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第21話:尾行(Side:ボーラン⑥)
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「ねぇ、リーダー。やっぱり止めようよ」
「どうして、私たちがこんなことしている」
「みっともないですわ」
後ろからメンバーどもの不満げな声が聞こえる。
だが、歩くのを止めるわけにはいかなかった。
「うるせえな、お前らは。黙ってついてくればいいんだよ」
俺たちは今、カズシナ村に向かっている。
ギルドからずっとアイトの後をつけていた。
十分に距離を取りつつ注意しているので、見つかりようがない。
俺が直接、この目でアイトの強さを確かめてやる。
――ケッ、どうせただのウワサだろ。ケビンの老害野郎やザコ冒険者どもは騒ぎすぎなんだよ。
俺はアイトを追放してから、あいつを見つけたらボコボコにしてやるつもりだった。
そんな中、アイトがグリズリー討伐に向かう話を聞いた。
この機会を利用して、実際にあいつの腕前を見てやろうと思ったわけだ。
――しかし、アイトのヤツ。どこであんな良い女を見つけてきたんだ?
アイトの傍にはかなりの美人がいた。
ギルドでチラッと見かけたが、とんでもない美女だ。
願わくば俺の物にしたい。
アイトが無様に失敗したところで俺が活躍すれば、あの女も俺が好きになるに違いないな。
「おい、お前ら。アイトの隣にいた美女が誰か知ってるか?」
傍らのメンバーに聞く。
謎の美女についてはこいつらも俺と同じ考えのようで、みな口々にアイトを馬鹿にした。
「どうせ、金で雇ってんじゃねえの? アタシだって、無能アイトと一緒にいるのがキツかったってのに」
「あのアイトを好きになる女なんているはずがない」
「よくあんな出来損ないと一緒に行動できますね」
たぶん、パーティーメンバーの言う通りだろう。三人の女が、全員アイトが嫌いだと言っているのだ。
「おい、お前ら止まれ」
前を歩くアイトたちが立ち止まった。
どうやら、カズシナ村に着いたようだ。
ここからも村が見える。
アイトたちは進むが、俺たちは動かない。
「リーダー、アイトは村に行っちゃったけど」
「ボーラン、これからどうする」
「私たちも村に行きますか?」
「まぁ、待てや。まずは様子見と行こうじゃねえか。おい、ちょっと場所変えるぞ」
俺たちはひっそりと、村がよく見えるところまで移動する。
入り口でひと悶着あった後、さっそくアイトは村人たちに連行された。
その光景を見るだけで俺は嬉しくなった。
バカ笑いしそうになるのを必死に堪える。
「見ろよ、お前ら。アイトのヤツ、村人に連行されてんじゃねえか」
笑いを噛み殺して言うと、メンバーどもも同調した。
「ホントだ。やっぱり、あいつは無能アイトだ」
「ダメな人はどこ行ってもダメですね」
「リーダー、アンタの言った通りみたいだよ」
四人でアイトを嘲笑う。
ククク、楽しいぜ。
しかし、アイトが村人たちと話しているとき、女の身体が光った気がしたな。
まぁ……いいか。
場所を変えアイトの行方を追う。
あの無能テイマーは村の中でも、一番大きな家に連れて行かれた。
おそらく、村長の家だろう。
「ざまーみろってんだ。牢屋にでも監禁されちまえ」
死ね死ね、アイト。
死ね、アイト。
もう二度と外に出てくるな。
「村人もアイトが無能だって、しっかり気づいたみたいだな」
「アイトのヤツ、ギルドの外じゃ相変わらずダメ冒険者みたい」
「まったく、元メンバーとしてこっちが恥ずかしくなるくらいです」
俺たちは、ひとしきり悪口を言ってやる。
すると、男の村人が大慌てで家に向かって走るのが見えた
なんだ、アイツ?
男は村長の家に入る。
風に乗って、孫娘が! とかなんとか聞こえてくる。
「リーダー、もうギルドに帰ろうよ」
「アイトは無能だとわかったからもういいでしょ」
「いつまでもこんなとこにいても、しょうがないですわ」
確かに、ここにいる必要はもうない。
そうだな、もう帰るか。
俺たちが帰ろうとしたとき、アイトが出てくるのが見えた。
「あれ? なんかアイトが出てきたぞ」
「あの女も一緒にいる」
「何してんだろうね」
「村人たちも捕まえるような素振りは見せていませんよ」
ぼんやり見ていたら、アイトの等級魔石が目に入った。
その色を認識した瞬間、俺の心臓は冷たく脈打った。
――お、おい、マジかよ……!
