異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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首都ラッタディア、変人達のから騒ぎ編

 和解

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※二本目は恐らく深夜更新になります……すみません(;´∀`)




 
 
「……僕が来ることは解ってたみたいだね」

 白亜の宮殿、シアンの質素な私室を訪れたブラックは、こちらに背を向け座っている相手にぶつけるように吐き捨てた。
 開口一番には相応しくない、敵意を感じる声音。年老いてもなお背筋を伸ばした老女は、そんなブラックの剣幕にくすりと笑ってからこちらに振り向いた。

「貴方のあのわざとらしい動揺の仕方を見ていたら解りますよ。貴方はきっと……ツカサ君を置いてから、私の元にもう一度来るだろうってね」

 その笑みに険は無い。だが、そんな態度がブラックをどこまでも苛つかせた。
 彼女……シアン・アズール=オブ=セル=ウァンティアは、昔から何も変わらない。彼女は笑顔で人を受け入れるふりをして、平気で人を足蹴にする。その優しげな老女の姿とて、彼女自身どう思っているかは判らないが、他人を油断させる一つの手段である。

 神族は真の姿と仮初かりそめの姿を持つ。その者の年齢に見合う姿と、それを隠す美しい姿の二つを。通常神族は後者を使うのに対して、彼女は偽りはいらないと豪語しその真の姿をさらけ出していた。
 これが何か考えが有っての事ではないのなら、恐ろしい事だ。
 彼女は自らを他の神族より下に落とすことで、彼らを油断させているのだから。

 しかし、最も性質が悪いのは……彼女がそれを意図せず行っていると言う事。

 彼女は自分の“象徴”と同じく、自然体でそうしているに過ぎない。何も拒まず、ただし従わず、自分の意のままに全てを押し流していく。そうする事で、今の彼女は成り上がったのだ。能力の高い神族達を従える、世界の監視者に。

 彼女はこれを意識せずにやったという。一部の作為さくいもないと言う。

 そんなシアンのいけ好かない性格が、ブラックには一番鼻持ちならなかった。
 今だってそうだ。彼女はさも「そうなる事は予測していた」と話をしているが、この事とて彼女にとっては当然に過ぎないのだ。

 いけしゃあしゃあと言う眼前の相手に嘆息しつつ、ブラックは腰に手を当てた。

「良く言う。お前は僕が不快になる事をわざとばら撒いてくれたじゃないか。それに、色々とまだ話してない事が有るだろう。……古い付き合いってのは損だね、嫌でも手口が解ってしまう」

 そう、全てはシアンの思い通り。
 ブラックが怒り心頭でここに来るのも、彼女の策略の内だった。

「不快な事をばら撒く……? 私、そんな事したかしら」
「クロッコを呼び出した事や、僕の名前を彼らの前でわざと呼ばせた事。それに……クロッコの出過ぎた行為に対して、怒らなかったよね。僕の記憶では、君は物事が正しく流れないのを何より嫌ったはずだけど」

 睨み付けながら吐き捨てると、シアンは意外そうな顔をして目を瞬かせていたが――――やがて、苦笑したように微笑むと、座っていた椅子に改めて深く腰掛けた。

「そうね、少しは打算が有ったわ……それは認めましょう。だけど、クロッコの事は別の話よ。あの子に関しては色々あってね……。あの子は人族……特に、貴方を嫌悪している。それに、あの話はツカサ君の前ではあまり言えない話だから、あえて問い質すのを避けたの。伝達役に選んだのは失敗だったわ。……色々とごめんなさい」

 そう言って、深く頭を下げるシアン。
 真摯な態度であることが余計にブラックの腸を煮やしたが、そこで激昂するのも最早馬鹿らしいと思い直し、ブラックは深く溜息を吐くだけに止めた。

