異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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裏世界ジャハナム、狂騒乱舞編

  平気でいられると思ってた2※

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 どんどんどんどん歩かされ、長い廊下を渡り、俺はブラックに手を引かれたまま知らない場所へと歩いて行く。トルベールが見せてくれた地図を思い出しつつ、俺は落ち着いた内装に変化した周囲を見回した。

 俺の方向感覚が性格なら、多分ここは別館のはずだ。
 サロンをとれない少し位の低い宿泊客や、劇場のある本館の雰囲気が煩いと思う御仁ごじんはこちらの静かで落ち着いた館を使う事も有ると言う。

 内装を観察しようとキョロキョロ目を動かす俺の正面に、唐突に赤いカーテンが現れた。廊下の途中にカーテンがあるなんて、どういう事なのだろう。
 考えるヒマも無く、手を引かれカーテンを潜らされて――俺は、その先にあった風景に思わず驚いてしまった。

「えっ……」

 暗い。そう、カーテンの向こうは、完全な夜の世界だった。

 この地下世界ジャハナムには、基本的に夜と言う概念がない。
 地下だからと言うのもあるが、ジャハナムには頭上の岩盤から常に光が注がれているので、暗くなる時間帯が無いのだ。って事は……もしやこの場所って、擬似的に夜を体感するためのエリアなのかな。

 なんて事を考えつつ、しばらく蝋燭の明かりが灯るだけの廊下を歩いていると、ブラックが不意に廊下を曲がった。前方を見ると、突き当りにある扉の前にボーイ服を着た男が立っているのが見えた。

 ブラックはその男の前で立ち止まり、服の内ポケットから何かをちらつかせる。すると相手はうやうやしくお辞儀をして、扉から退いた。
 三号室でございます、という言葉を聞くと、ブラックはボーイが守っていた扉を開いて先に進みだす。引っ張られて入った所は、またしても長い廊下だ。部屋の扉らしきものが、ずらっと並んでいる……が、なんだか雰囲気がおかしかった。

 なんていうか……なんか、薄暗い上にピンクっぽいっていうか。

「あ、の……ブラック……?」

 恐る恐る聞くが、相手は前を向いたままだ。
 無言で入り口から三番目の扉に近付くと、俺を引き摺ってその部屋に入った。
 がちゃん、と鍵をかける音がする。

 どこへ連れて来られたのか、と思う間もなく、俺は放り投げられて柔らかい地面に落とされてしまった。いや、これ地面じゃない。ベッドだ。
 おいおいおい待て、さっそくヤる気かよ!!

 そう思って慌てて上半身を起こすと、シルクハットを床に投げ捨てたブラックはいきなり俺に抱き着いてきた。そりゃもう、タックルかと思うくらいに激しく。

「ぅぐっ」

 い、いたい。
 思わず涙目になったが、ブラックは構わずに俺を押し倒してぎゅうぎゅうと抱き締める。その様子はどうもヤらしい事をしたいという訳でもなさそうで、俺は訳が解らずただブラックのするがままに抱かれているしかなかった。

「…………ブラック?」

 抱き締められたまま数分経って、もう一度名前を呼ぶ。
 すると、ブラックは俺の胸に顔を埋めたまま、ようやくぽつりと呟いた。

「……くやしい」
「……?」

 辛そうな声に、思わず眉根を顰める。
 帽子を乱暴に取ったせいで少しボサついている髪を直してやると、ブラックは俺の胸に額を強くこすりつけた。

「僕だって、僕だって嫌だよ。もう嫌だ。こんな下らない事早く終えて帰りたい。もう他の奴になんか協力したくない。二人でいい、あんな奴らなんか放っておいて、ツカサ君だけ連れて逃げたいよ……」

 涙声だ。
 ……もしかして、ブラック泣いてる?

