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第4章
【番外編】神に見捨てられた一族3
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バルナバーシュはゆっくり立ち上がる。
しかし、大柄だと思われた彼は細身で華奢、アルフレッドとさほど変わりが無い。
一歩踏み出そうとしてよろけ、フランシスが慌てて駆け寄り支える。
「申し訳ございません。失礼致します」
「余り気にしないで。確かフランシスだったね」
「勿体ないです。本当に……」
自分は罪の一族、上の家族と同様に……。
「ふーん、出口にいる君の家族は、罪を償い続けるのか……僕の子供達のように……あ、ごめん。君の考えていること読んじゃった。これだから気持ち悪い、化け物って呼ばれるんだよね」
自嘲するバルナバーシュに、フランシスは、
「気持ち悪い、ですか? 私はバルナバーシュ様を気持ち悪いと思えません。気持ち悪いのは私の家族です。父は努力をしない人で、兄である伯父は努力して勉強し、剣を握り騎士団に入り、ラインハルト様の元で腕を磨き、功績で今度、子爵になります。伯父を私は尊敬していたので、騎士にと思いましたが、そんな才はなく、ただ計算と数カ国の文字が読み書き、通訳ができますがその程度です。それすら家族は笑いました。その知識を磨く為に私は学校を出て、商家で働くことにしました。でも、そんなにおかしいでしょうか? 私は次男ですし、それに貴族のどこが偉いんでしょう? あっ!」
伯父の上司と宰相の前での発言に慌てて、
「いえ、騎士団長閣下や宰相さまはその地位に驕らず、様々な場所で責任ある立場を持ちながら、その任を全うしておられます。しかし、父のような下っ端で位に執着するだけでなく、欲を出し、今回は妹を使って聖女様を陥れ、その上ギロチンで公開処刑……その上、悲しみ嘆く聖女様の父君である外務大臣閣下に、妹を養女にして王子の妃として嫁がせよという無茶振りを……一代男爵の身で言い放ちました」
「うわぁ……ん? 一代男爵? 何か功績があったの?」
「父の叔父……大叔父は今健在ですが、前に同じく戦功を挙げ、その功績で元々持っていた男爵位以外、一代男爵を。子供がいないので、父を養子にと考えていたようですが、余りにも愚かなので、跡取りにするのは諦めると。代わりに一応貴族である一代男爵の方を許可を得て譲っておりました。父は焦ってました。兄も自分の才が無いのが分かっていながら、自分は能力がある、なぜ認めないんだと。母や兄の嫁、妹と散財し借金まみれで、妹に学校に出す金もなく、私が援助して学校に通わせました。でも、成績は最下位、マナーは全く……その上、婚約者のいる上級貴族の息子に声をかけ……引っ掛けたのが王子でした」
「……最悪。でも君はまともに育ったね」
「……妹を、学校に通わせるべきではなかったと後悔しております」
フランシスの物憂げな声に、バルナバーシュはあっさりと答える。
「自分の感情や力も制御できないのに、家族とはいえ他人に言うこと聞かせるなんて無理無理。そんなのは王くらいだ。それですら自分の感情に振り回されるのが多いのだからね」
フランシスに支えて貰いつつ、ゆっくり歩き出す。
先を行くのは幼いアルフィナを抱いたアルフレッド、後ろは明かり玉を回収していくラインハルトが赤ん坊を抱いて歩く。
「それに、聖女と言うのは本当にごく稀に生まれる。癒しの力は持つが、それ以外の力を持つ者はほとんどいない。その為に聖女を守る存在が最低一人は存在する。フェリシアと言う聖女にはいなかったのかな?」
「もしかしたら……私の次男のユールと魔術師長の息子のケルトでしょうか? 幼馴染みで本当に仲が良く、何かがあるとフェリシアの元に。処刑の時に絶対に許さないと……そして、ケルトは自分の命に賭して……」
「ふーん、ラインハルトだよね? じゃぁ、あのアルフィナには?」
「えと、正確には良く分かりませんが、私の長男のセシルがアルフィナを溺愛しています」
