シンデレラの娘たち

daisysacky

文字の大きさ
上 下
109 / 140
第5章 すべては夢になりにけり

   21

しおりを挟む
「そうだなぁ~
 ボクの知り合いに頼んでみるよ。
 それまで、その荷物に隠れて、じっとしていてもらおう」
 そう言うと、ハンスは馬車から降りて、荷台の隅に置いてある、
大きなカゴをバサッとジュンヤの上にかぶせる。
丁度人が一人、うずくまったら隠れるくらいの大きさだ。
(大丈夫か?まさか…どこかに連れて行かれたりはしないか?)
不安が一気に、倍増する。
けれどもジュンヤは、それを一切口にはせず、柚をギュッと抱き締める。

「いいか?ボクが呼ぶまで、ゼッタイに出て来るなよ。
 下手すると…牢にぶち込まれるか、最悪の場合、つるし首にされるぞ」
 かなり不穏なことを並べ立てて、ジュンヤに言い聞かせる。
「ねぇ~ホントに、大丈夫なの?」
心優しいアナスタシアは、ハンスに尋ねる。
「大丈夫だよ! 
 うまくいけば、王子様に会えるはずだ」
そう言うと、メモをちぎって、簡単な見取り図を、カゴの下にいる
ジュンヤの手に握らせる。
「王子様の部屋は、おそらくこの辺りじゃないかと思うんだ。
 もっとも、この通りじゃないかもしれないけどな」
カゴのすき間から、ジュンヤをのぞく。
「周りに人がいるはずだから、十分気を付けて…
 危ないと思ったら、逃げるんだ」
 ここから先は、君の運次第だ!
 健闘を祈る!
そうささやくと、アナスタシアを伴って、勝手口の中に入って行った。

(ボクが、頑張るしかないんだ…)
 ジュンヤはキュッと、柚の手を握る。
「さぁ、ボクたちも行こうか。
 ユウちゃんは、おとなしくするんだよ」
 これは、ゲームだ。
ジュンヤはひょいっと、柚を抱き上げると、ハンスに教えられた通りに、
建物の裏に回り込む。
一気に緊張感が、嫌でも増してきていた…
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,202pt お気に入り:136

他人目線

青春 / 連載中 24h.ポイント:2,698pt お気に入り:2

独り占めしたい

BL / 完結 24h.ポイント:894pt お気に入り:12

ワンテンポ遅れた君のリズムは、たった一つの宝物

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:1

もったいないぞう

絵本 / 完結 24h.ポイント:2,414pt お気に入り:0

それが褒美になるとでも?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,764pt お気に入り:371

たくげぶ!

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:0

貴方のために涙は流しません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:33,910pt お気に入り:2,356

聖女クローディアの秘密

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,641pt お気に入り:1,448

ボクの推しアイドルに会える方法

BL / 完結 24h.ポイント:887pt お気に入り:90

処理中です...