デスゲーム運営会社におけるデスゲーム殺人事件の顛末について

イカダ詫び寂

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デスゲーム1日目

人狼編 ⑤

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「どうするの……?」

「どうするも何も無いでしょ、水瀬を吊るわよ」

「え、でもアイツ、マドカのこと白って……」

「あんなの当てずっぽうに決まってるでしょ」



 ハルは呆れたように呟いた。

 マドカは少し天然というか、悪く言えばバカな所がある。



 エリの提案により、残り時間30分になるまで各自で話し合うことになった。水瀬は相変わらず一人だが、エリが気を利かせたようで、今は反対側で四人固まって話している。



「私たちは役職を公開しましょう」

「私も同じこと思ってた、カナ。カナは占い師だよね」

「ええ」

「私は騎士。だから占い師であるカナを守るね。白出しもされてるから信憑性あるでしょ?」

「今更ウチラの間で疑いはしねーよ」



 ぶっきらぼうにエリカが言う。



「アタシは市民だ。何の役職もねえ」

「マドカも市民!だからマドカ目線は一応水瀬の占い師は信じられるけど……」

「あんな裏切者を信じて私を疑うの?マドカ」

「そんな訳ないじゃん!」



 そう……アイツは裏切者。だからアイツをいじめているのは罰であり、復讐だ。



「そうなると、向こうに人狼陣営が固まっていることになるね」

「ええ……まず水瀬はまず間違いなく人狼。エリとかいうやつも怪しいわね。そうなると残りのニ人のどちらかが人狼陣営だけど……判断材料が無いわ」

「とりあえず人狼陣営確定なのは水瀬だろ?さっさと吊っちまおうぜ」

「向こうも4票がカナに集まるからまだ吊れないわよ……同数になる」

「そうじゃん」

「エリカあんたねえ……」



「ねえ、ハル」

「ん?」

「昨日ハルが言ってた、この人狼ゲームは水瀬が仕組んでいるって話、どう思う?」

「あー……」



 マドカとエリカの視線がハルに集まる。ハルは何事も要領がよく、山女の生徒とは思えないほど地頭がいい。



「可能性は高いと思う……だけど証拠が無い。そもそも水瀬の目的が私たちに対する復讐だとして、なんでこんな回りくどい方法を取るのかが分からない。私たちを殺すつもりなら、拉致した段階で殺せばいい。わざわざこんな大がかりに、しかも知らない生徒まで巻き込んで人狼ゲームをするのは理に適っていない」

「そうね……そう思う」

「復讐か……思い上がりだぜ」

「そうだよ!悪いのはあの女じゃん!」

「まあその話は一旦置いておきましょう」



 ここらで止めないと、また悪口大会になってしまう。今はまず現状の確認と今後の動きを合わせるべきだ。



「私たちの目標は、4人で生きて外に出る。それだけよ」

「そうね」

「おうよ」

「うん!」



 アラームが室内に響き渡る。30分前になったようだ。



「じゃ、最後の会議始めよ~~」



 相変わらずエリは緊張感が無い様子でこちらに呼びかけてくる。




 ~~~~~~~



「じゃ、最後の会議始めますか~!えーっと、ちゃんとした人狼だと一人ずつ吊る人と理由を喋るんだよね!私たちもやる?」

「別にタブレットにはそういうルールは書いてないでしょう。守る理由は?」

「雰囲気出るかな~って!」



 会場に「何だコイツ……」という空気が流れているのが伝わる。



「いらないわね」

「いらない」

「いらねェなァ……」

「うう~みんなして酷いな~……じゃあとりあえず誰に入れるかだけはハッキリさせとこう!」

「決まっているでしょ。水瀬、アンタよ」



 水瀬を睨みつける。相変わらず長ったらしい前髪のせいで上手く感情を読み取れない。



「お~その心は?」

「占い師で対抗しているから、それ以外にいる?」

「でもマキちゃんはそちらのマドカちゃんの市民を当てたよ?」

「当てずっぽうを否定できないわ」

「それはあなたも同じでしょう?」



 エリの視線が突き刺さる。常に笑っているようで、目の奥は笑っていないのか、冷たさを感じた。



「……そうね、そこは否定できない。だから私目線はあくまで水瀬が人狼サイドってだけ」

「そうなると、マキちゃんも同じ意見かな?」

「……はい」

「そっか~~、知り合い同士なんでしょ?バッチバチだねえ~~……一応これ、吊られた人死んじゃうけどいいの?」

「ええ。せいせいするわ。あなたもそうでしょ?」

「…………」

「ふ~~ん?まあよくわかんないけどいっか☆じゃあ今日はマキちゃんかカナちゃんか、どっちかを吊る日だねえ~、あ、そういえば騎士がまだ名乗り出てないね?」

「それは出ないと思いますよ」



 今まで沈黙を貫いてきた山内シオリが口を開いた。



「騎士は真っ先に人狼に狙われるポジションですからね……死にたくないんでしょう」

「あ、そっか☆」

「それを言うってことはあなたは騎士じゃなさそうね」



 ハルが割り込む。



「まるで他人事みたい……自分が騎士だったらそんな発言はしないと思いますけど」

「そうですか?一般論を語っただけです」

「ふーん……」



『時間になりました。ここから一切会話は禁止です。人狼だと思う人物をタブレットで選択し、送信ボタンを押してください』



 天井からアナウンスが流れる。Tではなく、電話の自動音声のようなものだった。しばし沈黙が流れる。



 数分経って、再度頭上からアナウンスが流れた。



『全員の投票が完了しました。華村カナさん 4票。水瀬マキさん 4票。同数なので、本日の処刑者はおりません。今後はタブレットに記載されているスケジュールで行動してください』



 アナウンスが終わり、背後からガシャッと音がした。どうやら各自の部屋のロックが解除されたようだ。



 初日の会議が終わった。これから昼休憩を挟み再び「夜」がやってくる……今度の夜は、人狼が動く。



 間違いなく、誰かは死ぬ。



 心臓が鼓動を速めた。大丈夫。私のことはハルが守ってくれるはず。

 だけど、他の皆は……



 バタン、と大きな音が鳴った。各々が部屋に戻り、「明日」に備える。

 なんともまあ、ややこしい話だ。

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