シンデレラの娘たち

第5章 すべては夢になりにけり

１

「気が済んだ？」
　いきなりフッと、目の前の光景が消えた。
「えっ？」
さっきまでいた、姉さんは？
お茶は？
何が起こったのか、理解が出来ず、ジュンヤはポカンとしている。
「どういうこと？」
せっかく、念願の姉さんと、話が出来た、というのに？
ジュンヤはひどく、ガッカリとする。


　いつの間にか、小さな家が消え、柚は岩の上に座っている。
（ボクたちだけ…どこかに、連れて来られたのか？）
何のために？
そう考えるけれども、まったくピンとはこない。
「なんで？」
思わずジュンヤは、不満をもらす。
「もう少し…あそこにいたかったなぁ。
　やっとちょっと、話が出来たのに」
ずいぶん、勝手だ。
声の主に向かって、声を上げる。
「ここは、どこだ？
　姉さんは、どこにいるんだ？」
ジュンヤにしては珍しく取り乱して、強い語気で、魔法使いに
向かって、声を荒げる。
すると、じわじわとにじむように、魔法使いが姿を現すと、
哀れむような目で、ジュンヤを見つめる。
「あの子も、これから大変なのよ。
　あまり負担をかけたら、ダメでしょ」
諭すように、ジュンヤをたしなめる。
「あなたはもっと、大人にならなくちゃ」
さらに続けて言う。

大人になるって、どういうことだ？
ジュンヤは脱力して、ボンヤリとする。
何だかどうも、納得がいかない。
（あ～あ！
　結局姉さんを、連れて来られなかった
それがひどく、心残りだ。
「あの子の人生は、あの子が決めるものだからね」
ひどく淡々とした口調で、魔法使いが言った。