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第二部
番外編 歪んだ愛(ルキウス視点)
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私は、ルドヴィカが苦しみ悲しんでいる顔が見たかった……。ただ、それだけだったのだ。
あの時……偶然、ルドヴィカの故郷で、魔力を持つ娘を拾った私は良い事を思いついた……つもりだったのだ。
バルバラを構う度に、ルドヴィカの顔が辛そうに歪む。それを見るだけで、私は興奮した。
別にバルバラを本気で気に入った訳ではなかった。ルイーザに雰囲気が似ていたし、この娘に性欲処理でもさせれば、身重のルドヴィカの負担を減らせると共に、ルドヴィカを悲しませ、虐げる事も可能だと思ったのだ。
ルドヴィカは虐げてやると良い顔をする。ルドヴィカの苦しみ、辛さに歪む顔を見る度に、私は途轍もなく興奮するのだ。
だが、度が過ぎたようだ……。
ルドヴィカは、また拗ねて隠れてしまった……。
あの日もルドヴィカが部屋で研究をしていたのは分かっていた。そろそろ、ルドヴィカを爆発させたかったのだ。
アレは苦悶の表情を浮かべながら、ジッと耐えている。最初はそれも良かったのだが、そろそろ本心が聞きたくなった私は、少々荒い手に出た。そうすれば、ルドヴィカは泣き喚き、私に突っかかって来ると思ったからだ……。
だが、やり過ぎたのだ……ルドヴィカの体には、例えようのない精神的負担がかかっていたと宮廷侍医は言った。
今回、その大きな精神的負担のせいで、切迫早産を引き起こしてしまったと……。
産まれて来た子はルドヴィカによく似た皇子だった……そして、魔力保持者であった。
当初は危なかったが、ルドヴィカに似て生命力が強いのか、今は一命を取り留め、元気だ……。
「ルドヴィカ……」
一体何処に隠れているのだ……。
己が産んだ我が子をその手に抱きたいとは思わぬのか? いつまで拗ねているつもりだ……。
早く出て来い。
本当はバルバラなどではなく、其方を抱きたいのだ……。次、姿を現した時は、部屋に縛り付けて、連日に渡り犯してやるから覚悟しておけ……。
「だから、さっさと出て来い。ルドヴィカ」
今回は私が悪かった……。
ルドヴィカの苦しむ表情を見たかったとはいえ、やり過ぎた自覚はあるのだ……謝ってやるから出て来い、愚か者。
「あ! ルキウス様! 最近、わたくしのお部屋に来て下さいませんけど、どうかされたんですか? 忙しいのですか?」
「……うるさい」
「ふふっ。怖い、ルキウス様。ねぇ、疲れているなら、わたくしが癒やして差し上げますよ。ね? ベッドに行きましょ?」
「うるさいと言っているだろう!」
………………。
私は気が付いたら、バルバラを斬り殺していた。
「チッ」
まあ、別に良いか……。元々、用が済めば殺すつもりだったのだ。ルドヴィカが子を産み、また私の相手を出来るようになるまで、ルドヴィカを虐げ、泣かせる為の道具だった訳だしな。
ルドヴィカは奴隷に手を出す事を嫌がる……それ故に奴隷解放へと着手したので、もう奴隷には手を出せぬ。
かと言って、自国の貴族に手を出せば面倒な事にもなるので、他所の大陸の神子なら、都合が良かっただけの話だ。
側室にしてやると言えば、愚かにも国を捨てて、ついて来たし、都合が良かったのだ……。
ただ、それだけの話なのだ。
私はルドヴィカ以外には興味はない。ルドヴィカ以外を愛すつもりもない。
愛しているが困らせ、苦しめ、虐げて、泣かせたいのだ。
クッ、困った感情だ……。
「ルドヴィカ、愛している。だから、早く帰って来い」
このやり方が失敗だという事は、もう分かった……。もうせぬから、早く機嫌を直して、私の腕の中に帰って来い。
そして、産まれた子をその手に抱くが良い。
「ルドヴィカ……頼むから、早く戻って来い。さっさと姿を見せろ、愚か者」
………………ルドヴィカ。
どうすれば、機嫌を直してくれるのだ?
また数ヶ月、隠れるつもりか? 従属の焼印があるので大丈夫だとは思うが……まさか変な気を起こしてはいないだろうな……。気配が読めぬ故に、不安だ……。
何故か感知は出来ぬが……生きているだろう……ルドヴィカが私を置き、死を選ぶ筈がない……。
……くそ。出てきたら覚えておけよ。どれ程泣いても離してなどやらぬからな。
ルドヴィカ……愛している……。
早く戻って来い……。
──────だが、月日が経ち、私が皇帝となり、私たちの子が皇太子となっても、ルドヴィカが戻ってくる事はなかった。
あの時……偶然、ルドヴィカの故郷で、魔力を持つ娘を拾った私は良い事を思いついた……つもりだったのだ。
バルバラを構う度に、ルドヴィカの顔が辛そうに歪む。それを見るだけで、私は興奮した。
別にバルバラを本気で気に入った訳ではなかった。ルイーザに雰囲気が似ていたし、この娘に性欲処理でもさせれば、身重のルドヴィカの負担を減らせると共に、ルドヴィカを悲しませ、虐げる事も可能だと思ったのだ。
ルドヴィカは虐げてやると良い顔をする。ルドヴィカの苦しみ、辛さに歪む顔を見る度に、私は途轍もなく興奮するのだ。
だが、度が過ぎたようだ……。
ルドヴィカは、また拗ねて隠れてしまった……。
あの日もルドヴィカが部屋で研究をしていたのは分かっていた。そろそろ、ルドヴィカを爆発させたかったのだ。
アレは苦悶の表情を浮かべながら、ジッと耐えている。最初はそれも良かったのだが、そろそろ本心が聞きたくなった私は、少々荒い手に出た。そうすれば、ルドヴィカは泣き喚き、私に突っかかって来ると思ったからだ……。
だが、やり過ぎたのだ……ルドヴィカの体には、例えようのない精神的負担がかかっていたと宮廷侍医は言った。
今回、その大きな精神的負担のせいで、切迫早産を引き起こしてしまったと……。
産まれて来た子はルドヴィカによく似た皇子だった……そして、魔力保持者であった。
当初は危なかったが、ルドヴィカに似て生命力が強いのか、今は一命を取り留め、元気だ……。
「ルドヴィカ……」
一体何処に隠れているのだ……。
己が産んだ我が子をその手に抱きたいとは思わぬのか? いつまで拗ねているつもりだ……。
早く出て来い。
本当はバルバラなどではなく、其方を抱きたいのだ……。次、姿を現した時は、部屋に縛り付けて、連日に渡り犯してやるから覚悟しておけ……。
「だから、さっさと出て来い。ルドヴィカ」
今回は私が悪かった……。
ルドヴィカの苦しむ表情を見たかったとはいえ、やり過ぎた自覚はあるのだ……謝ってやるから出て来い、愚か者。
「あ! ルキウス様! 最近、わたくしのお部屋に来て下さいませんけど、どうかされたんですか? 忙しいのですか?」
「……うるさい」
「ふふっ。怖い、ルキウス様。ねぇ、疲れているなら、わたくしが癒やして差し上げますよ。ね? ベッドに行きましょ?」
「うるさいと言っているだろう!」
………………。
私は気が付いたら、バルバラを斬り殺していた。
「チッ」
まあ、別に良いか……。元々、用が済めば殺すつもりだったのだ。ルドヴィカが子を産み、また私の相手を出来るようになるまで、ルドヴィカを虐げ、泣かせる為の道具だった訳だしな。
ルドヴィカは奴隷に手を出す事を嫌がる……それ故に奴隷解放へと着手したので、もう奴隷には手を出せぬ。
かと言って、自国の貴族に手を出せば面倒な事にもなるので、他所の大陸の神子なら、都合が良かっただけの話だ。
側室にしてやると言えば、愚かにも国を捨てて、ついて来たし、都合が良かったのだ……。
ただ、それだけの話なのだ。
私はルドヴィカ以外には興味はない。ルドヴィカ以外を愛すつもりもない。
愛しているが困らせ、苦しめ、虐げて、泣かせたいのだ。
クッ、困った感情だ……。
「ルドヴィカ、愛している。だから、早く帰って来い」
このやり方が失敗だという事は、もう分かった……。もうせぬから、早く機嫌を直して、私の腕の中に帰って来い。
そして、産まれた子をその手に抱くが良い。
「ルドヴィカ……頼むから、早く戻って来い。さっさと姿を見せろ、愚か者」
………………ルドヴィカ。
どうすれば、機嫌を直してくれるのだ?
また数ヶ月、隠れるつもりか? 従属の焼印があるので大丈夫だとは思うが……まさか変な気を起こしてはいないだろうな……。気配が読めぬ故に、不安だ……。
何故か感知は出来ぬが……生きているだろう……ルドヴィカが私を置き、死を選ぶ筈がない……。
……くそ。出てきたら覚えておけよ。どれ程泣いても離してなどやらぬからな。
ルドヴィカ……愛している……。
早く戻って来い……。
──────だが、月日が経ち、私が皇帝となり、私たちの子が皇太子となっても、ルドヴィカが戻ってくる事はなかった。
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