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本編
3.殿下との昼食
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「おめでとうございます!」
「いえ……その……」
翌日、イレーネ様や他のお友達から賛辞を頂きましたけれど、わたくしはとても喜ぶ気持ちになどなれませんでした。
あの後、殿下はわたくしを無理矢理、王宮へと連れて行き、陛下の御前でわたくしと婚約すると宣言なさいました。
ちょうど部屋の隅で書類の整理をしていたお父様は書類を床に落とし、腰が抜けそうな程に驚いているのが、目の端に映りました……。
けれど、わたくしは心の中でごめんなさいと言う事しか出来ないのです。
陛下は「辞退したがっていたのではなかったのか?」とお聞き下さいましたが……殿下のあの……綺麗な空色の瞳が冷たいまま、わたくしを捉えていたので、わたくしは……「話し合いの末、殿下の優しさに気づいたのです」と小さく答えました。
元々、候補者だった事もあり、2人が望んでいるならと、陛下はわたくしを殿下の婚約者に認めてしまわれました。
嗚呼、何という事でしょう……。
「ですが、私達……シルヴィア様が、殿下とそういう関係だったなんて、初めて知りましたわ」
「あの……」
「正式に決まるまで言えなかったのかもしれませんが……それでも少し寂しかったのですよ」
「ご、ごめんなさい……」
違うのです、違うの……。
わたくしだって、昨日までは言葉を交わした事すらない方だったのです……。
それなのに、たった1日でわたくしの人生は大きく変わってしまいました。
あろう事か、イカせて欲しい欲求に負け、殿下に服従するなど……。なんと浅ましい真似をしてしまったのでしょうか……。
その上、初めてお会いした陛下の前でも嘘をついて……、まるでわたくし達が仲睦まじいかのような演技までさせられて……。わたくし、どうしたら良いか……。
「どうしましたの?」
「イレーネ様。わたくし……」
「戸惑うのは無理もありませんわよね。殿下の婚約者だなんて……。ですが、胸を張って宜しいのよ。私達も応援していますから」
そんな純粋に応援しているような目で見ないで下さい。
「わたくし……昨日の昼までは、昼食に出るお食事を楽しみにしている平凡な学生だったのに……」
「シルヴィア様。昨日、食べる事しか考えていない訳ではないと言いませんでしたか? やはり、食べる事ばかりを考えていたのですね」
イレーネ様のその言葉に、わたくしがハッとすると、そこにいたお友達皆に笑われてしまいました。
「楽しそうだね」
突如、背後から聞こえたお声に、わたくしが飛び上がり、ゆっくり振り向くと……綺麗なブルーの髪が目の端に入りました。
嗚呼……殿下です……。
皆が慌ててカーテシーを行なったので、わたくしも慌ててカーテシーをしようとすると、殿下に止められてしまいました。
「皆もそのように畏まらなくとも良い。僕の可愛いシルヴィアの友人なら、僕にとっても同じようなものだ。これからもシルヴィアと仲良くしてやってくれたまえ」
「「「はい!!」」」
そう仰られた後、昼食を一緒に摂ろうと仰り、わたくしの額に軽く口付けをなさいました。
「昼に迎えに来るから、ここで待っておくように」
「……畏まりました」
殿下が立ち去った後、皆がキャーキャー言っていますけれど、わたくしの心は不安しかありませんでした。
次は一体何をされるのでしょうか……?
外面だけは良いのですね……表面上は、わたくしと婚約者ごっこをなさるおつもりなのですね。
「シルヴィア様、どうかなさいました?」
「いえ……。さあ、次の授業の準備をしなければ……」
「あ、もしや……殿下に誘われてしまったので、食堂のランチが食べられなくて落ち込んでいるのですか? それよりも王族が食べるランチの方が、絶対に美味しいと思いますけれど……」
「ち、違います!」
ど、どうして……わたくしに食い意地が張っているイメージがついているのですか?
