18 / 39
デスゲーム1日目
人狼編 ⑤
しおりを挟む「どうするの……?」
「どうするも何も無いでしょ、水瀬を吊るわよ」
「え、でもアイツ、マドカのこと白って……」
「あんなの当てずっぽうに決まってるでしょ」
ハルは呆れたように呟いた。
マドカは少し天然というか、悪く言えばバカな所がある。
エリの提案により、残り時間30分になるまで各自で話し合うことになった。水瀬は相変わらず一人だが、エリが気を利かせたようで、今は反対側で四人固まって話している。
「私たちは役職を公開しましょう」
「私も同じこと思ってた、カナ。カナは占い師だよね」
「ええ」
「私は騎士。だから占い師であるカナを守るね。白出しもされてるから信憑性あるでしょ?」
「今更ウチラの間で疑いはしねーよ」
ぶっきらぼうにエリカが言う。
「アタシは市民だ。何の役職もねえ」
「マドカも市民!だからマドカ目線は一応水瀬の占い師は信じられるけど……」
「あんな裏切者を信じて私を疑うの?マドカ」
「そんな訳ないじゃん!」
そう……アイツは裏切者。だからアイツをいじめているのは罰であり、復讐だ。
「そうなると、向こうに人狼陣営が固まっていることになるね」
「ええ……まず水瀬はまず間違いなく人狼。エリとかいうやつも怪しいわね。そうなると残りのニ人のどちらかが人狼陣営だけど……判断材料が無いわ」
「とりあえず人狼陣営確定なのは水瀬だろ?さっさと吊っちまおうぜ」
「向こうも4票がカナに集まるからまだ吊れないわよ……同数になる」
「そうじゃん」
「エリカあんたねえ……」
「ねえ、ハル」
「ん?」
「昨日ハルが言ってた、この人狼ゲームは水瀬が仕組んでいるって話、どう思う?」
「あー……」
マドカとエリカの視線がハルに集まる。ハルは何事も要領がよく、山女の生徒とは思えないほど地頭がいい。
「可能性は高いと思う……だけど証拠が無い。そもそも水瀬の目的が私たちに対する復讐だとして、なんでこんな回りくどい方法を取るのかが分からない。私たちを殺すつもりなら、拉致した段階で殺せばいい。わざわざこんな大がかりに、しかも知らない生徒まで巻き込んで人狼ゲームをするのは理に適っていない」
「そうね……そう思う」
「復讐か……思い上がりだぜ」
「そうだよ!悪いのはあの女じゃん!」
「まあその話は一旦置いておきましょう」
ここらで止めないと、また悪口大会になってしまう。今はまず現状の確認と今後の動きを合わせるべきだ。
「私たちの目標は、4人で生きて外に出る。それだけよ」
「そうね」
「おうよ」
「うん!」
アラームが室内に響き渡る。30分前になったようだ。
「じゃ、最後の会議始めよ~~」
相変わらずエリは緊張感が無い様子でこちらに呼びかけてくる。
~~~~~~~
「じゃ、最後の会議始めますか~!えーっと、ちゃんとした人狼だと一人ずつ吊る人と理由を喋るんだよね!私たちもやる?」
「別にタブレットにはそういうルールは書いてないでしょう。守る理由は?」
「雰囲気出るかな~って!」
会場に「何だコイツ……」という空気が流れているのが伝わる。
「いらないわね」
「いらない」
「いらねェなァ……」
「うう~みんなして酷いな~……じゃあとりあえず誰に入れるかだけはハッキリさせとこう!」
「決まっているでしょ。水瀬、アンタよ」
水瀬を睨みつける。相変わらず長ったらしい前髪のせいで上手く感情を読み取れない。
「お~その心は?」
「占い師で対抗しているから、それ以外にいる?」
「でもマキちゃんはそちらのマドカちゃんの市民を当てたよ?」
「当てずっぽうを否定できないわ」
「それはあなたも同じでしょう?」
エリの視線が突き刺さる。常に笑っているようで、目の奥は笑っていないのか、冷たさを感じた。
「……そうね、そこは否定できない。だから私目線はあくまで水瀬が人狼サイドってだけ」
「そうなると、マキちゃんも同じ意見かな?」
「……はい」
「そっか~~、知り合い同士なんでしょ?バッチバチだねえ~~……一応これ、吊られた人死んじゃうけどいいの?」
「ええ。せいせいするわ。あなたもそうでしょ?」
「…………」
「ふ~~ん?まあよくわかんないけどいっか☆じゃあ今日はマキちゃんかカナちゃんか、どっちかを吊る日だねえ~、あ、そういえば騎士がまだ名乗り出てないね?」
「それは出ないと思いますよ」
今まで沈黙を貫いてきた山内シオリが口を開いた。
「騎士は真っ先に人狼に狙われるポジションですからね……死にたくないんでしょう」
「あ、そっか☆」
「それを言うってことはあなたは騎士じゃなさそうね」
ハルが割り込む。
「まるで他人事みたい……自分が騎士だったらそんな発言はしないと思いますけど」
「そうですか?一般論を語っただけです」
「ふーん……」
『時間になりました。ここから一切会話は禁止です。人狼だと思う人物をタブレットで選択し、送信ボタンを押してください』
天井からアナウンスが流れる。Tではなく、電話の自動音声のようなものだった。しばし沈黙が流れる。
数分経って、再度頭上からアナウンスが流れた。
『全員の投票が完了しました。華村カナさん 4票。水瀬マキさん 4票。同数なので、本日の処刑者はおりません。今後はタブレットに記載されているスケジュールで行動してください』
アナウンスが終わり、背後からガシャッと音がした。どうやら各自の部屋のロックが解除されたようだ。
初日の会議が終わった。これから昼休憩を挟み再び「夜」がやってくる……今度の夜は、人狼が動く。
間違いなく、誰かは死ぬ。
心臓が鼓動を速めた。大丈夫。私のことはハルが守ってくれるはず。
だけど、他の皆は……
バタン、と大きな音が鳴った。各々が部屋に戻り、「明日」に備える。
なんともまあ、ややこしい話だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!
コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。
性差とは何か?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる