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異世界とはどんなものかしら?
荷車を小さくできますか?
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「マーヤ様……今日はちゃんとお休みくださいませ」
昨日はマザー・オーリーとお話をしていたら止まらなくなり、ちょっと疲れてしまったみたいで晩御飯も食べずに眠ってしまった。
そのせいでマザー・ライムは心配しているようです。
マザー・ライムは『武の賢者』。
マザー・ミームは『知の賢者』。
マザー・オーリーは『礼の賢者』。
『武の賢者』マザー・ライムは、長身で足は悪くないけれど重そうな杖を持っている。
文字通り武器になるらしい。
でも、魔法使いではなく、攻撃用の武器だ。
「ごめんなさい。あのね……少し気になってしまったの」
「昨日、服が気になってとおっしゃられていましたが、誰か汚れたものを身に纏っておりましたか?」
「えっ……」
「そのような愚かな者がおりましたら、厳しく修行をと思っております」
な、何故か、手をグーパーとさせている。
わぁ、力強そう……。
「い、いえ、染色のことを聞いていたのです。そういえば、毎日ブラザー・ケインかブラザー・ドロスが水を運ぶのですね」
「そうです。私も昔は運んでおりましたが、瓶自体が重みがありますし、女性では難しいのです。神殿の裏口までは野菜や麦を乗せるような荷車を使いますが、小さいものは作れませんので」
「そうよね……前世で重いガスボンベとか、ビールを運ぶような簡単な二輪車とかあったらいいのにね……」
「マ、マーヤ様……!」
ついつい考えていたら、マザー・ライムの横に、想像していた押し車が現れた。
ちょっとたててあって、足でちょっと蹴るだけで動かせるようになっていて瓶が一つ分乗るサイズで、安定性のある二輪。
一輪は持ち手が二つついている、前世の作業用押しぐるまタイプ。畑で使えそう……。
「マーヤ様! おやめなさいと言うつもりでしたのに! 何かに書いて説明するなどできたでしょう!」
あぁぁ……
頭を抱えるマザー・ライムの声に驚いたのか、ブラザー・ドロスが顔を覗かせます。
「どうされましたか? うわっ、これは何ですか?」
瓶を床に置き、入ってきたブラザー・ドロスは、押し車に近づくと興味深そうに見てます。
「えっと……瓶とか重いものを運ぶ押し車です。運ぶ時は、押し手の部分に少し倒しつつ押すと、進みます。四輪でもいいのですが、場所を取りますし……」
「ちょっと触らせてください……」
「どうぞ」
ブラザー・ドロスは最初おっかなびっくりで動かしていましたが、
「ちょっと運んできます」
と言いながら瓶を運んでいきました。
しばらくして戻ってくると、
「適量……私はケインほど多く溜めて運べないので、ちょうどよく運べるようです。二つの輪が安定しています」
「あぁ、良かったです!」
「よくありません! マーヤ様!」
マザー・ライムはくわっ! と眉を吊り上げる。
「これなのですね? これが、あの《才能の無駄遣い》《能力暴走中》というものですね! 周囲もちゃんと諌めないから! ブラザー・ドロス! 貴方もなぜ、当たり前のように使うのです!」
「す、すみませんでした!」
「逃げるな! それよりも、この技術をどうすればいいのか、マザー・ミームに相談なさい! 誰かこの技術を受け入れられる技術者がいるかを! そして、マザー・オーリーにどれくらいのお金を使えるか確認しなさい! すぐにです!」
「は、はい!」
「それは、置いていきなさい!」
押して行きかけた運搬車を置いて走っていったブラザー・ドロスに、ため息をついたマザー・ライム。
うーん……部活のコーチとか監督っぽい。
迫力が違う……。
「では、よろしいですか? 皆さんが来る前に、私がしっかりお話ししましょう。マーヤ様が、今現在のご自分の立場をご理解戴けておられないようですので! 私たちが、貴女を、マーヤ様でない頃の聖女と同じように、あぁ扱いにくい、わがままで、同性には嫌がらせを、異性には媚びを売るとは、ひとっかけらも思っておりません!」
「は、はい!」
「ですが、その能力を一人で作るのではなく、この神殿の兄弟と共に情報共有をと思っているのです!」
「あ、ありがとうございます!」
