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夏
答え合わせ 問三
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「所で薫さんは本当に何も知らないと思うんだけど、薫さんも十年前にこの村に来たんじゃないの?」
「姉がこの村に来たのは、実は今年の二月なんです。接続された時に意識が戻りますから、だから、私の本当の肉体の年齢は二十一歳、姉は二十四歳ですが、精神年齢は私は二十一歳、姉は十四歳なんです。」
光くんは天井を見つめていた。
「そう言えば、このノートってなんで書かれたの?」
僕はリュックからノートを取り出し、机の上に置く。
「あれ、本当はただの日誌だったんです。だから最初の方は私も書いてたんですよ。」
光くんはノートを見つめて、
「僕に返してくれませんか。大したことが書かれていない最初の部分はまさに私の青春の記録なので。」
僕はノートを手渡す。
「陽太郎くんと蛍くん、その後どうなったんですか?」
「さぁ、元の現実に戻れたか、今も病院のベッドの上か。私達の様に別の二針村に行っているかもしれません。」
「二針村って何個もあるんですか?」
「わかりません。ただの予想です。」
光くんはノートを机の上に置く。
「でも、元の現実に戻れていると、僕が想像ができるだけで、案外僕は満足しているのかもしれませんね。」
その時、僕は大声で、
「聞いているんだろ?涼波!盗聴はあまり良くないと思うよ。僕は。」
と叫ぶ。
光くんは突然の大声に驚いて、固まる。
教室のドアが開いて、涼波が教室の中に入ってきたのはすぐだった。
「当然、京介。自室を出ていったかと思ったら、突然消えて探してたんだよ。」
「いや、僕が聞きたいのはそこじゃない。涼波、もしかしてだけど。君は前の世界に帰れるんじゃないか?」
光くんが思わず立ち上がる。鈴波に迫る。
「そうなんですか!何をすれば良い?どうやったらこの村から出られる?どうすれば僕は元の世界に……。」
光くんは早口で次々と質問をする。
「光くん、あまり質問攻めにするのはやめといた方がいい。涼波は色々と例外的なんだ。最初から説明していこうか。」
そう言って、全員席に座った。
「まず、涼波、君は全てにおいて違和感だらけだったよ。」
「まず、何で最初に僕の部屋に来た時、ノックをしたんだ?涼波はまだあの時、僕が目覚めたのは知らなかったはずだ。」
ノックしたのは僕が目覚めることを知っていたから、つまりあの脳外科医と同じだ。
「そしてその後に鈴波が言った、やっと起きた、という言葉もなんだかおかしいよな、まるで今日起きることが分かっているようなセリフだし。そして僕が言うまで、タブレットがないことに気が付かなかったのも気になっていたが、もっとおかしいことがあって、まぁ、これは僕の夢の中のことなんだけど……。白い霧の中にいる夢って見ないか?」
光くんが
「たまに見ますね。」
と言う。
「多分鈴波も見ているとは思う。特に霧は晴れているんじゃないか?」
涼波はこっくりと頷いた。
「多分この夢はこの村にいる人なら全員見ているんだと思う。この夢を見ている時は恐らく向こうの世界で目覚めかけている、つまり起きようとしている時なんじゃないか?」
「どういうことですか?」
光くんの食いつきが凄い。十年間も閉じ込められた村から出られるのかも知れないのだから気持ちは分かる。
「僕たちの意識はデジタル化され、このサーバーに送られている。つまりこっちで起きている時僕たちの本当の肉体に意識はないんだ。でも、こっちで眠っている時、その時だけは意識が元の体に戻ろうとする。この戻ろうとしている時に白い霧の夢を見るんだ。」
「つまり、意識は迷子にでもなっていると?」
「実際、わかりません。ただの中一なので。ただ、寝ている時に現実の世界に近づく。」
「このことを踏まえると白い霧はどれだけ現実に近づいているかという物を具現化したものと考えられそうですね。」
光くんが僕が言おうとしたことを言ってくれた。
「昨日の僕の夢では霧は完全に晴れていた。つまり僕は現実の僕の体には戻れている。が、起きていないことから察するにただ戻ってきてもそれで解決ではないみたい。」
「でだ、本題に入る。その昨日の僕の夢で、出てきたんだよ。鈴波の父親が……。」
そう、昨日ドアの向こうから聞こえていた声、アレは鈴波の父親の声だった。
「その夢の中で一緒に話していた人、多分脳外科医だ。その人が話していたんだよ。まるで起きるのを拒んでいるって……。まぁ、僕の勘違いかもしれないんだけどさ。」
その時、涼波は僕の体を抱きしめた。