「……何故クロッコを呼んだ?」
「黒曜の使者は、ただの災厄ではないと教える為よ。事実を見てまだ驕るほど彼は愚かではないわ。ツカサ君を一目見れば、彼を抹殺しかねない考えを改めると思ったのよ。今となっては、ツカサ君を殺す方が寧ろ危険な事になりかねないし……私も、無抵抗な彼を殺すのはどうかと思ったから」
「確かに、ツカサ君を見れば誰だって殺すのを躊躇するだろうけど……」

 そう上手くいくだろうか、とブラックは顔を顰めた。

 ――かつて神族に災厄の権化と恐れられた、黒曜の使者。
 【六つの神の書】に記され、かつて歴史の英雄達が対峙したというその存在は、今を生きる神族達が最も恐れる存在だった。
 そう、正体も力の底も知れぬ化け物は、この世で最も恐ろしい。

 ブラックが昔シアンから聞いた黒曜の使者の話も、この世界で起こる災害と同様の「避けられぬ超自然的なにか」と解釈されていた。彼女の話によれば、神族は今現在も研究を続けているらしいが、それでも結論は「制御できない恐るべき存在」とされ、滅する事を目標としていたのだ。

 だが、実際現れた災厄は――――善良な異世界の少年だった。
 この少年を見れば、聡い者はすぐにシアンの思惑に気付くだろう。
 彼を殺さずに置いて、この世界に有益な存在にしたいという思惑に。

「しかし、人族を見下す耳長根性丸出しのあの若造が納得するかね。曲解を重ねてとんでもない事を言いだすんじゃないか。……言っておくけど、ツカサ君に何か危害を加えるような事が有れば……僕は容赦なく君の部下を殺すよ」

 あの幼稚で狡猾な男ならば、突飛な行動に出かねない。それが正義感からの行動でも、ツカサに害が及ぶならブラックにとっては悪意になる。
 睨み付けるように見る相手は、そんなブラックの怒りにまた笑みを漏らした。

「ふふ、そうなれば仕方ないわね……好きにおやりなさい。……だけど……本当に変わったわね、ブラック」
「なにがだい」
「色々と、よ。昔の貴方は誰かに執着なんてしなかった。誰かに対して笑う事も、気遣う事も、なにもしなかった。……だけど、今は違う」
「何が言いたい」

 はっきり言え、と目を険しく細めるブラックに、シアンは少し体勢を整える。
 そうして……笑みを収め、どこか怜悧さを感じさせる表情で、口を弧に歪めた。

「かつて、黒曜の使者と呼ばれた者であったとは……思えないわね」

 美しい声が殊更強く吐いた台詞に、ブラックは瞠目する。

「今、更……」
「そうね、今更だわ。だけど……あなたは確かに【黒】の力を手に入れた。歴史上一人も存在しなかった、【紫月】と【絶無】を手に入れたと言うグリモアの中でも異端の者……ならば貴方こそ黒曜の使者と呼べる者なのではないかと、世界の賢者全てが貴方を恐れたわ。あの時、貴方が確かに災厄の権化だったのよ」
「やめろ、その話はするな」
「導きの鍵の一族は正しかった。貴方の名をそう呼ぶべき事に決めて縛めた貴方の家は賢明だったわね。……だけど、まさかその恐怖の王が、災厄の力を手に入れたなんて……」
「シアン」
「一時期黒曜の使者と称号を頂いた貴方が、本物の黒曜の使者の力を手に入れた……それが何を意味するか。私には」
「シアン!!」

 半ば発狂するかのような叫び声を発したブラックに、シアンは口を噤んだ。
 ――暫しの沈黙に、部屋が満たされる。
 徐々に宵闇に飲まれ始めた部屋が二人の表情を隠し、ようやくシアンがゆっくりと腰を上げた。そうして、水琅石のランプに水を入れ明かりを灯す。
 再びお互いの顔を視認できるようになって、ブラックは明確な殺意の籠った目でシアンを睨み付けた。

