9月上旬、大手食品スーパーのレジ横に山積みされた5キログラム(kg)袋の精米の価格は1980円(税別)と、久しぶりに5㎏2000円以下の精米を見た。すでに新米(2026年産、令和8年産)もスーパーに並び始めており、いち早く首都圏に並び始めた南九州の早期米こそ5kg2980円であったが、千葉の新米が出回り始めると2000円台前半まで下落した。
市中で取引される新米(2026年産・令和8年産)の価格は玄米60㎏(1俵)当たり1万2000円から1万4000円台という安値で、昨年産米が出回り始めた同じ時期に比べおおよそ2万円も安いという極端な価格になっている。供給の安定と価格の安定を目的に制定された「改正食糧法」がありながらなぜコメの価格はこれほどまでに乱高下するのか?
コメの価格を示すのにメディアがよく取り上げるのが、農林水産省が公表する相対取引価格やスーパーでの小売販売価格、それと産地の農協概算金(仮渡金)である。各産地の全農県本部等農協系統が生産者に示すいわゆる概算金がその年のコメの価格のように報じられるが、これは全く違う。特に26年(令和8年産米)の概算金と市中で取引される価格とでは大きな開きがある。
各産地の農協系統が示す概算金は産地によって大きな開きがあり、高いところではコシヒカリで2万円のところもあれば1万円という安い価格を提示するところもある。ただし、これはあくまでも「概算金」であってその価格で売れたということではなく、実際に売れた価格で最終清算するというのが農協系統の共同計算方式の特徴と言える。
このため1万円の概算金を提示した農協であっても1万8000円で売れれば最終清算段階で生産者に8000円を追加で払う。これまでの慣例であれば全農県本部は収穫前に概算金を決めるにあたって、最終的に売れる見込み価格を予測し、そこから流通経費や保管料、手数料等を差し引いた価格を生産者に提示していた。
農協ではない民間企業や個人商店など商人系集荷業者は、農協系統の概算金を見て、それに1俵当たり200円から500円程度上乗せした額を生産者に提示して集荷に当たっていた。これによりその年に取引されるコメの相場が形成されるというパターンが通常であった。
ところが26年産(令和8年産)米は、これまでのセオリーというべき概算金を基準としたコメ相場が全く通用しなくなった。
なぜなら農協系統は食料システム法に定められた「コメコスト指標」(生産コスト指標2万535円)もあって、8年産米の概算金をある程度維持しなくてはならなかったが、その価格は市中で取引されている新米価格よりはるかに高い価格になってしまったからだ。農協系統が生産者に示した概算金が実際に市中で取引される価格よりはるかに高いという状態になっている。
具体例を示すと早場米産地の千葉県は、農協系統はコシヒカリの概算金1万8000円を示したが、市場で取引される価格は1万3000円から1万4000円である。これでは農協系統は集荷したコメを4000円から5000円損することになるが、農協系統の委託販売方式の共同計算はそれほど単純ではない。少しややこしくなるが、このことを理解しないと「米価(コメ相場)」の本質が見えて来ないので説明したい。
千葉県の農協系統が生産者に示した26年産(令和8年産)米コシヒカリの概算金1万8000円は、あくまでも生産者が今年6月末まで出荷予約した数量に対して支払う額で、出荷予約していない生産者が農協に持ち込む場合は「予約外米」という扱いになり、その額は1万円、農協によっては5000円という額しか支払わないところもある。