あろうことか、魔石は白く輝いていた。
「アイトのヤツ! 魔石が白いじゃねえかよ! どういうことだ!」
俺が言うと、パーティーメンバーも確認したらしい。
みな、驚愕する。
「うそ!? アタシらと同じ、Aランクになったってこと!?」
「どうして無能アイトが!?」
「何かの間違いじゃないんですか!?」
ケビンの野郎たちが言っていたことは、マジだったのか……?
自分の目で見たはずなのに、未だに信じられなかった。
呆然としていると、今度はアイトの隣にいる女から雷が出た。
俺たちがいる場所とは結構離れているはずなのに、圧倒的な威圧感を感じる。
「なんだよ、あれ……。何かの魔法か?」
「あんな強力な魔法は見たことがないよ……」
「いったい、あの女は何者」
「とても強力な魔力を感じます」
あろうことか、雷はドラゴンの形になった。
もちろん、俺たちはそんな技術なんて初めて見る。
「何がどうなっているんだ……あり得ないだろ……」
「あの女、どっかの有名な魔法使いか?」
イリナが他の魔法使いに、興味を示すとは珍しいな……。
と思ったところで、またルイジワとタシカビヤが、バカにするようなことを言った。
「イリナより強そう」
「間違いありませんね」
「おい、コラァ! てめえら、どういう意味だ! アタシが弱いっていうのかよ!」
またすぐに喧嘩が始まる。
いい加減にしろ。
こいつらは猿か?
「お前ら、こんなとこでやめろよ! って、おい! あれ見ろ!」
アイトが雷ドラゴンに乗っかりやがった。
しかも、感電すらしていないようだ。
「なんだい……あれは」
「アイトのヤツ、なんでもない顔をしている」
「かなり高度な魔法のようです」
そのまま、猛スピードで飛んで行ってしまった。
いったい、何だったんだ……。
アイトを待つことに決め、五分もすると雷ドラゴンがすごい勢いで帰ってきた。
地面に降り立つと、青い髪をした女がババアに飛びつく。
誰だ、アイツ。
この女も結構な美人だった。
俺はだんだんムカついてくる。
――クソッ。なんで、アイトの周りにはキレイな女が集まるんだ。
ババアと村人たちは、アイトに頭を下げては何度もお礼をする。
イライラしながら眺めていると、メンバーどもが言った。
「リーダー、あのバアさんが村長じゃねえの? それで女が孫とか」
「さっき孫娘とか言ってたから、たぶん、アイトがどっかから助けてきたのね」
「それでお礼をしているみたいです」
村人たちはアイトをにこやかに見る。
おそらく、メンバーどもの言う通りなんだろう。
今度は歓迎されるように、アイトたちは大きな家へ入った。
……うぜえ。
――見てろよ、アイト。このままじゃ、終わらせねえからな。
尾行は夜まで延長することに決めた。
□□□
あっという間に夜を迎え、村近くの森で野宿の準備を進める。
アイトの動向を探らずにギルドへ帰るわけには行かないからだ。
メンバーどもはうんざりと俺を見る。
「アイトのことなんか、もうどうでもいいじゃん」
「ボーラン、ちょっとしつこすぎ」
「帰りましょうよ」
「うるせえ! 今から情報を集めてくるからな! お前らはここで待ってろよ!」
俺はコッソリと村長の家に向かう。
窓際の壁に隠れると、中から話し声が聞こえた。
「ケビンさんから聞いたんですけど、グリズリーの巣の近くにゴールデンドラゴンが……」
アイトの声だ。
今度は別の男たちが話す。
「俺、ゴールデンドラゴンが飛んでいるのを見ました……」
「……もしかしたら……赤ん坊が……」
ほぅ、ゴールデンドラゴンがこの近くにいるのか。
しかも、赤ん坊ときた。
これは良い情報を手に入れたぞ。
「……今日はゆっくりお休みいただいて、また明日行ってはどうだい?」
「そうですね。それでは、お言葉に甘えまして、そうさせていただきます」
アイトは明日、森へ向かうらしい。
ゴールデンドラゴンにグリズリー……。
これは好都合だ。
よし、あいつらと作戦会議しよう。
情報は十分すぎるほど手に入った。
俺はさっそうと、パーティーメンバーの元に走る。
「どうして、私たちがこんなことしている」
「みっともないですわ」
後ろからメンバーどもの不満げな声が聞こえる。
だが、歩くのを止めるわけにはいかなかった。
「うるせえな、お前らは。黙ってついてくればいいんだよ」
俺たちは今、カズシナ村に向かっている。
ギルドからずっとアイトの後をつけていた。
十分に距離を取りつつ注意しているので、見つかりようがない。
俺が直接、この目でアイトの強さを確かめてやる。
――ケッ、どうせただのウワサだろ。ケビンの老害野郎やザコ冒険者どもは騒ぎすぎなんだよ。
俺はアイトを追放してから、あいつを見つけたらボコボコにしてやるつもりだった。
そんな中、アイトがグリズリー討伐に向かう話を聞いた。
この機会を利用して、実際にあいつの腕前を見てやろうと思ったわけだ。
――しかし、アイトのヤツ。どこであんな良い女を見つけてきたんだ?
