19 / 41
第19話:救出
しおりを挟む
「なに……アンタらが助けに行くって!?」
「ふざけたことをぬかすな!」
「お前ら自分が何を言ってるのかわかってんのか!?」
村長や村人は怒気のこもった声で言う。
子どもの戯言とでも思ったのだろう。
だが、ふざけた気持ちなど少しもない。
「はい、俺たちはこれでも冒険者です。困っている人がいれば助けないと。それに、俺の冒険者ランクはAです」
自分の等級魔石を取り出す。
白い輝きを見て、室内の雰囲気が変わった。
「お、おい、魔石が白いぞ!」
「こいつ、Aランク冒険者だったのか」
「まさか、本当にこの子どもがグリズリー討伐を……」
村人たちはとても驚き、先ほどまでの俺を疑うような空気は徐々に消えていった。
〔だから、マスターは強いと言っていますのに〕
〔全然、私たちの言うことを聞いてくれないんだから〕
俺の等級魔石を見ると、村人たちはまた相談を始めた。
「村長、とりあえずあの者に追わせてみてはどうでしょうか?」
「最悪時間稼ぎだけでもしてくれれば」
「男たちもそろそろ戻ってくるでしょう」
マーヨーさんはしばし考え、結論を出した。
「……いいだろう。お前たちにソンレイの救出を頼むとしようか。ただし、ソンレイを救えなかったら、どうなるかわかってるだろうね?」
相変わらず、マーヨーさんの俺たち見る目は鋭い。
まだ完全には信用していないようだ。
それでもチャンスをくれただけでありがたい。
「ありがとうございます、マーヨーさん。絶対に救ってみせます。それで、ソンレイさんはどのあたりで攫われたんですか?〕
「ここから東にある森だよ。ソンレイはその森がお気に入りだからね」
「わかりました。よし、行こう、二人とも」
俺は家を出て森へ向かおうとしたが、エイメスはついてこない。
家の前で静かに佇んでいる。
「エ、エイメス?」
〔エイメスさん、どうしたのですか?〕
〔私の雷に乗った方が速いよ〕
「雷?」
エイメスの身体から激しい稲妻があふれ出た。
稲光をあげながら徐々に何かの形を作り、なんと雷のドラゴンが現れた。
〔これに乗って行きましょう。早い方がいいでしょ?〕
「す、すごい……。エイメスにこんなことができるなんて」
〔さすがは元Sランクダンジョンですね〕
俺もコシーもこんな技を見るのは初めてだ。
村人やマーヨーさんも驚きを隠せていない。
エイメスはまるで大したことないように、さっそうと雷ドラゴンに乗った。
〔ほら、アイトたちも早く乗って〕
「い、いやでも……」
〔稲妻が……〕
エイメスの電撃攻撃の凄さは嫌と言うほど知っている。
もし、感電でもしたら大変だ。
〔だから、平気だって〕
俺とコシーの心配をよそに、エイメスは平然とする。
いつまでも、こうしているわけにはいかない。
「よ、よし、乗るぞ!」
〔それっ!〕
俺はコシーを持ったまま、えいや! とドラゴンに飛び乗った。
強烈な稲妻が全身を駆け巡りとんでもない激痛に襲われる! ……ことはなかった。
「……あ、あれ? 何ともない」
〔大丈夫ですね〕
身体は痺れることもなく、黒焦げになることもなかった。
〔私がアイトたちを傷つけるわけないでしょ〕
「たしかに」
〔そうでした〕
俺たちはホッとする。
〔じゃあ、行くよ。落ちないようにちゃんと掴まっててね〕
「うん、わかった! って、うわっ!」
〔きゃああっ!〕
雷ドラゴンはあり得ないほどの速さで飛ぶ。
一瞬で、村人たちは見えなくなり、周りの風景さはぐんぐん後ろに流れる。
そ、そうか。
雷だからとんでもなく速いのか!
