

●ジャングリア
・主な後ろ盾…刀を筆頭に、沖縄の企業などが分散して出資
・借り入れの拠り所…事業のキャッシュフロー(366億円の協調融資)
・不足時の補い方 追加融資(26年4月20億円、10月30億円)と新スポンサー探し

 巨額の設備投資を、大手グループの傘下に入らずに立ち上げる。日本のレジャー産業ではあまり例のない試みだった。裏を返せば、計画が下振れしたときに「親が補う」という道がない。いま起きているのは、まさにその局面である。

2. 6.9%をどう読むか

 長く超低金利が続いた日本の感覚では、6.9%は「倒産寸前」の印に見えやすい。確かに、一般的な事業向け貸出と比べれば高い。ただ、赤字が続き、追加の出資者も決まっていない借り手に、さらに資金を出す場面である。信用リスクを金利に反映させるのは、金融としては自然な判断ともいえる。政策金融機関がこの水準を付けたことは、「救済ではなく、リスクに見合う条件で貸す」という線引きと読むこともできる。

 金利の高さだけを切り取って「末期症状」と断じるのも、「問題のない市場金利」と流すのも、どちらも一面的だろう。

「6.9%は、貸し手がこの資金をあくまで『つなぎ』と位置づけていることを示す数字です。金利水準そのものより、この資金で稼いだ時間のうちに出資を集め、資本構成を立て直せるかどうか。見るべきはそこです」(金融アナリスト・川﨑一幸氏)

3. 焦点は「借金」から「資本」へ

 日本経済新聞によれば、HDは5月ごろから既存株主に追加出資を依頼していたが前向きな回答がなく、新規スポンサーの開拓に切り替えた。商工中金の関根正裕社長は4月の追加融資の際、「次は投資家の出番だ」と述べていたという。

 借り入れを重ねれば利払いが増え、稼いだ現金はその分削られる。アトラクションに再投資する余力も生まれない。第三者割当増資による新規出資や、債権の一部を株式に振り替えるDES(デット・エクイティ・スワップ)で負債を軽くできるか。その際に、既存株主の持ち分の希薄化や経営責任をどう整理するのか。再建の分かれ目は、金利よりもこちらにある。

損益計算書には映らない「やんばる」への影響

1. 「素通りされる北部」にできた目的地

 企業の損益と、地域が受け取るものは別の物差しで測る必要がある。

視点         何が起きているか
企業の損益(ミクロ) 減価償却費と利払いが重く、集客も計画を下回り、
           HDで約173億円の最終赤字
地域経済(マクロ)  開業1年の県内経済波及効果494億円、
           北部への来訪者数は半年で6.5%増、従業員1000人超

 数字の出どころを示しておく。波及効果と来訪者数は、琉球放送が報じたりゅうぎん総合研究所の調査だ。従業員数はJEの採用サイトによる。開業前の採用では、応募者の7割弱が県内在住者だった(沖縄タイムス)。

 沖縄観光は、那覇や中部西海岸のリゾートで消費が完結しやすい。北部は美ら海水族館などを目当てにした日帰りが中心だと、長く指摘されてきた。そこに、大きな目的地が一つ加わった。ただし、宿泊や周遊が定着したかどうかを判断するには、まだデータが足りない。

2. インフラへの波及は「計画段階」

 沖縄総合事務局は2025年3月、名護東道路を本部町方面へ延伸する計画ルートを自動車専用のバイパスとし、ジャングリア付近を含む中間3カ所にICを設ける方針を示した(国土交通省の公表資料)。民間の大型投資が公共インフラの議論を後押しする構図は、あり得る。ただ完成はまだ先で、テーマパークがあったから計画が動いたとまでは言えない。現時点では「議論の拠点が一つ増えた」という評価にとどめるのが妥当だ。