東雲しとね

東雲しとね

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児童書・童話 連載中 長編
古びた駅の忘れもの預かり所。 祖父である鋼一が亡くなって三ヶ月。 中学生の御影陸は、預かり所の鍵を握りしめ、誰も来ない駅へ向かった。 埃を払い、カウンターに座る。そこに残っていたのは、光を放つ不思議な忘れものたち。その中で、棚の影から現れたのは、白い服を着た少女、名瀬しおり。 表情は乏しく、言葉は淡々としているが、忘れものについてだけは驚くほど詳しい。 「わたしは、あなたの忘れものをお預かりしています」 忘れものとは、無意識に封じ込めた大切な感情が、形を成したもの——。 陸がそれに触れると、温もりや声、匂いや記憶の欠片が流れ込んでくる。 しおりと共に持ち主を探し、そっと手渡すたび、誰かの心に色が戻っていく。 泣けない陸。 感情を持たないように見えるしおり。 二人で過ごす放課後の預かり所には、次々と忘れものが届く。 万華鏡、コンパス、てるてる坊主、目覚まし時計……。 それぞれに、子どもたちの切ない「忘れたもの」が宿っていた。笑いあり、温かさあり、時には胸が締めつけられるような悲しさもあり。 しおりの不思議な言葉に、陸は何度も吹き出し、 返却が成功するたび、ほんの少しずつ心が軽くなっていく。忘れたものは、取り戻すべきか。 それとも、忘れたままでもいいのか——。 静かな駅に響く、忘れものと人々の物語。
24h.ポイント 42pt
小説 18,119 位 / 229,971件 児童書・童話 163 位 / 4,664件
文字数 16,380 最終更新日 2026.08.22 登録日 2026.07.30
歴史・時代 連載中 長編
「この刃は、女子供を斬ってはおらぬ――」  時は文久三年。山陰の小藩、三万二千石の伊砂見藩。城下の西町職人町で、ただ一人の藩抱え砥ぎ師として生きる青年、浅葱十郎太。彼には、亡き父から受け継いだ類まれなる眼力があった。刀身に残された微細な傷、血脂の拭い跡、研ぎ減りの具合といった痕跡から、使用者の太刀筋や手入れの癖、斬った対象までも精緻に読み解く、究極の職人技「刃文読み」である。  ある日の明け方、十郎太の元に持ち込まれた一振りの刃。時を同じくして、城下では筆頭家老の弟が暗殺されたという瓦版が飛び交い、不穏な空気が立ち込めていた。やがて十郎太は、藩からの内々の依頼によって、下手人が使ったとされる脇差を研ぐことになる。しかし、静けさに包まれた研ぎ場でただ一人、蝋燭の灯りを頼りに刀身に向き合った十郎太は、そこにあるはずのない微かな痕跡から、事件における致命的な矛盾を読み取ってしまう。  真実を隠蔽しようとする藩政の暗部が蠢く中、十郎太の周囲もにわかに騒がしくなっていく。密かに男装して夜廻りをする幼馴染の女剣士結花。裏の顔を持つ謎めいた呉服問屋の女主人鵲。そして、九年ぶりに姿を現した脱藩浪人である兄弟子、月城九郎兵衛。それぞれの思惑と過去が複雑に絡み合う中、十郎太の推理は、一人の侍の単なる暗殺事件という枠組みを超えて、伊砂見藩の全体を激しく揺るがす深い闇へと繋がっていく。  それは同時に、十年前に不審な死を遂げた研ぎ師の父と、忽然と姿を消した母の過去に直面することでもあった。権力者たちが刀を振るって隠そうとした真実を、ただ黙々と刃を研ぐことで暴いていく十郎太。亡き父の遺言を胸に秘め、決して自らは刀を抜かずに戦う職人の姿を描いた歴史ミステリー。神聖な研ぎ場から、幕末の動乱を映し出す真実の波紋が広がっていく。
24h.ポイント 0pt
小説 229,971 位 / 229,971件 歴史・時代 3,230 位 / 3,230件
文字数 5,750 最終更新日 2026.06.14 登録日 2026.05.31
ライト文芸 連載中 長編
拍手が好きだ。自分に向けられたことは、一度もないけれど。  高校三年の三谷波瑠は、ピアニストを目指す幼なじみのコンクール書類を整え、小説家志望の後輩の原稿に感想を書き、進路に悩む下級生の推薦状を練る。 放課後活動支援部、通称ゆめ部のたった一人の部員。 誰かの夢を裏方で整えることが、波瑠の放課後のすべてだった。  高三の二学期、転入生の瀬戸内廻がゆめ部にやってくる。なんでもそこそこできるのに、なんにも本気になれないという廻は、ある放課後、波瑠に尋ねた。 「お前は、何がしたいの」 波瑠は答えられなかった。その問いの形をした穴が、ずっと前から胸の真ん中に空いていたことに、気づいてしまったから。  幼なじみのピアノの才能は、遠い舞台の上でますます輝いていく。後輩の小説は、波瑠の知らないところで誰かの心を動かし始めている。みんなが前に進む。でも、波瑠だけが客席に座ったままでいる。  支えているつもりだった。でも本当は、自分自身と向き合うことから、ずっと目を逸らしていただけなのかもしれない。  夢を追って家族を置いていった父。才能を信じることをやめた母。十六年間閉ざされていた書斎の奥に眠る、一枚の絵。  すべてが繋がったとき、波瑠の足元が揺れる。  海が見える丘の上の高校で過ごす、最後の半年間。  夢を持てない少女が、夢を持てないまま、自分の足で立ちあがるまでの物語。  あの日、コンクール会場の暗い客席で流した涙の意味を、波瑠はまだ知らない。
24h.ポイント 0pt
小説 229,971 位 / 229,971件 ライト文芸 9,614 位 / 9,614件
文字数 21,013 最終更新日 2026.05.08 登録日 2026.04.09
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