もはや、光の速さといっても過言ではない。
あまりの猛スピードで。俺はエイメスにギュッとしがみつくので精一杯だ。
〔アイトったらぁ、そんなにくっつくと苦しいよぉ〕
「そ、そんなこと言ったって」
エイメスはとにかく機嫌が良いみたいで、それもまたホッとした。
〔あ! あれじゃない? ソンレイさんとかいうの〕
突然、雷ドラゴンが止まり、ガクンと大きく揺れる。
反動で頭がぐわんぐわんするけど、どうにかして会話を続ける。
人の命がかかっているのだ。
「ど、どこにいるの?」
〔ほら、あそこ〕
エイメスが眼下の森を指す。
目を凝らすと、数匹のグリズリーが女の人を抱えているのが見えた。
ちょうど、俺たちの真下だ。
あの女性がマーヨーさんの孫娘に違いない。
「そうだ! きっと、あの人がソンレイさんだよ!」
〔こんなところから見つけるなんて、エイメスさんすごいです!〕
〔じゃあ、助けるね〕
「え? ……って、うわっ!」
直後、雷ドラゴンは真っ逆さまに落ちていった。
あっという間に地面が目の前に迫る。
激突の恐怖にかられ叫んでしまう。
「エイメス、何やってるの!?」
〔このままでは地面にぶつかってしまいます!〕
〔大丈夫だよ〕
俺とコシーの言うことなどまるで聞いてくれず、どんどんスピードが上がる。
ああ、ここで俺は死んじゃうんだ……。
ガチで思う。
あわや地面に激突! ……というところで、雷ドラゴンは急旋回した。
水平になると、今度は正面のグリズリーへ向かう。
猛スピードで。
ソンレイさんは猛烈に近づく俺らを見ると、恐ろしいものでも見たような顔で悲鳴を上げた。
当然だ。
「きゃああ! な、なに!?」
「エ、エイメス、ぶつかっちゃうよ!」
〔衝突します!〕
〔だから大丈夫だって〕
俺たち三人は必死に叫ぶが、エイメスは何の躊躇もなくグリズリーに突っ込む。
ここまで来たら逆に潔くて清々しい。
稲光が煌めいて視界が真っ白になったかと思うと、俺たちは上空にいた。
森が遥か下に見える。
「……え? あれ? さっきまで森にいたのに」
〔ど、どういうことですか?〕
俺とコシーが唖然と森を見ていたら、エイメスはキョトンとして言った。
〔二人ともびっくりしすぎだよ。グリズリー倒して、ソンレイって人助けて、また空に昇ってきただけなのに〕
「グリズリーを倒したって? あっ!」
気がついたら、俺の前のスペースにグリズリーの魔石が何個も乗っかっていた。
あの一瞬で倒しちゃったのか……そうだ! ソンレイさんは!?
ソンレイさんもまた、雷ドラゴンの背中にいた。
しかし、気絶しているのか目がぐるぐるしてぐったりしている。
俺とコシーは慌てて揺さぶった。
「大丈夫ですか!? しっかりしてください!」
〔ソンレイさん、目を覚ましてください!〕
しばらく揺すると、ソンレイさんは目を覚ました。
「う、う~ん、私はいったい……きゃあああっ! なんで、こんなところにいるの!? 空の上、ドラゴン、不思議な人たち!」
「落ち着いてください。俺はアイトと言って、“鳴り響く猟団”から来ました。マーヨーさんに言われてあなたを助けに来たんです」
「……おばあちゃんが? それに“鳴り響く猟団”って、この辺りで一番大きいギルドじゃ……」
事情を話すと、ソンレイさんは落ち着いた。
「……な、なるほど。すみません、取り乱してしまって……。グリズリーから救ってくれて本当にありがとうございました」
「いえいえ、当たり前のことをしただけですから。この雷ドラゴンは仲間のエイメスが出してくれたんですよ」
〔仲間じゃなくて奥さんね〕
すかさず、エイメスのやや硬い声が飛ぶ。
「そ、そうだったね……ゴ、ゴホン。そして、こっちはコシーです。魔力を込めると大きくなります」
〔こんにちは。コシーです〕
「私はソンレイと申します。よろしくお願いします。この度はなんとお礼を言ったら……」
ソンレイさんは青みがかった綺麗な髪をしており、なんとなくサイシャさんのような雰囲気がある。
サイシャさんに少し似ているな。
ふと視線がぶつかり、俺らはしばし見つめ合ってしまった。
そっとエイメスの様子を窺うと消えていたね……光が。
ま、まずい、この流れは!