「溺愛……君の息子幾つ?」
ラインハルトは遠い目をし、
「18です。アルフィナは、6歳位ですよね」
「うーん、多分、もう少し幼いね。まぁ、良いんじゃない? あ、そうだ。ちょっと止まって」
止めると空いている手で、バルナバーシュはフランシスの頭をクシャクシャと撫でる。
「この方がいいね。ちょっといいかな」
手を伸ばすと、眠るナオミという名前の赤ん坊の額に触れる。
「うん。いい子だね。お休み……じゃぁ、行こうか」
微笑むと、アルフレッドを促した。
しばらく歩き、階段を上ると、心配そうに待っていたカーティスは、
「この方は?」
「済まないが長い間拘束されていて、歩くのも辛くてね。ここで休んでもいいけれど、居心地が悪いからどこか頼めるだろうか?」
「畏まりました。猊下……」
容姿とその拘束という言葉に、意味を理解し、カーティスは頭を下げる。
「では、こちらから、アルフレッドの屋敷に戻る馬車がございます。猊下とお子様でしょうか?」
「あぁ、そうだよ。僕はバルナバーシュ。息子のベルンハルドと後ろの子は孫のアンネリ。宜しく頼むよ」
「猊下とお呼びしましょうか? もしくはバルナバーシュ様と……?」
「猊下は、一応教会での呼び名だけどね。一年しかいなかったけど……名前で呼んで欲しい」
カーティスは頷く。
「では、バルナバーシュさま。こちらでございます。ベルンハルド殿もこちらに」
「べ、ベルンハルド……?」
「ベルンハルド。父は弱ってるから宜しくね?」
バルナバーシュは、自分を支える青年を見る。
「ち、父……あの……」
「ベルンハルド。ここには鏡はないが、お前は髪の色、瞳の色が全く変わっている。そのせいか印象も違う気がする」
ラインハルトは声をかける。
「申し訳ないが、ゆっくりとでいいから行ってくれないか。アンネリがむずがっている。多分お腹が空いたか、オムツ替えだろう。帰ってからにしよう」
「は、はい」
二台の馬車に乗り、移動する。
一台はバルナバーシュにベルンハルド、アルフィナを抱いたアルフレッド、もう一台はラインハルトとルーファス、アンネリ。
そしてアルフレッドの屋敷に到着したのだった。
しかし、大柄だと思われた彼は細身で華奢、アルフレッドとさほど変わりが無い。
一歩踏み出そうとしてよろけ、フランシスが慌てて駆け寄り支える。
「申し訳ございません。失礼致します」
「余り気にしないで。確かフランシスだったね」
「勿体ないです。本当に……」
自分は罪の一族、上の家族と同様に……。
「ふーん、出口にいる君の家族は、罪を償い続けるのか……僕の子供達のように……あ、ごめん。君の考えていること読んじゃった。これだから気持ち悪い、化け物って呼ばれるんだよね」
自嘲するバルナバーシュに、フランシスは、
「気持ち悪い、ですか? 私はバルナバーシュ様を気持ち悪いと思えません。気持ち悪いのは私の家族です。父は努力をしない人で、兄である伯父は努力して勉強し、剣を握り騎士団に入り、ラインハルト様の元で腕を磨き、功績で今度、子爵になります。伯父を私は尊敬していたので、騎士にと思いましたが、そんな才はなく、ただ計算と数カ国の文字が読み書き、通訳ができますがその程度です。それすら家族は笑いました。その知識を磨く為に私は学校を出て、商家で働くことにしました。でも、そんなにおかしいでしょうか? 私は次男ですし、それに貴族のどこが偉いんでしょう? あっ!」
伯父の上司と宰相の前での発言に慌てて、
「いえ、騎士団長閣下や宰相さまはその地位に驕らず、様々な場所で責任ある立場を持ちながら、その任を全うしておられます。しかし、父のような下っ端で位に執着するだけでなく、欲を出し、今回は妹を使って聖女様を陥れ、その上ギロチンで公開処刑……その上、悲しみ嘆く聖女様の父君である外務大臣閣下に、妹を養女にして王子の妃として嫁がせよという無茶振りを……一代男爵の身で言い放ちました」
「うわぁ……ん? 一代男爵? 何か功績があったの?」