突然のことに驚く僕と光くんをよそに
「テレポート・ディメンション」
と涼波は呟く。僕は紅い光包まれていった。
「姉がこの村に来たのは、実は今年の二月なんです。接続された時に意識が戻りますから、だから、私の本当の肉体の年齢は二十一歳、姉は二十四歳ですが、精神年齢は私は二十一歳、姉は十四歳なんです。」
光くんは天井を見つめていた。
「そう言えば、このノートってなんで書かれたの?」
僕はリュックからノートを取り出し、机の上に置く。
「あれ、本当はただの日誌だったんです。だから最初の方は私も書いてたんですよ。」
光くんはノートを見つめて、
「僕に返してくれませんか。大したことが書かれていない最初の部分はまさに私の青春の記録なので。」
僕はノートを手渡す。
「陽太郎くんと蛍くん、その後どうなったんですか?」
「さぁ、元の現実に戻れたか、今も病院のベッドの上か。私達の様に別の二針村に行っているかもしれません。」
「二針村って何個もあるんですか?」
「わかりません。ただの予想です。」
光くんはノートを机の上に置く。
「でも、元の現実に戻れていると、僕が想像ができるだけで、案外僕は満足しているのかもしれませんね。」
その時、僕は大声で、
「聞いているんだろ?涼波!盗聴はあまり良くないと思うよ。僕は。」
と叫ぶ。
光くんは突然の大声に驚いて、固まる。
教室のドアが開いて、涼波が教室の中に入ってきたのはすぐだった。
「当然、京介。自室を出ていったかと思ったら、突然消えて探してたんだよ。」
「いや、僕が聞きたいのはそこじゃない。涼波、もしかしてだけど。君は前の世界に帰れるんじゃないか?」
光くんが思わず立ち上がる。鈴波に迫る。
「そうなんですか!何をすれば良い?どうやったらこの村から出られる?どうすれば僕は元の世界に……。」
光くんは早口で次々と質問をする。
「光くん、あまり質問攻めにするのはやめといた方がいい。涼波は色々と例外的なんだ。最初から説明していこうか。」
そう言って、全員席に座った。
「まず、涼波、君は全てにおいて違和感だらけだったよ。」
「まず、何で最初に僕の部屋に来た時、ノックをしたんだ?涼波はまだあの時、僕が目覚めたのは知らなかったはずだ。」
ノックしたのは僕が目覚めることを知っていたから、つまりあの脳外科医と同じだ。
「そしてその後に鈴波が言った、やっと起きた、という言葉もなんだかおかしいよな、まるで今日起きることが分かっているようなセリフだし。そして僕が言うまで、タブレットがないことに気が付かなかったのも気になっていたが、もっとおかしいことがあって、まぁ、これは僕の夢の中のことなんだけど……。白い霧の中にいる夢って見ないか?」
光くんが
「たまに見ますね。」
と言う。
「多分鈴波も見ているとは思う。特に霧は晴れているんじゃないか?」
涼波はこっくりと頷いた。
「多分この夢はこの村にいる人なら全員見ているんだと思う。この夢を見ている時は恐らく向こうの世界で目覚めかけている、つまり起きようとしている時なんじゃないか?」
「どういうことですか?」
光くんの食いつきが凄い。十年間も閉じ込められた村から出られるのかも知れないのだから気持ちは分かる。
「僕たちの意識はデジタル化され、このサーバーに送られている。つまりこっちで起きている時僕たちの本当の肉体に意識はないんだ。でも、こっちで眠っている時、その時だけは意識が元の体に戻ろうとする。この戻ろうとしている時に白い霧の夢を見るんだ。」
「つまり、意識は迷子にでもなっていると?」
「実際、わかりません。ただの中一なので。ただ、寝ている時に現実の世界に近づく。」
「このことを踏まえると白い霧はどれだけ現実に近づいているかという物を具現化したものと考えられそうですね。」
光くんが僕が言おうとしたことを言ってくれた。
「昨日の僕の夢では霧は完全に晴れていた。つまり僕は現実の僕の体には戻れている。が、起きていないことから察するにただ戻ってきてもそれで解決ではないみたい。」
「でだ、本題に入る。その昨日の僕の夢で、出てきたんだよ。鈴波の父親が……。」
そう、昨日ドアの向こうから聞こえていた声、アレは鈴波の父親の声だった。
「その夢の中で一緒に話していた人、多分脳外科医だ。その人が話していたんだよ。まるで起きるのを拒んでいるって……。まぁ、僕の勘違いかもしれないんだけどさ。」
その時、涼波は僕の体を抱きしめた。
突然のことに驚く僕と光くんをよそに
「テレポート・ディメンション」
と涼波は呟く。僕は紅い光包まれていった。
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