「勝手に作るより、こんなものを作りたいけれど手伝ってほしいと相談くださいませ!」
1時間みっちり怒られてしまいました。
昨日はマザー・オーリーとお話をしていたら止まらなくなり、ちょっと疲れてしまったみたいで晩御飯も食べずに眠ってしまった。
そのせいでマザー・ライムは心配しているようです。
マザー・ライムは『武の賢者』。
マザー・ミームは『知の賢者』。
マザー・オーリーは『礼の賢者』。
『武の賢者』マザー・ライムは、長身で足は悪くないけれど重そうな杖を持っている。
文字通り武器になるらしい。
でも、魔法使いではなく、攻撃用の武器だ。
「ごめんなさい。あのね……少し気になってしまったの」
「昨日、服が気になってとおっしゃられていましたが、誰か汚れたものを身に纏っておりましたか?」
「えっ……」
「そのような愚かな者がおりましたら、厳しく修行をと思っております」
な、何故か、手をグーパーとさせている。
わぁ、力強そう……。
「い、いえ、染色のことを聞いていたのです。そういえば、毎日ブラザー・ケインかブラザー・ドロスが水を運ぶのですね」
「そうです。私も昔は運んでおりましたが、瓶自体が重みがありますし、女性では難しいのです。神殿の裏口までは野菜や麦を乗せるような荷車を使いますが、小さいものは作れませんので」
「そうよね……前世で重いガスボンベとか、ビールを運ぶような簡単な二輪車とかあったらいいのにね……」
「マ、マーヤ様……!」
ついつい考えていたら、マザー・ライムの横に、想像していた押し車が現れた。
ちょっとたててあって、足でちょっと蹴るだけで動かせるようになっていて瓶が一つ分乗るサイズで、安定性のある二輪。
一輪は持ち手が二つついている、前世の作業用押しぐるまタイプ。畑で使えそう……。
「マーヤ様! おやめなさいと言うつもりでしたのに! 何かに書いて説明するなどできたでしょう!」
あぁぁ……
頭を抱えるマザー・ライムの声に驚いたのか、ブラザー・ドロスが顔を覗かせます。
「どうされましたか? うわっ、これは何ですか?」
瓶を床に置き、入ってきたブラザー・ドロスは、押し車に近づくと興味深そうに見てます。
「えっと……瓶とか重いものを運ぶ押し車です。運ぶ時は、押し手の部分に少し倒しつつ押すと、進みます。四輪でもいいのですが、場所を取りますし……」
「ちょっと触らせてください……」
「どうぞ」
ブラザー・ドロスは最初おっかなびっくりで動かしていましたが、
「ちょっと運んできます」
と言いながら瓶を運んでいきました。
しばらくして戻ってくると、
「適量……私はケインほど多く溜めて運べないので、ちょうどよく運べるようです。二つの輪が安定しています」
「あぁ、良かったです!」
「よくありません! マーヤ様!」
マザー・ライムはくわっ! と眉を吊り上げる。
「これなのですね? これが、あの《才能の無駄遣い》《能力暴走中》というものですね! 周囲もちゃんと諌めないから! ブラザー・ドロス! 貴方もなぜ、当たり前のように使うのです!」
「す、すみませんでした!」
「逃げるな! それよりも、この技術をどうすればいいのか、マザー・ミームに相談なさい! 誰かこの技術を受け入れられる技術者がいるかを! そして、マザー・オーリーにどれくらいのお金を使えるか確認しなさい! すぐにです!」
「は、はい!」
「それは、置いていきなさい!」
押して行きかけた運搬車を置いて走っていったブラザー・ドロスに、ため息をついたマザー・ライム。
うーん……部活のコーチとか監督っぽい。
迫力が違う……。
「では、よろしいですか? 皆さんが来る前に、私がしっかりお話ししましょう。マーヤ様が、今現在のご自分の立場をご理解戴けておられないようですので! 私たちが、貴女を、マーヤ様でない頃の聖女と同じように、あぁ扱いにくい、わがままで、同性には嫌がらせを、異性には媚びを売るとは、ひとっかけらも思っておりません!」
「は、はい!」
「ですが、その能力を一人で作るのではなく、この神殿の兄弟と共に情報共有をと思っているのです!」
「あ、ありがとうございます!」
「勝手に作るより、こんなものを作りたいけれど手伝ってほしいと相談くださいませ!」
1時間みっちり怒られてしまいました。
応援ありがとうございます!
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