〔ねえ、アイト…………どうしたの?〕
「きゃっ、何だかピリピリしだした!?」
「エイメス、ストーーーップ! 他意はないから! 魚の鯛じゃないくて隠し事の他意!」
雷ドラゴンの輪郭が迸るかと思ったら治まった。
エイメスの目にも光が戻る。
〔よかったぁ。黒焦げにするところだったよ……じゃあ、帰ろうか〕
〔「うわあああっ!」〕
行きよりも数段早いスピードで、俺たちは村に帰った。
□□□
数分も経たずにマーヨーさんの家へ着き、よろよろと雷ドラゴンから降りる。
そ、空を猛スピードで飛ぶのは、なかなかに疲れるな。
「あ、あのぉ、戻りました……」
しょぼしょぼと家に声をかけると、大慌てで村人とマーヨーさんが出てきた。
「「村長! あのガキどもが帰ってきました!」」
「なに、もう帰ってきたのかい!? どうせ怖気づいて諦めたんだろうよ!? やっぱり、男たちが帰るのを待ってればよかったわい!」
マーヨーさんたちは文句を言っていたけど、俺たちを見ると動きが止まった。
ソンレイさんが真っ先に駆け出す。
「おばあちゃ~ん!!」
「ソンレイ!!」
マーヨーさんは飛びつくように抱きついた。
しきりに頭を撫でる。
「ちょっと、おばあちゃん。恥ずかしいわ」
「ソンレイ……! ソンレイ……! よかった、本当によかった……!」
二人が抱き合っているのを見ると、俺も嬉しい気持ちになった。
グリズリーに攫われたけど怪我がなかったのも幸いだ。
「よかった、無事に再会できて」
〔私も嬉しいです〕
〔よかったよかった〕
しばらく抱き合った後、マーヨーさんがこちらに来た。
初対面の時とは違って、穏やかな表情だ。
「アイトと言ったね。ソンレイを助けてくれて本当にありがとう。冷たい態度をとって本当に申し訳なかった」
マーヨーさんが頭を下げると、村人たちも申し訳なさそうに頭を下げた。
「あ、頭を上げてください! 俺たちは当たり前のことをしただけですから!」
〔危ない目に遭っている人を見過ごすことはできません〕
〔ケガがなくて良かったねぇ〕
攻撃的な態度を取られたことは、別に怒っていない。
ソンレイさんが無事だったらそれでいいのだ。
「いいや、謙遜しないでおくれ。あんたらがいなかったら、今頃ソンレイはどうなっていたことか……いくらお礼を言っても足りないくらいさ。お前たち、おもてなしの準備だよ!」
マーヨーさんは大きな声で号令をかける。
断る間もなく、すぐに宴が始まってしまった。
「ふざけたことをぬかすな!」
「お前ら自分が何を言ってるのかわかってんのか!?」
村長や村人は怒気のこもった声で言う。
子どもの戯言とでも思ったのだろう。
だが、ふざけた気持ちなど少しもない。
「はい、俺たちはこれでも冒険者です。困っている人がいれば助けないと。それに、俺の冒険者ランクはAです」
自分の等級魔石を取り出す。
白い輝きを見て、室内の雰囲気が変わった。
「お、おい、魔石が白いぞ!」
「こいつ、Aランク冒険者だったのか」
「まさか、本当にこの子どもがグリズリー討伐を……」
村人たちはとても驚き、先ほどまでの俺を疑うような空気は徐々に消えていった。
〔だから、マスターは強いと言っていますのに〕
〔全然、私たちの言うことを聞いてくれないんだから〕
俺の等級魔石を見ると、村人たちはまた相談を始めた。
「村長、とりあえずあの者に追わせてみてはどうでしょうか?」
「最悪時間稼ぎだけでもしてくれれば」
「男たちもそろそろ戻ってくるでしょう」
マーヨーさんはしばし考え、結論を出した。
「……いいだろう。お前たちにソンレイの救出を頼むとしようか。ただし、ソンレイを救えなかったら、どうなるかわかってるだろうね?」
相変わらず、マーヨーさんの俺たち見る目は鋭い。
まだ完全には信用していないようだ。
それでもチャンスをくれただけでありがたい。
「ありがとうございます、マーヨーさん。絶対に救ってみせます。それで、ソンレイさんはどのあたりで攫われたんですか?〕
「ここから東にある森だよ。ソンレイはその森がお気に入りだからね」
「わかりました。よし、行こう、二人とも」
俺は家を出て森へ向かおうとしたが、エイメスはついてこない。
家の前で静かに佇んでいる。
