竜の花嫁〜最弱回復術師から世界最強の花嫁への道〜

かーにゅ

文字の大きさ
4 / 137
本編

4

しおりを挟む
「…ん…」
「…起きたか」

…へ?

「…おはよう。私の愛しいリオ…」
「りお…?」
「私のマリネが見つかったら名付けようと決めていたのだ。…長らく待たせてしまったな」
「…りお…僕の…名前、ですか?」
「…?あぁ。だがその名は私しか口にせぬ。マリネとは竜にとっては唯一無二の存在。番の知らぬことなどあってはならぬのだ」
「ゆいーつむに…つがい…」

分からない言葉が多すぎて理解できない…。

「…だが」

ふと、サトは僕の手を取った。

「この傷はなんだ。まだ癒えていない…真新しい傷が幾つも…」

あれ?サトは知らないのかな…。

「僕…は昔から…その…体液で回復させる…ことが出来て…」
「…まさか」
「…いいんです。僕にできることはこれぐらいですから」

勇者様の役にたてるのであればなんでもよかった。両親のいない僕を育ててくれた村長も…大切だった村もなくなってしまったから。帰れる場所もなくした僕は勇者様に慈悲を恵んでくださる以外選択肢がなかったから。

「…すまない」
「…サトのせいじゃないです」
「すまない…私の…私のせいだ。無駄にリオを傷つけてしまった…」

ど…どうしよう。サトが落ち込んじゃった…?

「…本来であれば…リオは生まれてすぐこちらに来る予定だったんだ」
「え…あの、待って…ください。…生まれてすぐ…?僕は捨てられていたはず…じゃ…」
「…旅人の、女の腹から生まれたのがリオだ。その女はリオを産み落としすぐに息絶えた」
「…僕の…お母さんが…」

自分の命と引き換えに僕を…産んでくれた?

「…リオ。自分の背中のアザを知っているか?」
「…アザ?…知りません」

そんなものがあることも…今初めて知った。でも昔から村長は僕に触れる時、必ず肩や手に触れていた。時々頭や頬を撫でてくれた。

「リオの背中一面に広がるアザは番紋と呼ばれるものでな。…体中の神経を集めたようなものなんだ」
「それが…何か?」
「そこに少しでも力が加われば簡単に気を失ってしまうんだ。ここに来る前、あの男に蹴り飛ばされただろう?」

あれは凄く痛かった。痛くて痛くて…気を失ったんだ。

「…見せてくれないか?」
「何を…するんですか?」
「番紋を隠す」
「…かくす…?」
「あぁ。私の魔力で覆うから見えなくなるし衝撃が加わることも無くなる。…別の方法もあるのだがそれはまた次の機会に、な?」

リオは丁寧に僕の服を脱がせると背中に手を当てた。

くすぐったい…けどそこから暖かいのが広がって…なんだろう。気持ちいい…。

「…リオ?」
「すぅ…すぅ…」
「…寝てしまったか」

処置を終えたサトはリオの服を元に戻し、薄布をかけた。

「おやすみ。私のリオ…」
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

王子様から逃げられない!

一寸光陰
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...