「……言い過ぎたわね、ごめんなさい。だけど、今の状況は私にとって予想外だったの。だから……貴方を激昂させて本音を聞き出そうとしていました。しかしそれは随分品のない行動だったわね……本当に申し訳なかったわ。貴方は変わったのに……私は未だに足踏みをし続けているみたい」
「…………予想外? お前にもそんな事があるのか」

 訝しげに問いかけたブラックに、シアンは苦笑する。

「知っているでしょうに、意地悪ね。私の予知は大きな出来事しか感知できない。その未来は今足掻けば変わる事も有る……その程度のものよ。だけど、黒曜の使者……ツカサ君に関しては、本当に私の力が働かないの。あの子は災厄の象徴、大きな出来事であるはず。だけど……私は、貴方とあの子が手を結ぶ事なんて予測すら出来なかった」

 シアンは、この世界でたった一人の予知能力を持つ特殊な神族だ。
 彼女が言っているようにその予知は限定的なものでしかないが、しかし、予知の結果は余程大きな動きが無ければ変わらない。それ程に正確なものなのだ。地震も大火も噴火も確実に予知してきた彼女の能力は、充分に信頼に値するものだった。

 現に、シアンのツカサに関しての予知は完璧だ。
 予知を裏付けるように、ツカサ自らが捕食者の森に落ちてきたと証言している。ならば、ツカサとブラックが一緒に行動する事を予測できなかったと言うのは些か妙ではないか。

 ツカサが予知に現れる程の「巨大な力の事象」なら、その動きは彼女に伝わって然るべきなのに。

「予知できないって……どういう事だ」
「解らない。予知能力は衰えてないわ、寧ろ前よりも正確になっている。けれど……あの子の事は、最初の出現以降どうしても感知できないの。もしかしたら異世界の使者という性質が予知の邪魔をしているのかもしれない」

 この世界の人間には、理解できない存在。
 そう思った刹那――ブラックは、背筋に冷たいものが走るのを感じた。

「…………破滅とは……予測できない未来から来るもの……」

 予知して回避出来るものではない。それが、破滅なのだ。
 ということは、ツカサは本当に……。
 青ざめたブラックの推測を理解しているのか、シアンはぎこちなく頷いた。

「だから……私は恐れた。貴方を黒曜の使者の元へと送ったのは、相手が破壊を是とする者であれば、問答無用で殺してほしかったからよ。それは本当なの。異界から来るものが人語を解する事は解っていた。だけど……形は解らないわ。一歩踏み出せば世界が割れる……そんな姿かも知れない。私は彼の姿まで予知出来なかった。そう、彼の事は何一つとして判らなかったの。だから……怖かった。貴方が災厄を手に入れたのが」

 目の前の相手が、震えているのに気付いた。
 ブラックの記憶しているシアンという老女は、今まで一度も怯えた事など無い。何事も理解したように落ち着き、受け流していた。そんな彼女が怯えを見せる程にツカサを恐れていたとは。
 瞠目するブラックに、シアンはどこか気弱そうな表情で微笑んだ。

「貴方はこの世界で唯一、異界の災厄に対抗できる。そう思ったから貴方を呼んだのに、こんな事になるとは……。これで、誰が円満に手を組んだと思えますか? 千里眼で監視した貴方は、随分とあの子に傾倒しているようだった。なら、貴方が異界の存在に魅了されている可能性もある。私達とて、この世界の一部……黙って破滅を迎え入れる訳にはいかなかった。だから……確かめざるをえなかったの」
「じゃあ……ここに来いと呼んだのも、僕をわざと不快にさせたのも……」
「貴方がたを見極めるためです。新たな情報を持っている訳でもないのに、それを隠して貴方達を呼びました。今となっては、ツカサ君には悪い事をしたわね……。でも、もし貴方があの頃のままだったなら……私は自分の命を懸けて貴方達を屠るつもりでした。……けれど……違った」

 力なくよろけ、シアンは再び椅子に座る。
 その姿は疲れ切っていて、初めて年相応の姿を現したように思えた。

「……どう、違った?」

 ブラックが静かに問いかけると、シアンは僅かに苦みを含んだような顔で口を弧に歪めた。

「自分の下衆さを恥じるくらい色々と……ね。彼と……ツカサ君と出会って、私はようやく貴方が彼と行動を共にした理由を理解したわ。……彼は、本当の意味での【器】なのね。……誰にとっても、なくてはならないもの。そして、誰に対しても姿を変えて受け入れようとする稀有な【器】……そんな子を殺せる訳ないじゃない。私はそこまで愚かじゃないわ」
「…………」
「そんな彼が何故【災厄】に選ばれたのか、私には解らない。だけど……彼を見ている内に、私も知りたくなった」
「知りたい?」

 なにを、と片眉を歪めたブラックに、相手は肩を揺らした。
 先程の苦笑はどこにもない。ただ、その表情にはどこか吹っ切れたような清々しさが浮かんでいた。

「私は今まで、姿も知らない存在に怯えていました。けれど、その恐ろしい存在を目の当たりにすると……今までの事が疑問に思えて来たの。何故【黒曜の使者】が災厄とされ、恐れられてきたのか。何故、神と同じ【異界の者】がその役目を負うのか。そして、どうしてその破壊の所業が歴史に残されていないのか……。それに……彼が異世界に連れて来られた理由が本当に破滅の為というのなら……これほど残酷な事は無いと思ってね」

 確かに、そうだ。
 どう逆立ちしたって、あの心優しい少年には同族を殺す事など出来ないだろう。自分の中に在る力にだって、未だに臆病なくらい慎重なのだ。
 人を殺せる術を覚えても、そんな事に考えも至らず、人を癒す薬を作って笑顔でブラックに話しかける。彼の根本には、相手を殲滅するという概念自体が存在しないのだ。そんな少年が、人を殺すことになってしまったら……。

(考えるだけで、地獄だ)

 思わず顔を歪めるブラックに、シアンは再び嬉しそうな笑みを浮かべた。

「本当に変わったわね、ブラック」
「……何度言われても、返事のしようがないんだけど」
「ふふ、そうね。でも、もしかしたら……それは意味がある事なのかもしれない」
「……?」
「貴方が“本当に必要な事”を学び始めた。心を持った脆弱な【災厄】が、この世にあらわれた。それは……黒曜の使者が破壊だけを目的としてこの世界に送られたのではない証拠になる。だから……私は協力してみたい。あの子が何者なのかを知りたい。もしかしたらこれは……この世界にとって必要な事なのかもしれないから」
「……よく、解らないんだけど」

 この老女は、いつも規模の大きい事を言って自分を煙に巻く。
 だが、今ブラックの目の前にいる相手は、過去に見て来た姿とは違っていた。
 何事にも関せず、全てを受け入れながらも流していた存在。なのに、今の彼女は自分から何かを知りたがっている。

「……お前も少し、変わったんじゃないか?」

 思わずそう言うと、相手は照れくさそうに肩を竦めた。

「そうかも知れないわね。……でも、仕方ないじゃない。あの子…………ツカサ君は、面白い子だし……何より、貴方を変えてくれた子だもの」
「親みたいなことを言うね」
「あら。これでも私子供がいるのよ。貴方の事だって本当に心配していたわ。……だからかしらね。私……あの子の事だけは、どうしてもきちんと答えを出してあげたくなるの。出来れば……貴方達が幸せになれるようにって」
「…………まったく、どうなってるんだか」

 忌々しいとでも言いたげに、溜息を吐く。
 だが、実際の所ブラックはそれほど嫌な気分ではなかった。
 寧ろ清々しいと言ってもいいかもしれない。それほど心が軽かった。

 別段、シアンの変化に思う所が有ったのではない。心が軽くなったのは、ツカサによって少し考え方が違って来た相手を見て、自分は確かに彼に正されているのだと顧みたからだ。