 恐る恐る赤い髪を撫でてやると、体を締め付ける腕の力が強くなった。

「解ってるよ、ツカサ君が危険だって事くらい……僕だって本当はさせたくない、ずっと側に置いて片時も離さずにずっと、ずっとずっとずっと一緒に居たいのに、それをっ、それを我慢してアイツのために首輪を外す方法を探してるのに!!」
「っ……!」

 力任せに体を締め付けられて、思わず息が詰まる。
 だが、それでも俺はブラックを責める事は出来なくて、ただ吐き出される言葉を聞くことしか出来なかった。

「何でこうなる。この国に来てから嫌な事ばっかりだ。僕は、僕はただ、ツカサ君と一緒に居たいだけなのに、どうして次から次に邪魔な奴がいっぱい出てきて、僕達の旅の邪魔をするんだ……」
「……それに耐えられなくなったから、俺をこんな所に連れて来たのか?」

 ピンク色の明かりにぼんやり照らされた、薄暗い部屋。
 なにをする場所なのかもう察しはついているけど、あえて聞く。
 静かな声で問いかけた俺に、ブラックは情けなく歪んだ顔を上げて軽く頷いた。

「アンタねえ……俺より大人だろ?」

 おい、と言いながら両手でむにっと無精髭でザラつき始めた頬を潰してやると、情けない表情のままのブラックは口をへの字に曲げる。
 下顎が震えていて、今にも泣き出しそうな顔になっていた。

「だって、だって……ツカサ君、あの熊と一緒に居る時間が多くなったし、シムラーとの付き合いもあるし、僕も色々やる事が有って、だから一緒に居られる時間が格段に減って、こうして抱き着く時間すらなくなって……」
「あーあーもう、泣くなってば」

 子供みたいにボロボロ泣きだし始める中年に、俺は苦笑せざるを得なかった。
 たぶん、頑張り過ぎて疲れちゃったのもあるんだろうな。
 それにブラックは嫉妬魔で束縛したがりの残念なおっさんだ。今まで我慢してたのもあって、クロウとの口喧嘩で抑えきれなくなってしまったんだろう。

 なんとなく解る気がする。
 好きな物に触れられずに、ずーっと仕事詰めで働いてる時ほどストレスが溜まる事はない。好きな物が目の前にれば余計にイライラするだろう。
 でも、仕事を放り出す事なんて出来ないから、我慢して根を詰めてしまうんだ。
 そんな事をしたら、後で爆発してしまうのは解りきってる事なのに。

 ……そうだよな。俺も大変だけど、ブラックも大変なんだよな。
 誰だって、好きな子が仕事で他の男とキスしてたら凄い傷付くだろうし。
 ブラックが他の男に色目使ってたら……俺もそう思うんだろうか。

「ツカサ君……?」

 …………。
 なんか、ヤだ。いや、つーか何で俺こんな事考えてるの。良いんだよそれは。
 とにかくブラックも色々大変だったんだ。

 不思議そうに俺を見てくるブラックに、俺は視線を彷徨さまよわせつつ言葉を探る。

「えーと……。その、さ。ブラックは頑張ってるよ。大丈夫、俺もアンタが好きでこんなことしてる訳じゃないって解ってるから」
「ツカサ君……」

 ちゃんと褒めてやった方が良いかな。
 思えば、ブラックったらハーモニックに来てから足を怪我するわ、病み上がりで獣人騒動に巻き込まれるわ、終わったと思ったら作戦考えさせられるわだもんな。
 俺は当事者だからいいけど、ブラックからしてみれば振り回されてるも同然だ。

 ……今日くらいは、ちゃんと正直に言った方が良いのかな。

 少し考えて、俺はブラックを捕まえたまま至近距離で言ってやった。

「この役自体は嫌だけど……さっき言ってくれた事、俺は嬉しかったよ。アンタに頼られてるみたいでさ。……俺だって、守られっぱなしって言うのは嫌だったし……だから、俺はブラック達が考えたこの作戦で良かったと思う」
「本当……?」
「バカ。こんな所で嘘言ってどうすんだよ。……とにかく、一々泣くなよ。辛いのは解るけどさ……こんなことしてても、どうにもならないのはアンタも解るだろ? だから、落ち着いたら帰るぞ。今は……まあ……落ち着くまで……いいから」

 子供じゃないんだから解るだろ、と大人ぶってなだめてやると、頬を掴まれたままのブラックは、ぱあっと顔を輝かせてまたもや俺に抱き着いてきた。
 おいこらちょっと! ベッドに押し倒すんじゃねえ!

