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14.〈たった一人の従兄弟〉

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彰は、常に雅也の後を追って歩いた。雛鳥が、親と認識したものの後を追うように。少なくとも雅也は彰の行動は、そういったものだと考えていた。

雅也自身も、彰と共にあることを常に考えていた。
雅也は、それが自分に与えられた使命のようなものだと思っており、又、そのつもりだった。

『あの華奢で可愛らしい、幼い頃に両親を失くした、たった一人の従兄弟を守る』ということが。

放課後の教室で、ただいつものように彰を待ちながら、雅也は彰を思う。『華奢で可愛らしい従兄弟』のことを。
そうしていることで、雅也は、クラスメイトの谷崎が自分に頻りに話しかけていることに気づかなかった。
いくら何を話しかけても、雅也から返事がもらえないことに腹を立てた谷崎は、わざと下卑た調子で雅也に、キーワードのように『彰』の話を振る。

「なぁ、彰お嬢様、まだ来ないのかよ。」

雅也は谷崎の思惑通り『彰』の話に、現実に立ち返り、はっ、と谷崎の顔を見た。
けれど、悪ノリが止まらない谷崎に

「可愛らしい彰お嬢様は、お前に彼女ができても、お前のナンバーワンだからな。なぁ、ちゃっかり、ヤっちゃってたりしないよな?だって、なぁ。彰お嬢様、すげぇ可愛いだろ。マジで。」

そう、下卑た調子でからかわれて、雅也は、自分の頭に血がのぼっていく音を聞いた気がした。
まるで─いつからか彰の肌を夢に見るようになった自分を見透かされたようで─冷静ではいられなかった。

あの、甘い、罪悪感の残る夢……。

雅也は生々しくさえある夢の内容を、思わず思い出しそうになり、頭をふった。
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