デスゲーム運営会社におけるデスゲーム殺人事件の顛末について

イカダ詫び寂

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デスゲーム1日目

人狼編 ⑨

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「へえ!じゃあカナさんって占い師騙りじゃない、ってこと??」

「はい。なので私目線はあえて占い師を名乗り出ることで人狼の矛先をズラしてくれた市民ということになります」



 水瀬とエリが話を進めている。私を置いて、勝手に。どうすればいいんだ。状況を説明してほしい。



 必死に頭を回転させる。盤面を整理する。現状を理解する。



 つまり、水瀬は占い師では無かった。今回のルールでは狂人が占い師に占われた場合「黒」で表示されるはずである。にも拘わらず対抗で占い師COをした私を「白」とした水瀬は……



 間違いなく、人狼だ。



「カナちゃんは?誰を占った?それともスライド※する?」

 ※スライドとは……COしていた役職を撤回し本当の役職をCOすること



 スライドした方がいいのだろうか。ここで占い師を撤回せずに水瀬を黒と言えば今後真占い師として立ち回れる。私の仲間は皆生き残ってるから確実に水瀬を吊れる。しかし、その水瀬が人狼となると吊るに吊れない状況だ。その場合6人1狼1狂人、圧倒的な人狼有利が崩れる。いくら占い師を乗っ取れたからと言って限界があるだろう。第一、まだ水瀬以外の人狼を私は知らない。



 迂闊に動くのは危険か……



「……ええ、スライドします。水瀬さんが言った通り私はただの市民。ごめんなさいね。場を乱して」

「おっけー!じゃあ真占い師はマキちゃん、マキちゃんに占われたマドカちゃんとカナちゃんは市民陣営ってことで話を進めよっか!」



 ハルが驚いたような顔をしてこちらを見ている。エリカは相変わらず機嫌が悪そうにエリを睨んでいるし、マドカは……俯いている?



「しかしそれなら、よくあんな立ち回り劇を演じたものだねえ!スプリットが狙い?」

「まあそうね。まだ初日の時点で誰かを吊るなんて愚行よ」

「カナちゃんは頭がいいんだねぇ~~」

「少しいい?」



 ハルが手を挙げて割り込んだ。



「一旦、考える時間が欲しい。全体での会議は休憩で、各々考察する時間をくれない?」

「そうだね~~色々あったしね~~じゃ一旦解散!30分後くらいにまた集まりましょ~~」



 ハルの機転により会議は一時中断となった。ほっと胸を撫でおろす。あのままだとボロが出ていたかもしれない。



 水瀬はこちらに一瞥もせず、席を立ちエリ達の方へ向かった。




 ~~~~~~~~~~



「カナ、本当なの?」

「……ええ。あのまま水瀬を占い師で置いておくのは危険と思って咄嗟にね。でもああ言われたら引き下がるしか無いわ」



 当然の追求である。



「おい待てよ、そしたらハルの騎士はどうなんだ??」



 エリカが声を荒げた。



「それは大丈夫、ハルは騎士でほぼ確定よ」

「なんでェ」

「今日死んだのがシオリさんだけだから、でしょ。自分で言うのもなんだけど、私は占い師COのカナを守った。一人しか死んでない以上、もう一人の人狼は襲撃に失敗したと考えるのが自然。つまりカナを襲ったのよ。でもカナは生きてるから防衛に成功した、つまり騎士の力が証明された、ってこと。わかった?」

「お、おう……」



 エリカの頭から煙が出ているように見えた。そこまで難しい話じゃないのにコイツは……。



「エリカ、ちなみにあなたの黒疑惑もほとんど晴れたのよ。この4人はハルが騎士って知っているから、仮に人狼が潜んでいたらハルは真っ先に狙われる。でもハルも生きているから、この4人の中に人狼はいないと見ていいでしょうね」

「アァン!?当たり前だろうが!!仲間を疑うかっての!!」

「疑うとかじゃなくて可能性の話だから、落ち着いて」

「わ、わりィ」



 だがこれで私は最悪の状況に置かれた。私が勝つ時、皆は死ぬことが確定してしまったようなものだ。一応、薄い線でハルが人狼であえて誰も噛まずにこの4人の中で騎士としての立ち場を強めた、という可能性もあるが。いや、黒確の水瀬が白と言ったマドカも怪しいが……マドカは反応からして本当に白っぽいんだよなぁ……



「で、これからの話だけど、水瀬が真占い師で、向こうのグループが残り3人……もうエリさんとカオリさんを吊るしか無いよね」

「そうね……ハルの言うとおりだわ。盤面上この4人は白になる訳だし……吊り先は合わせよう。誰にする?」

「……それは、全体の会議で決めた方がいいね。私も騎士COするよ。それより……」



 ハルが固唾を飲んだ。緊張感が伝わってくる。



「……いや、やっぱりまだ何でもない。ちょっと席を外すね」

「?おい、どこ行くんだ?」

「気になることがあってね……」



 そう言ってハルは、席の真ん中、サクラとシオリの死体に近づいて、何やら作業を始めた。



「うわっあいつ死体触ってるよ……よくできんな……」

「死体……何かあるのかな。ハルちゃん頭いいから何かに気づいたとか?」

「まあそんなこったろ。ていうかマドカ、お前全然喋んねえな」

「えっ……い、いや、何でもないよ。どうせマドカじゃなんにもわかんないし、ただの市民だし……」

「そういやよ、なんでマドカは噛まれなかったんだ?」

「え?」

「いや、仮に人狼がエリとカオリなら、わざわざ身内のシオリを噛んでこっちに矛先向けねえのはよくわかんねーなーって」



 エリカは変な所で勘がいい。確かに気になっていたところだ。



「なんで、だろうねぇ……よくわかんないや」

「まあ向こうにもいろいろあるのかもしれないわね」



 反対側のエリのグループを見る。相変わらずの調子でエリが場を回しているようだ。



「私たちも少し休憩しましょう。一人で考える時間も必要よ」

「だな」

「……うん」



 それぞれが席に戻った。ハルは、変わらず死体を何か調べているようだが何をしているかは分からない。
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