「はぁああ……やっぱりツカサ君はツカサ君だぁ……」
「何言ってんのアンタ」
「ねえ、ツカサ君……嬉しいよ、本当に……」

 今さっきまで泣いてたくせに、俺が励ましたら、すぐに笑ってすり寄ってくる。
 本当にこれが中年のやる事かね。
 内心呆れ返るようだったけど、それでもなんだか罵倒が思い浮かばなくて。

「…………言ってろばか」

 小さな声で吐き捨てると、ブラックは「ふふふ」とか言って笑いながら、ベッドで横たわったまま再び俺を抱き締めて来た。今度は、俺の頭を自分の胸に押し付けるようにして。ああもう、恥ずかしい奴だなあ。

 でもまあ、機嫌がよくなったならそれでいいか。
 今ブラックにヘソを曲げられちゃ困る。
 しばらく黙っていてやると、不意に背中を手がつうっと滑った。

 何をする、と顔を上げて睨むと、ブラックは上機嫌にニヤニヤとしながら、

「ねぇ、ツカサ君。……そう言えばさ、最近ずーっとセックスしてなかったよね。だから……今、しない?」

 なんて言いやがる。
 冗談じゃないと更に強く睨み付けるが、既に調子に乗っている相手にはどこ吹く風だ。俺が「嫌だ」と意思表示しているのに気付きもせず、ブラックは俺がかぶっている黒いローブを取り去った。そう、今までローブ被ってたのよ俺。

 そして当然、ローブの下はかつらを被ってないだけで、踊り子の衣装そのままだ。
 下は流石に男物の下着とパレオにしているが、様相的にはあまり変わりがない。だって、劇場から帰ってきてそのまま報告したんだもんな。

 この衣装のままベッドインだなんて、どう考えてもイメクラすぎる。
 やめろとばかりにブラックの胸を押し返すが、まあ当然びくともしないわけで。

「この状況でっ、なに、しようとしてんだっ」
「良いじゃないかっ、僕、ずっと我慢してたんだから……!!」
「だああっ、こういう事してる場合じゃないだろっ!」

 次に誘われた時どうするのかとか、色々話す事が有るだろう。
 必死にそう訴えるけど、ブラックは関係ないとばかりに俺の腕を取って、ベッドに縫い付けてくる。自然と相手が覆い被さるような形になって、顔が近付いてきた。

「ねえ、しようよ、セックス。したら……頑張るから。シムラーの事も、あの熊の事も殺したいけど、我慢するから。逃げたいのも、我慢するから……」
「ブラック……」

 見上げた表情は、また子供が泣く寸前のような顔に歪んでいる。
 今度は絶対ウソだろ。そうやって俺を懐柔しようとしてるんだろ?
 ブラックのやる事なんて大体想像つくよ。
 それで頷いてやったら、泣き顔なんてすぐやめるんだろ。
 解ってる。解ってる、けど。

「…………そうじゃなくて」
「……え?」
「喧嘩とかじゃなくてさ、もっとこう……俺に言う事、ないわけ?」

 大人なら、我慢するのが普通だろ。今更交渉の道具に使うなよ。
 それに、自分が我慢するだけでいいと思ってるのかアンタは。俺だって色々我慢してるのに。そう言う想いをこめて睨むと、ブラックは一瞬きょとんとしたが……合点が行ったのか、それはもう嬉しそうにニッコリと笑った。