「エ、エイメス?」
〔エイメスさん、どうしたのですか?〕
〔私の雷に乗った方が速いよ〕
「雷?」
エイメスの身体から激しい稲妻があふれ出た。
稲光をあげながら徐々に何かの形を作り、なんと雷のドラゴンが現れた。
〔これに乗って行きましょう。早い方がいいでしょ?〕
「す、すごい……。エイメスにこんなことができるなんて」
〔さすがは元Sランクダンジョンですね〕
俺もコシーもこんな技を見るのは初めてだ。
村人やマーヨーさんも驚きを隠せていない。
エイメスはまるで大したことないように、さっそうと雷ドラゴンに乗った。
〔ほら、アイトたちも早く乗って〕
「い、いやでも……」
〔稲妻が……〕
エイメスの電撃攻撃の凄さは嫌と言うほど知っている。
もし、感電でもしたら大変だ。
〔だから、平気だって〕
俺とコシーの心配をよそに、エイメスは平然とする。
いつまでも、こうしているわけにはいかない。
「よ、よし、乗るぞ!」
〔それっ!〕
俺はコシーを持ったまま、えいや! とドラゴンに飛び乗った。
強烈な稲妻が全身を駆け巡りとんでもない激痛に襲われる! ……ことはなかった。
「……あ、あれ? 何ともない」
〔大丈夫ですね〕
身体は痺れることもなく、黒焦げになることもなかった。
〔私がアイトたちを傷つけるわけないでしょ〕
「たしかに」
〔そうでした〕
俺たちはホッとする。
〔じゃあ、行くよ。落ちないようにちゃんと掴まっててね〕
「うん、わかった! って、うわっ!」
〔きゃああっ!〕
雷ドラゴンはあり得ないほどの速さで飛ぶ。
一瞬で、村人たちは見えなくなり、周りの風景さはぐんぐん後ろに流れる。
そ、そうか。
雷だからとんでもなく速いのか!
もはや、光の速さといっても過言ではない。
あまりの猛スピードで。俺はエイメスにギュッとしがみつくので精一杯だ。
〔アイトったらぁ、そんなにくっつくと苦しいよぉ〕
「そ、そんなこと言ったって」
エイメスはとにかく機嫌が良いみたいで、それもまたホッとした。
〔あ! あれじゃない? ソンレイさんとかいうの〕
突然、雷ドラゴンが止まり、ガクンと大きく揺れる。
反動で頭がぐわんぐわんするけど、どうにかして会話を続ける。
人の命がかかっているのだ。
「ど、どこにいるの?」
〔ほら、あそこ〕
エイメスが眼下の森を指す。
目を凝らすと、数匹のグリズリーが女の人を抱えているのが見えた。
ちょうど、俺たちの真下だ。
あの女性がマーヨーさんの孫娘に違いない。
「そうだ! きっと、あの人がソンレイさんだよ!」
〔こんなところから見つけるなんて、エイメスさんすごいです!〕
〔じゃあ、助けるね〕
「え? ……って、うわっ!」
直後、雷ドラゴンは真っ逆さまに落ちていった。
あっという間に地面が目の前に迫る。
激突の恐怖にかられ叫んでしまう。
「エイメス、何やってるの!?」
〔このままでは地面にぶつかってしまいます!〕
〔大丈夫だよ〕
俺とコシーの言うことなどまるで聞いてくれず、どんどんスピードが上がる。
ああ、ここで俺は死んじゃうんだ……。
ガチで思う。
あわや地面に激突! ……というところで、雷ドラゴンは急旋回した。
水平になると、今度は正面のグリズリーへ向かう。
猛スピードで。
ソンレイさんは猛烈に近づく俺らを見ると、恐ろしいものでも見たような顔で悲鳴を上げた。
当然だ。
「きゃああ! な、なに!?」
「エ、エイメス、ぶつかっちゃうよ!」
〔衝突します!〕
〔だから大丈夫だって〕
俺たち三人は必死に叫ぶが、エイメスは何の躊躇もなくグリズリーに突っ込む。
ここまで来たら逆に潔くて清々しい。
稲光が煌めいて視界が真っ白になったかと思うと、俺たちは上空にいた。
森が遥か下に見える。
「……え? あれ? さっきまで森にいたのに」
〔ど、どういうことですか?〕
俺とコシーが唖然と森を見ていたら、エイメスはキョトンとして言った。
〔二人ともびっくりしすぎだよ。グリズリー倒して、ソンレイって人助けて、また空に昇ってきただけなのに〕
「グリズリーを倒したって? あっ!」
気がついたら、俺の前のスペースにグリズリーの魔石が何個も乗っかっていた。
あの一瞬で倒しちゃったのか……そうだ! ソンレイさんは!?