 やはり、自分はあの頃のみじめな存在では無くなっている。
 ツカサに受け入れて貰えたから、自分はここで確かに立っていられるのだ。

「ブラック、貴方もいつかは己の名に意味を見い出せる日が来るかもしれない」
「……どうだろうね」
「私の部下達が貴方の名を聞いて顔を歪めた事に、貴方は耐えたわ。それは、彼が隣に居てくれたからでしょう? あの頃の貴方なら、その態度に耐えられずに激昂して……部下を全員半殺しにしてたわ」
「耳に痛い過去は忘れて欲しいんだが」
「ホホホ、黒歴史ね。でも、そう思えるのも、貴方が成長したから……これからが楽しみね。あの子と歩む貴方がどういう答えを出すのか……」
「シアン……」

 相変わらず訳の解らない単語を出す相手。
 けれども今は怒る事も出来ずに、ブラックは頭を掻いた。
 なんだか面映ゆいが、これが親と話す時の気持ちなのだろうか。今まで「母親」と言うものと接した記憶の無かったブラックにとって、シアンの見守るような言葉は何とも言えない気持ちにさせた。

「ブラック。いつか貴方は全てをあの子に話すのでしょう。……だけどね、恐れる必要はないと思うわ。だって、あの子は優しすぎるくらいに優しいもの」
「……そうだね」

 確かに頷くと、シアンは再び立ち上がってブラックに近付いてきた。
 そうして、ブラックを見上げ、だらしなく無精ひげを伸ばした頬に手を添える。

「ブラック・バイオレット・アーテル・ブックス……三つの真名を持つ異端の者。例えその名が恥じる物であろうとも……あの子と共に、生きなさい。貴方にだって幸せは訪れるべきだわ」
「シアン……」
「この依頼……失策だと思った私を許してね。今は、貴方と彼を引き合わせて良かったと思っています。……ツカサ君と貴方が巡り合えて……本当に良かった」

 誰かに、認めて貰いたかった。
 心優しい彼と共にいる事は、正しい事なのだと。
 ……だからだろうか。
 ブラックは――――流れる涙を、押さえられなかった。

「あらあら、随分と泣き虫になったのねぇ。……でも、それはとても良い事だわ。さあ、私に……このお婆ちゃんに、貴方とツカサ君の事を話して頂戴。貴方がどれだけ変わったのか……私も知りたいの。それから、考えましょう。黒曜の使者が、この世界で平穏に生きていける方法を」

 シアンが、こんなに自分の事を考えてくれているとは思わなかった。
 長い付き合いだ。嫌でも判ってしまう。
 彼女のこんなに感情的な声は、策略から来るものではないのだと。
 本当に自分の事を考えて、心の底から喜んでくれている声なのだと。
 だから、嫌とは言えなかった。

「お前も……変わっていたんだな……」
「ふふ、女に何度も『変わった』と言うのは失礼よ。そう言う所は昔と変わらないわねえ、ブラック。……貴方は少しデリカシーのお勉強もしなきゃだめよ。じゃないと、ツカサ君が可哀想」
「また訳の解らない事を」

 そうは言うが、何故か怒れない。
 ブラックが犯した罪を知っていてもなお、彼女は自分の幸せを応援してくれる。そんな思いが、ブラックの心を温かくさせた。
 先程まで毛嫌いしていたのに、自分でも調子の良い事だと自嘲したくなる。

 けれども、これがもし「母親」というものの暖かさなら。
 自分の背中を押してくれる温かな存在だと言うのなら、浸っていたかった。

 何故ならこれは、間違いなく……ツカサがくれた「切っ掛け」なのだから。

(これじゃ、ツカサ君が言ってた『ママにダダ』も本当に思えてくるから参るよ)

 本当に彼は不思議だ。
 何も知らないのに、全てを知っているように自分を受け入れてくれる。
 全てを楽しい事に、嬉しい事に変えてくれる。

(ツカサ君には……貰ってばっかりだなあ……)

 シアンの嬉しそうな微笑みを見ていると一層そう思えて、ブラックは泣き笑いの顔で頬を綻ばせた。










 
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