「ツカサ君は、僕が絶対に助ける。……どんなことになっても、一緒に居るから。あの熊でも、トルベールでも、ロクショウ君でも無く僕が……ね?」

 絶対だから。
 そう言って、ブラックは俺の頬に唇を落とす。

「…………」

 まあ、こうなるって解ってて付いてきたフシはあるし。
 自分自身にそう言い聞かせて、俺は仕方ないとばかりに大きく息を吐いた。





「困ったなあ……」

 ぴちゃ、と肌を舐める水音が耳に届く。
 俺がその音にひくりと体を震わせると、ブラックは軽く体を起こした。

「ツカサ君……どんどん敏感になって行ってるみたいだよ。これじゃあ、外で僕が触れたら、ツカサ君のココはすぐに濡れちゃうんじゃないのかな……?」

 そう言いつつ、ブラックは俺の素肌をするすると撫で下ろすと、俺の股間をその大きく広い武骨な手でおおった。

「ひっ、ぁ……」

 生暖かい感触は、指ですうっと俺のものの先端を撫でる。

「ぅああっ、や、ぁ、あぁあ……!」

 今まで上半身を犬のように舐められて攻め立てられていた俺は、熱を持ったそこにようやく手が触れた事に思わず喜んでしまった。
 既に服なんてものはなく、俺の体に残っているのは腕輪やアンクレットだけだ。

 それが余計にいやらしい姿に見せているのか、ブラックの喜びようはいつも以上に酷かった。でも、今更それをとがめられるわけも無く。
 せめて変なことを言うなと顔をしかめてみせるが、それすら嬉しいのか、ブラックは笑みを深めてゆっくりと掌全体で撫で上げるかのように俺の股間を擦り出した。

「あっ、あ……あぁああ……っ、ぃ、や……だめだ、って、それぇ……!」
「ほら……前はこんな事じゃこんなに喜ばなかっただろう? 僕とセックスしてるせいで、ツカサ君はどんどん敏感になっていやらしい身体に熟れて来てるんだね……嬉しいよ……僕のために、体が自然と慣れようとしてるんだ……」
「ば、かぁ……! や、もっ……ひ、あ、あぁあぁっ!」

 ブラックの手は、ぴったりと閉じた俺の内腿の間に深く入り込み、蟻の門渡りから俺の急所まで、全体をゆっくりと擦りあげる。竿ではなく先端だけに当たる手は、急所に来たら急に押し付けるように動くので、俺はどうしようもない。

 ベッドの上で身悶えシーツを掴む俺を見て、ブラックは嗤う。

「ツカサ君の可愛いペニスが、どんどん勃ってきたよ……ははっ……ねえ、こんなにお漏らししてる……。音、聞こえるかな」

 半勃ちの俺の物を軽く掴んで、ブラックは先端を指で捏ねる。
 その度に、にちにちというなにか粘着質な水音がして、俺はたまらず両手で顔を覆った。自分が興奮している事は解ってる。気持ちいいのだって、もう認めざるを得ない。けど、そんな風になじられると、どうしても体が熱くなって堪らなかった。

「ば、か……も、やるなら……早く、しろよぉ……!」

 せめて、ブラックの手管におぼれている事だけは知られたくなくて、ぼんやりしてきた頭を必死に働かせて虚勢を張る。ブラックはそんな俺の姿を見て、嬉しそうに目を細めつつ俺の腰を掴んだ。
 そうして、あまり力の入らない俺の体をうつぶせにする。

「ぶら、っく……?」

 整わない熱い息を吐き出しながら、俺は相手に呼びかける。
 だけど、ブラックは答えずに、俺の腰を持ち上げて膝をつかせる格好にさせた。

 尻を高く上げる格好。
 ああ、これって。

「……今日は、何もないんだ。ごめんね」
「え……?」
「だから、ちょっと気持ち悪いかも知れないけど……これで……」

 シーツの上で、ブラックが動く素振りを見せる。
 何事かと振り返ろうとするが、この格好では相手が何をしているのか解らない。
 なんだか急に不安になってもう一度名を呼ぼうとすると。