ソンレイさんもまた、雷ドラゴンの背中にいた。
しかし、気絶しているのか目がぐるぐるしてぐったりしている。
俺とコシーは慌てて揺さぶった。
「大丈夫ですか!? しっかりしてください!」
〔ソンレイさん、目を覚ましてください!〕
しばらく揺すると、ソンレイさんは目を覚ました。
「う、う~ん、私はいったい……きゃあああっ! なんで、こんなところにいるの!? 空の上、ドラゴン、不思議な人たち!」
「落ち着いてください。俺はアイトと言って、“鳴り響く猟団”から来ました。マーヨーさんに言われてあなたを助けに来たんです」
「……おばあちゃんが? それに“鳴り響く猟団”って、この辺りで一番大きいギルドじゃ……」
事情を話すと、ソンレイさんは落ち着いた。
「……な、なるほど。すみません、取り乱してしまって……。グリズリーから救ってくれて本当にありがとうございました」
「いえいえ、当たり前のことをしただけですから。この雷ドラゴンは仲間のエイメスが出してくれたんですよ」
〔仲間じゃなくて奥さんね〕
すかさず、エイメスのやや硬い声が飛ぶ。
「そ、そうだったね……ゴ、ゴホン。そして、こっちはコシーです。魔力を込めると大きくなります」
〔こんにちは。コシーです〕
「私はソンレイと申します。よろしくお願いします。この度はなんとお礼を言ったら……」
ソンレイさんは青みがかった綺麗な髪をしており、なんとなくサイシャさんのような雰囲気がある。
サイシャさんに少し似ているな。
ふと視線がぶつかり、俺らはしばし見つめ合ってしまった。
そっとエイメスの様子を窺うと消えていたね……光が。
ま、まずい、この流れは!
〔ねえ、アイト…………どうしたの?〕
「きゃっ、何だかピリピリしだした!?」
「エイメス、ストーーーップ! 他意はないから! 魚の鯛じゃないくて隠し事の他意!」
雷ドラゴンの輪郭が迸るかと思ったら治まった。
エイメスの目にも光が戻る。
〔よかったぁ。黒焦げにするところだったよ……じゃあ、帰ろうか〕
〔「うわあああっ!」〕
行きよりも数段早いスピードで、俺たちは村に帰った。
□□□
数分も経たずにマーヨーさんの家へ着き、よろよろと雷ドラゴンから降りる。
そ、空を猛スピードで飛ぶのは、なかなかに疲れるな。
「あ、あのぉ、戻りました……」
しょぼしょぼと家に声をかけると、大慌てで村人とマーヨーさんが出てきた。
「「村長! あのガキどもが帰ってきました!」」
「なに、もう帰ってきたのかい!? どうせ怖気づいて諦めたんだろうよ!? やっぱり、男たちが帰るのを待ってればよかったわい!」
マーヨーさんたちは文句を言っていたけど、俺たちを見ると動きが止まった。
ソンレイさんが真っ先に駆け出す。
「おばあちゃ~ん!!」
「ソンレイ!!」
マーヨーさんは飛びつくように抱きついた。
しきりに頭を撫でる。
「ちょっと、おばあちゃん。恥ずかしいわ」
「ソンレイ……! ソンレイ……! よかった、本当によかった……!」
二人が抱き合っているのを見ると、俺も嬉しい気持ちになった。
グリズリーに攫われたけど怪我がなかったのも幸いだ。
「よかった、無事に再会できて」
〔私も嬉しいです〕
〔よかったよかった〕
しばらく抱き合った後、マーヨーさんがこちらに来た。
初対面の時とは違って、穏やかな表情だ。
「アイトと言ったね。ソンレイを助けてくれて本当にありがとう。冷たい態度をとって本当に申し訳なかった」
マーヨーさんが頭を下げると、村人たちも申し訳なさそうに頭を下げた。
「あ、頭を上げてください! 俺たちは当たり前のことをしただけですから!」
〔危ない目に遭っている人を見過ごすことはできません〕
〔ケガがなくて良かったねぇ〕
攻撃的な態度を取られたことは、別に怒っていない。
ソンレイさんが無事だったらそれでいいのだ。
「いいや、謙遜しないでおくれ。あんたらがいなかったら、今頃ソンレイはどうなっていたことか……いくらお礼を言っても足りないくらいさ。お前たち、おもてなしの準備だよ!」
マーヨーさんは大きな声で号令をかける。
断る間もなく、すぐに宴が始まってしまった。
168
あなたにおすすめの小説
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる