春風に散る桜を見上げていた

 僕は思うんだ。勇者が残したものは平和なんかじゃない。神が望んだことは調和なんかじゃない。
 人間同士が争い、殺し合う地獄だったんじゃないのかと。

 僕は工兵。昔で言うところの中級魔導士だ。
 工兵は人を殺さない。道を作ったり、壁に穴を開けるのが仕事だ。
 工兵は戦わない。戦争が長引くにつれて、魔導士の数も減ったからだ。
 工兵は守られる。彼ら下級兵士と違って、代えが効かないからだ。

 僕は自らの手を汚すことなく生きてきた。そして、これからもそうするはずだった。

 あの日あの瞬間、彼女と出会うまでは。


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