「ふぁっ……!?」

 高く持ち上げられた尻の谷間が指でぐっと広げられ、そこに息が掛かったような気がした。……いき……息だって?
 一体どうして、と思っていると。

「ひあぁあっ!?」

 唐突に、すぼまりを濡れた生暖かい何かが撫で上げた。
 何が起こったのか解らなくて混乱する俺に構わず、そのはぺちゃぺちゃと水音みずおとを立てながら尻の谷間を濡らしていく。

 回復薬とも潤滑剤とも違うその感触はどうにも気味が悪く、俺はシーツを掴んで逃れようとする。だけど、腰は両手で押さえられていて、シーツは俺の手でたゆんで行くだけだ。そのうち、濡れた生暖かい何かは窄まりの中に入ろうとして、ノックをするように先端でツンツンと突き出した。

「ひっ、あ……あっ……! や、やだ、それやだぁ……!」

 突かれるたびに、触れられてない俺の物がピクピクと反応してしまう。
 後ろの快感を教え込まれてしまった俺の体は、ブラックがそこを「犯す」という意図を持って弄っているのだと思い知るたびに、芯から熱くなっていく。

 何をされてても、もう。

「ツカサ、く……もうちょっと、我慢ひへね……」

 不格好な声音。
 喋るたびに息が窄まりにかかり、生暖かい何かが動くのを感じて、俺はようやくブラックの舌が俺の窄まりを弄っているのだと知った。

 ……ま、まって。そんな、口でってお前!

「だ、だめっ、や、そこ、きたなっ……きたない、からぁ……!」
「汚い? どこが……言ってごらん。汚い場所が有ったら、舐めてあげる……」
「ぃ、や……だっ……も……ばかっ……ばかぁ……!!」

 そういう事を言ってるんじゃねーんだよ!!
 俺の理性が有るうちに止めてくれって必死にお願いしてるのに、どーして聞いてくれないの! つーかそんなホモ漫画みたいな事言わないで頼むから!

 舌で舐められてるんだと思えば思う程、恥ずかしさが煮詰まっていく。
 あまりにも信じられなくてシーツに頭を擦りつけるが、生暖かい舌が入り込む感覚には勝てない。舐められて散々解れた窄まりは、簡単に侵入を許してしまった。

「あぁああっ……!」

 当然、奥まで届く訳がない。
 指を使って尻の肉を押し広げられ、ひだが緩むように丹念に触れ尽くされる感覚も相まって、俺はいつの間にか腰に熱く重い感覚を覚えていた。
 足りない。自然と頭がそう考えて、俺は頭を振る。
 だけど、熱に犯されてしまった体は最早止めようがなくて。

「ぶら、っく……も……もぉ、舌……やだ、ぁ……」
「ああ……ごめんね、泣かせちゃったね……。でも、解さないと……きっと今日は辛いからさ。……でも、そうだね……。もういいか……」

 熱い息が、ようやく尻の谷間から離れる。
 同時に強く広げられていた尻の肉が解放されて、俺は無意識に息を吐いた。

「はっ……はぁ……は……」
「そう、息を吐いててね……」

 俺の頭を撫でて、ブラックがひたりと熱い肉塊を尻に当てる。
 そのまま谷間に潜り込んでくるあまりにも太くて硬い感覚に、俺は大きく震えた。

 怖さと、やっと来たと言う歓喜。
 思わず少し下がっていた腰を上げる俺に、ブラックはふっと笑い目的の場所へとぐっと欲望を押し付けた。濡れそぼったそこは、俺の意思とは関係なく熱を求めてブラックの物の先端をきゅうと締める。

「っ……はぁ……っ……ツカサ君も、期待してくれてるんだね……嬉しいよ……」
「んっ……んぅ……」
「いくよ……全部入るまで、我慢してね……っ」

 そう言って、ブラックはゆっくりと腰を動かし始めた。
 押し入ってくる熱は限界まで俺のナカを広げ、強引に奥へと突き進む。もう慣れ切ったはずの行為だったが、先端が少し入って来ただけで、俺の体は簡単に悲鳴を上げてしまった。