「父の叔父……大叔父は今健在ですが、前に同じく戦功を挙げ、その功績で元々持っていた男爵位以外、一代男爵を。子供がいないので、父を養子にと考えていたようですが、余りにも愚かなので、跡取りにするのは諦めると。代わりに一応貴族である一代男爵の方を許可を得て譲っておりました。父は焦ってました。兄も自分の才が無いのが分かっていながら、自分は能力がある、なぜ認めないんだと。母や兄の嫁、妹と散財し借金まみれで、妹に学校に出す金もなく、私が援助して学校に通わせました。でも、成績は最下位、マナーは全く……その上、婚約者のいる上級貴族の息子に声をかけ……引っ掛けたのが王子でした」
「……最悪。でも君はまともに育ったね」
「……妹を、学校に通わせるべきではなかったと後悔しております」
フランシスの物憂げな声に、バルナバーシュはあっさりと答える。
「自分の感情や力も制御できないのに、家族とはいえ他人に言うこと聞かせるなんて無理無理。そんなのは王くらいだ。それですら自分の感情に振り回されるのが多いのだからね」
フランシスに支えて貰いつつ、ゆっくり歩き出す。
先を行くのは幼いアルフィナを抱いたアルフレッド、後ろは明かり玉を回収していくラインハルトが赤ん坊を抱いて歩く。
「それに、聖女と言うのは本当にごく稀に生まれる。癒しの力は持つが、それ以外の力を持つ者はほとんどいない。その為に聖女を守る存在が最低一人は存在する。フェリシアと言う聖女にはいなかったのかな?」
「もしかしたら……私の次男のユールと魔術師長の息子のケルトでしょうか? 幼馴染みで本当に仲が良く、何かがあるとフェリシアの元に。処刑の時に絶対に許さないと……そして、ケルトは自分の命に賭して……」
「ふーん、ラインハルトだよね? じゃぁ、あのアルフィナには?」
「えと、正確には良く分かりませんが、私の長男のセシルがアルフィナを溺愛しています」
「溺愛……君の息子幾つ?」
ラインハルトは遠い目をし、
「18です。アルフィナは、6歳位ですよね」
「うーん、多分、もう少し幼いね。まぁ、良いんじゃない? あ、そうだ。ちょっと止まって」
止めると空いている手で、バルナバーシュはフランシスの頭をクシャクシャと撫でる。
「この方がいいね。ちょっといいかな」
手を伸ばすと、眠るナオミという名前の赤ん坊の額に触れる。
「うん。いい子だね。お休み……じゃぁ、行こうか」
微笑むと、アルフレッドを促した。
しばらく歩き、階段を上ると、心配そうに待っていたカーティスは、
「この方は?」
「済まないが長い間拘束されていて、歩くのも辛くてね。ここで休んでもいいけれど、居心地が悪いからどこか頼めるだろうか?」
「畏まりました。猊下……」
容姿とその拘束という言葉に、意味を理解し、カーティスは頭を下げる。
「では、こちらから、アルフレッドの屋敷に戻る馬車がございます。猊下とお子様でしょうか?」
「あぁ、そうだよ。僕はバルナバーシュ。息子のベルンハルドと後ろの子は孫のアンネリ。宜しく頼むよ」
「猊下とお呼びしましょうか? もしくはバルナバーシュ様と……?」
「猊下は、一応教会での呼び名だけどね。一年しかいなかったけど……名前で呼んで欲しい」
カーティスは頷く。
「では、バルナバーシュさま。こちらでございます。ベルンハルド殿もこちらに」
「べ、ベルンハルド……?」
「ベルンハルド。父は弱ってるから宜しくね?」
バルナバーシュは、自分を支える青年を見る。
「ち、父……あの……」
「ベルンハルド。ここには鏡はないが、お前は髪の色、瞳の色が全く変わっている。そのせいか印象も違う気がする」
ラインハルトは声をかける。
「申し訳ないが、ゆっくりとでいいから行ってくれないか。アンネリがむずがっている。多分お腹が空いたか、オムツ替えだろう。帰ってからにしよう」
「は、はい」
二台の馬車に乗り、移動する。
一台はバルナバーシュにベルンハルド、アルフィナを抱いたアルフレッド、もう一台はラインハルトとルーファス、アンネリ。
そしてアルフレッドの屋敷に到着したのだった。
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