アイトの傍にはかなりの美人がいた。
ギルドでチラッと見かけたが、とんでもない美女だ。
願わくば俺の物にしたい。
アイトが無様に失敗したところで俺が活躍すれば、あの女も俺が好きになるに違いないな。
「おい、お前ら。アイトの隣にいた美女が誰か知ってるか?」
傍らのメンバーに聞く。
謎の美女についてはこいつらも俺と同じ考えのようで、みな口々にアイトを馬鹿にした。
「どうせ、金で雇ってんじゃねえの? アタシだって、無能アイトと一緒にいるのがキツかったってのに」
「あのアイトを好きになる女なんているはずがない」
「よくあんな出来損ないと一緒に行動できますね」
たぶん、パーティーメンバーの言う通りだろう。三人の女が、全員アイトが嫌いだと言っているのだ。
「おい、お前ら止まれ」
前を歩くアイトたちが立ち止まった。
どうやら、カズシナ村に着いたようだ。
ここからも村が見える。
アイトたちは進むが、俺たちは動かない。
「リーダー、アイトは村に行っちゃったけど」
「ボーラン、これからどうする」
「私たちも村に行きますか?」
「まぁ、待てや。まずは様子見と行こうじゃねえか。おい、ちょっと場所変えるぞ」
俺たちはひっそりと、村がよく見えるところまで移動する。
入り口でひと悶着あった後、さっそくアイトは村人たちに連行された。
その光景を見るだけで俺は嬉しくなった。
バカ笑いしそうになるのを必死に堪える。
「見ろよ、お前ら。アイトのヤツ、村人に連行されてんじゃねえか」
笑いを噛み殺して言うと、メンバーどもも同調した。
「ホントだ。やっぱり、あいつは無能アイトだ」
「ダメな人はどこ行ってもダメですね」
「リーダー、アンタの言った通りみたいだよ」
四人でアイトを嘲笑う。
ククク、楽しいぜ。
しかし、アイトが村人たちと話しているとき、女の身体が光った気がしたな。
まぁ……いいか。
場所を変えアイトの行方を追う。
あの無能テイマーは村の中でも、一番大きな家に連れて行かれた。
おそらく、村長の家だろう。
「ざまーみろってんだ。牢屋にでも監禁されちまえ」
死ね死ね、アイト。
死ね、アイト。
もう二度と外に出てくるな。
「村人もアイトが無能だって、しっかり気づいたみたいだな」
「アイトのヤツ、ギルドの外じゃ相変わらずダメ冒険者みたい」
「まったく、元メンバーとしてこっちが恥ずかしくなるくらいです」
俺たちは、ひとしきり悪口を言ってやる。
すると、男の村人が大慌てで家に向かって走るのが見えた
なんだ、アイツ?
男は村長の家に入る。
風に乗って、孫娘が! とかなんとか聞こえてくる。
「リーダー、もうギルドに帰ろうよ」
「アイトは無能だとわかったからもういいでしょ」
「いつまでもこんなとこにいても、しょうがないですわ」
確かに、ここにいる必要はもうない。
そうだな、もう帰るか。
俺たちが帰ろうとしたとき、アイトが出てくるのが見えた。
「あれ? なんかアイトが出てきたぞ」
「あの女も一緒にいる」
「何してんだろうね」
「村人たちも捕まえるような素振りは見せていませんよ」
ぼんやり見ていたら、アイトの等級魔石が目に入った。
その色を認識した瞬間、俺の心臓は冷たく脈打った。
――お、おい、マジかよ……!
あろうことか、魔石は白く輝いていた。
「アイトのヤツ! 魔石が白いじゃねえかよ! どういうことだ!」
俺が言うと、パーティーメンバーも確認したらしい。
みな、驚愕する。
「うそ!? アタシらと同じ、Aランクになったってこと!?」
「どうして無能アイトが!?」
「何かの間違いじゃないんですか!?」
ケビンの野郎たちが言っていたことは、マジだったのか……?
自分の目で見たはずなのに、未だに信じられなかった。
呆然としていると、今度はアイトの隣にいる女から雷が出た。
俺たちがいる場所とは結構離れているはずなのに、圧倒的な威圧感を感じる。
「なんだよ、あれ……。何かの魔法か?」
「あんな強力な魔法は見たことがないよ……」
「いったい、あの女は何者」
「とても強力な魔力を感じます」
あろうことか、雷はドラゴンの形になった。
もちろん、俺たちはそんな技術なんて初めて見る。
「何がどうなっているんだ……あり得ないだろ……」
「あの女、どっかの有名な魔法使いか?」
イリナが他の魔法使いに、興味を示すとは珍しいな……。
と思ったところで、またルイジワとタシカビヤが、バカにするようなことを言った。
「イリナより強そう」
「間違いありませんね」
「おい、コラァ! てめえら、どういう意味だ! アタシが弱いっていうのかよ!」
またすぐに喧嘩が始まる。
いい加減にしろ。
こいつらは猿か?
「お前ら、こんなとこでやめろよ! って、おい! あれ見ろ!」
アイトが雷ドラゴンに乗っかりやがった。
しかも、感電すらしていないようだ。
「なんだい……あれは」
「アイトのヤツ、なんでもない顔をしている」
「かなり高度な魔法のようです」
そのまま、猛スピードで飛んで行ってしまった。
いったい、何だったんだ……。
アイトを待つことに決め、五分もすると雷ドラゴンがすごい勢いで帰ってきた。
地面に降り立つと、青い髪をした女がババアに飛びつく。
誰だ、アイツ。
この女も結構な美人だった。
俺はだんだんムカついてくる。
――クソッ。なんで、アイトの周りにはキレイな女が集まるんだ。
ババアと村人たちは、アイトに頭を下げては何度もお礼をする。
イライラしながら眺めていると、メンバーどもが言った。
「リーダー、あのバアさんが村長じゃねえの? それで女が孫とか」
「さっき孫娘とか言ってたから、たぶん、アイトがどっかから助けてきたのね」
「それでお礼をしているみたいです」
村人たちはアイトをにこやかに見る。
おそらく、メンバーどもの言う通りなんだろう。
今度は歓迎されるように、アイトたちは大きな家へ入った。
……うぜえ。
――見てろよ、アイト。このままじゃ、終わらせねえからな。
尾行は夜まで延長することに決めた。
□□□
あっという間に夜を迎え、村近くの森で野宿の準備を進める。
アイトの動向を探らずにギルドへ帰るわけには行かないからだ。
メンバーどもはうんざりと俺を見る。
「アイトのことなんか、もうどうでもいいじゃん」
「ボーラン、ちょっとしつこすぎ」
「帰りましょうよ」
「うるせえ! 今から情報を集めてくるからな! お前らはここで待ってろよ!」
俺はコッソリと村長の家に向かう。
窓際の壁に隠れると、中から話し声が聞こえた。
「ケビンさんから聞いたんですけど、グリズリーの巣の近くにゴールデンドラゴンが……」
アイトの声だ。
今度は別の男たちが話す。
「俺、ゴールデンドラゴンが飛んでいるのを見ました……」
「……もしかしたら……赤ん坊が……」
ほぅ、ゴールデンドラゴンがこの近くにいるのか。
しかも、赤ん坊ときた。
これは良い情報を手に入れたぞ。
「……今日はゆっくりお休みいただいて、また明日行ってはどうだい?」
「そうですね。それでは、お言葉に甘えまして、そうさせていただきます」
アイトは明日、森へ向かうらしい。
ゴールデンドラゴンにグリズリー……。
これは好都合だ。
よし、あいつらと作戦会議しよう。
情報は十分すぎるほど手に入った。
俺はさっそうと、パーティーメンバーの元に走る。
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