そ、そりゃあ……食べる事はとても好きですけれど……。
その後、午前の授業を終えると、憂鬱なお昼がやってまいりました。
皆は食堂の方に行ってしまい、わたくしだけ教室で殿下を待っています……。
いっそ逃げてしまいましょうか……。
その考えが頭をよぎり、わたくしはブンブンと首を横に振りました。
いいえ、逃げたのがバレたら、あとでどのような酷い目にあわされるか分かりません……。
「シルヴィア」
わたくしは突然聞こえた殿下のお声に驚き、咄嗟的に机の下に隠れてしまいました。
「何をしているんだい?」
「いえ……これは、その……」
「もしかして、僕から隠れようとしていたのかい? ふーん。良い度胸だね」
「ち、違うのです……これは、その……驚いて……」
「口答えする気かい?」
「いえ……そんなつもりでは……」
こんなの横暴です……。
力で押さえつけるなど、酷いのです……。
わたくしは殿下に連れられ、またあの執務室の奥の部屋に連れて来られました。
お部屋に入ると、とても良い香りがして、わたくしがバッと顔を上げると、テーブルの上には美味しそうなお食事が並んでいました。
「さあ、おいで。食べさせてあげるよ」
「は、はい! え? 食べさせる?」
わたくしは、多分聞こえ間違いをしたのだと思い、殿下に促されるままに椅子に座りました。
その後、殿下は何も言わないので、やはりわたくしの聞こえ間違いなのです。
「さて、何が食べたい? まずはスープかな」
そう仰った殿下に、わたくしが「え?」と聞き返すと、殿下の手がわたくしの後頭部にまわり、突然口付けられました。
そして口の中に入ってくるスープに、わたくしが目を見開くと、まるで飲めとでも言うかのように、殿下の舌がわたくしの舌をつつきました。
ゴクリと飲み干すと、満足そうに空色の瞳を細め、わたくしから離れました。
「美味しいかい?」
あ、味なんて分からないのです……。
「返事は?」
「お、美味しいです」
「それは良かった」
殿下の返事を求める声に、昨日の事が思い出され、とても恐ろしいのです。
「では、次は君がスープを僕に飲ませて」
「え?」
「早くしたまえ」
有無を言わさぬ声音に、わたくしは成す術もなく頷き、スープを一口、己の口に運び、殿下に口付けました。
殿下のように上手く流し込めず、2人の口の間を滴り落ちてしまい、わたくしは青ざめました。
叱られてしまう。そう思った時、殿下の手がわたくしの顎を掴み、角度を変えて、何度も舌を絡められ……それどころか上顎や歯の裏まで、丹念に舐められ、わたくしは力が抜けて、椅子からずり落ちてしまいそうでした。
「美味しかったよ」
「……は、はい」
わたくしが真っ赤に染まった顔で、必死で息を整えていると、殿下がクスリと笑いました。
「さあ、食べようか」
「はい……」
その後は普通にお食事をさせて頂いたのですけれど、ちょいちょい殿下がわたくしの髪や頬に触るので、わたくしは味が分からないまま、お食事を終えました。
「さて、食欲が満たされた後は、性欲だね」
「っ!」
その言葉に何も言えずに固まっていると、殿下はまた「ベッドの上で脚を開きたまえ」とお命じになられました。
「あの……殿下……」
「早くしたまえ。それとも、また侍女を呼んで縛られたいのかい?」
「も、申し訳ございません」
殿下の苛立った声が恐ろしくて、わたくしはおずおずとベッドに上がり……己の服をゆっくり脱ぎました。
「脱げたら、僕によく見えるように脚を開いて」
「は、はい……」
わたくしが、ギュッと目を瞑りながら、己の脚を広げると、殿下が「もっと大きく開きたまえ」と仰ったので、わたくしは唇を噛みながら、言われた通りに致しました。
「さて、今日はどうして欲しい?」
「……昨日のように、焦らされるのは嫌です……辛いのです……で、出来れば……や、優しく」
「優しく?」
「優しく抱いて下さいませ」
「抱いて欲しいんだ?」
「っ!!」
殿下の嘲笑を含む返しに、わたくしは全身の血が沸騰しそうな思いでした。
「いえ……その……」
翌日、イレーネ様や他のお友達から賛辞を頂きましたけれど、わたくしはとても喜ぶ気持ちになどなれませんでした。
あの後、殿下はわたくしを無理矢理、王宮へと連れて行き、陛下の御前でわたくしと婚約すると宣言なさいました。
ちょうど部屋の隅で書類の整理をしていたお父様は書類を床に落とし、腰が抜けそうな程に驚いているのが、目の端に映りました……。
けれど、わたくしは心の中でごめんなさいと言う事しか出来ないのです。
陛下は「辞退したがっていたのではなかったのか?」とお聞き下さいましたが……殿下のあの……綺麗な空色の瞳が冷たいまま、わたくしを捉えていたので、わたくしは……「話し合いの末、殿下の優しさに気づいたのです」と小さく答えました。
元々、候補者だった事もあり、2人が望んでいるならと、陛下はわたくしを殿下の婚約者に認めてしまわれました。
嗚呼、何という事でしょう……。
「ですが、私達……シルヴィア様が、殿下とそういう関係だったなんて、初めて知りましたわ」
「あの……」
「正式に決まるまで言えなかったのかもしれませんが……それでも少し寂しかったのですよ」
「ご、ごめんなさい……」
違うのです、違うの……。
わたくしだって、昨日までは言葉を交わした事すらない方だったのです……。
それなのに、たった1日でわたくしの人生は大きく変わってしまいました。
あろう事か、イカせて欲しい欲求に負け、殿下に服従するなど……。なんと浅ましい真似をしてしまったのでしょうか……。
その上、初めてお会いした陛下の前でも嘘をついて……、まるでわたくし達が仲睦まじいかのような演技までさせられて……。わたくし、どうしたら良いか……。
「どうしましたの?」
「イレーネ様。わたくし……」
「戸惑うのは無理もありませんわよね。殿下の婚約者だなんて……。ですが、胸を張って宜しいのよ。私達も応援していますから」
そんな純粋に応援しているような目で見ないで下さい。
「わたくし……昨日の昼までは、昼食に出るお食事を楽しみにしている平凡な学生だったのに……」
「シルヴィア様。昨日、食べる事しか考えていない訳ではないと言いませんでしたか? やはり、食べる事ばかりを考えていたのですね」
イレーネ様のその言葉に、わたくしがハッとすると、そこにいたお友達皆に笑われてしまいました。
「楽しそうだね」
突如、背後から聞こえたお声に、わたくしが飛び上がり、ゆっくり振り向くと……綺麗なブルーの髪が目の端に入りました。
嗚呼……殿下です……。
皆が慌ててカーテシーを行なったので、わたくしも慌ててカーテシーをしようとすると、殿下に止められてしまいました。
「皆もそのように畏まらなくとも良い。僕の可愛いシルヴィアの友人なら、僕にとっても同じようなものだ。これからもシルヴィアと仲良くしてやってくれたまえ」
「「「はい!!」」」
そう仰られた後、昼食を一緒に摂ろうと仰り、わたくしの額に軽く口付けをなさいました。
「昼に迎えに来るから、ここで待っておくように」
「……畏まりました」
殿下が立ち去った後、皆がキャーキャー言っていますけれど、わたくしの心は不安しかありませんでした。
次は一体何をされるのでしょうか……?
外面だけは良いのですね……表面上は、わたくしと婚約者ごっこをなさるおつもりなのですね。
「シルヴィア様、どうかなさいました?」
「いえ……。さあ、次の授業の準備をしなければ……」
「あ、もしや……殿下に誘われてしまったので、食堂のランチが食べられなくて落ち込んでいるのですか? それよりも王族が食べるランチの方が、絶対に美味しいと思いますけれど……」
「ち、違います!」
ど、どうして……わたくしに食い意地が張っているイメージがついているのですか?
そ、そりゃあ……食べる事はとても好きですけれど……。
その後、午前の授業を終えると、憂鬱なお昼がやってまいりました。
皆は食堂の方に行ってしまい、わたくしだけ教室で殿下を待っています……。
いっそ逃げてしまいましょうか……。
その考えが頭をよぎり、わたくしはブンブンと首を横に振りました。
いいえ、逃げたのがバレたら、あとでどのような酷い目にあわされるか分かりません……。
「シルヴィア」
わたくしは突然聞こえた殿下のお声に驚き、咄嗟的に机の下に隠れてしまいました。
「何をしているんだい?」
「いえ……これは、その……」
「もしかして、僕から隠れようとしていたのかい? ふーん。良い度胸だね」
「ち、違うのです……これは、その……驚いて……」
「口答えする気かい?」
「いえ……そんなつもりでは……」
こんなの横暴です……。
力で押さえつけるなど、酷いのです……。
わたくしは殿下に連れられ、またあの執務室の奥の部屋に連れて来られました。
お部屋に入ると、とても良い香りがして、わたくしがバッと顔を上げると、テーブルの上には美味しそうなお食事が並んでいました。
「さあ、おいで。食べさせてあげるよ」
「は、はい! え? 食べさせる?」
わたくしは、多分聞こえ間違いをしたのだと思い、殿下に促されるままに椅子に座りました。
その後、殿下は何も言わないので、やはりわたくしの聞こえ間違いなのです。
「さて、何が食べたい? まずはスープかな」
そう仰った殿下に、わたくしが「え?」と聞き返すと、殿下の手がわたくしの後頭部にまわり、突然口付けられました。
そして口の中に入ってくるスープに、わたくしが目を見開くと、まるで飲めとでも言うかのように、殿下の舌がわたくしの舌をつつきました。
ゴクリと飲み干すと、満足そうに空色の瞳を細め、わたくしから離れました。
「美味しいかい?」
あ、味なんて分からないのです……。
「返事は?」
「お、美味しいです」
「それは良かった」
殿下の返事を求める声に、昨日の事が思い出され、とても恐ろしいのです。
「では、次は君がスープを僕に飲ませて」
「え?」
「早くしたまえ」
有無を言わさぬ声音に、わたくしは成す術もなく頷き、スープを一口、己の口に運び、殿下に口付けました。
殿下のように上手く流し込めず、2人の口の間を滴り落ちてしまい、わたくしは青ざめました。
叱られてしまう。そう思った時、殿下の手がわたくしの顎を掴み、角度を変えて、何度も舌を絡められ……それどころか上顎や歯の裏まで、丹念に舐められ、わたくしは力が抜けて、椅子からずり落ちてしまいそうでした。
「美味しかったよ」
「……は、はい」
わたくしが真っ赤に染まった顔で、必死で息を整えていると、殿下がクスリと笑いました。
「さあ、食べようか」
「はい……」
その後は普通にお食事をさせて頂いたのですけれど、ちょいちょい殿下がわたくしの髪や頬に触るので、わたくしは味が分からないまま、お食事を終えました。
「さて、食欲が満たされた後は、性欲だね」
「っ!」
その言葉に何も言えずに固まっていると、殿下はまた「ベッドの上で脚を開きたまえ」とお命じになられました。
「あの……殿下……」
「早くしたまえ。それとも、また侍女を呼んで縛られたいのかい?」
「も、申し訳ございません」
殿下の苛立った声が恐ろしくて、わたくしはおずおずとベッドに上がり……己の服をゆっくり脱ぎました。
「脱げたら、僕によく見えるように脚を開いて」
「は、はい……」
わたくしが、ギュッと目を瞑りながら、己の脚を広げると、殿下が「もっと大きく開きたまえ」と仰ったので、わたくしは唇を噛みながら、言われた通りに致しました。
「さて、今日はどうして欲しい?」
「……昨日のように、焦らされるのは嫌です……辛いのです……で、出来れば……や、優しく」
「優しく?」
「優しく抱いて下さいませ」
「抱いて欲しいんだ?」
「っ!!」
殿下の嘲笑を含む返しに、わたくしは全身の血が沸騰しそうな思いでした。
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