「あ゛、っが……ぃ゛、っう゛、あ、ぁあ゛……!!」
「息、吐いて……ッ、ごめ……つらい、よね……っ」

 荒い息を吐きながら、辛そうにブラックも声を漏らす。
 今更ながらに回復薬の効力を思い知ったが、今はそれを求めても叶わない。
 入れろ、と言った手前ブラックを罵倒することも出来ず、俺は頭を振って必死の思いで苦痛に耐えた。

 もう、言葉にならない。体が引き裂かれそうで、それくらいブラックのは大きくて痛くて、堪らなかった。
 ちゃんと慣らさずに入れると、こんな事になっちゃうんだ。
 相手が大きいと、受け入れるだけでも、こんなに大変で。

 こんなの、絶対ブラック以外の奴となんかやれるはずがない。
 一人だけで十分だよ、こんな辛いの。

「も゛……っ、はぃ゛、った……?」
「は、はん……ぶん……ッ、うぅ……ツカサく……はっ、はぁ……きみの、穴……ちゃんと慣らさないと、こんなっ、狭くて……キツかったんだね……っ」
「ぁ、あ……!?」
「食い千切られそ……っあは……ほんと、ツカサ君の体…………可愛いね……っ」

 半分、半分入ったのか?
 自分じゃ解らない。痛くて、辛くて、ナカでブラックのがドクドクいって広げて行ってるのだけしかもう。
 ナカをブラックが突き進む度に衝撃が来て、喉がぐっと締まる。
 悲鳴を上げられないくらいの圧迫感が酷くて、ただただ苦しかった。

 だけど、不思議とやめたいとは思わなくて。

「はっ、はは……! はいった、よ……! 動くね……っ」

 根元まで入ったのがそんなに嬉しいのか、ブラックが弾んだ声で報告してくる。
 ああ、やっと……。そう思って息を吐いたと同時、内部を持って行かれるように大きく熱塊が引き抜かれて、俺は情けない悲鳴を上げてしまった。

「っあぁああ゛あ!?」
「ぅっ、あぁ……」

 感じ入った声が耳をくすぐる。
 俺のことなんか気にしてないのか、それとも感じ過ぎて俺に構う暇もないのか、ブラックはゆっくりと腰を動かして、出し入れし始めた。
 引き抜かれ、深く奥まで突かれて、俺はその度にすすり泣くような声で答える。

 やがてそれは段々と激しさを増していき、腰がギシギシ言うくらいにピストンは強くなっていった。そうなると俺も最初の痛みは薄れていて。

「あっ、ああぁ……ひっ、あ、っあぁあ……!」
「奥まで沢山突いてあげるね……ねえっ、ほら……もうこんなに……」

 引き抜いて打ち込まれる時にぐぷぐぷと恥ずかしい音が聞こえて、俺はシーツに顔を押し付ける。痛みのせいでまだ快感に浸りきれてなくて、犯されていると言う事実を突きつけられる度に、体が焼けるように熱くてたまらなかった。

 ブラックが俺に覆い被さって来て、背中から俺を抱き締めながら根元までぐっと熱を押し込んできた。いっぱいいっぱいにナカが広がって、俺はたまらず震える。
 それすらも愛しいと言うように、ブラックは俺の首筋に何度もキスを落とした。

「ひあっ、ぁ、あ、も……や……あ、ぁああぁ!」
「ツカサ君、ツカサ君……っ、すき……好きだよ…………!」

 一際大きく、腰を打ち付けられる。反射的に締め付けてしまった俺に、耐え切れなかったのかブラックが勢いよく体内で欲望を吐き出した。
 その衝撃に、とうとう俺は我慢できず……

「あっ、あ……あぁあ…………!!」

 触れてもいないのに、達してしまった。

 …………これ、って……まさか……ところて……。
 いや、もういいや、考えない事にしよう……。

 頭がぼんやりしてて、何も考えられない。だから、もういい。
 気持ちいいんだから何でもいいや。











 
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