惚れたのは貴方じゃありません!!貴方のお父様ですっっ!!!

カイナルミ

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14 ヴィルヘルムの憂鬱

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公爵邸に行って数日後、ヴィルヘルムが子爵の家に婚約の挨拶に訪問した。最初の挨拶以外、特にエミリヤと会話はなかった。


それからエミリヤは愛しのおじさまと婚約出来ると勘違いして、舞い上がって聞いていなかった婚約の詳細を父親に聞いた。どうやら婚約期間は半年と短いらしい。エミリヤも早くギルベルトと一緒に暮らしたいのでそこは問題ない。婚約後は公爵夫人も公爵の母親もいない為屋敷の管理について公爵が直接指導するとの事で、すぐに公爵邸へ移る様にとの事だった。

 「(嬉しいなーっっ♪ギルベルト様に指導して貰えるなら頑張れるよっ!!)」

そして今日はギルベルトと一緒にドレスを買いに出かける事になった。

 「(いわゆるデートって感じよね♪)」

オシャレをして迎えに来たギルベルトと共に街へ馬車で向かった。馬車から降りてエスコートされるエミリヤは、ギルベルトをすれ違う人に自慢し見せつけたいと思う程格好良く見えた。ご婦人がギルベルトを見て振り返るとにやける顔が元になかなか戻らない。

ギルベルトもギルベルトでエミリヤに近づく不届き者が居ないか目を配りつつも、エミリヤは私のお姫様だと誇示する様に馬車や人がすれ違う度に肩を抱き寄せる。
側から見れば歳の差は親子程であれど美しい男女である事には変わりなく、周りの視線を集めているがそれに対しては気が付いていない。後ろを歩くスチュアートはそんな2人を観察しながらついて行く。

普段おしゃれに関心が無いエミリヤはドレスをギルベルトに任せた。このドレスは近々ある王妃様の誕生日祝いのパーティーに、婚約者であるヴィルヘルムが贈る体でギルベルトが贈ってくれる物である。婚約指輪もギルベルトが贈ってくれてた物をエミリヤは嵌めている。他の装飾も無事注文が済み、時間があるので2人でバラ園を散策する事にした。スチュアートは離れた場所で待機している。


 「・・・父上?・・・婚約者殿・・・。」

ヴィルヘルムが本を片手に持って立っていた。
エミリヤにとって彼は今回が2回目の対面であり、予想外の場所で会った事に驚きに固まった。

 「ーーあぁ、この先の王立図書館に行くのか。励むが良い。」
 「・・・はい。ありがとうございます。」
 「ヴィルヘルム様、ごきげんよう。」

何もエミリヤに返事をする事なくヴィルヘルムは無表情で去って行った。

 「全く、子供か。」
 「わたくしと余程結婚したくないんでしょうね?」
 「君とと言うより結婚そのものが嫌なのだろう。気にするな。」
 「ふふっ♪気にしませんわ。あの方の愛が欲しい訳ではありませんし。」
 「それは良かった。ここが外なのが残念でならんな。」
 「何をする気なんですか?」
 「外でできない事に決まっているだろう?」

2人が笑い合いながら話しているのを遠くでヴィルヘルムが見つめていた。それにスチュアートが気付いていた。

 「羨ましいなら加われば良いでしょうに。難儀な・・・。」


スチュアートの呟きは誰にも聞かれる事なく消えた。








♢♢♢♢♢♢






王立図書館で借りていた本を返し、次読もうと思っていた本をひとけのない席に行って頁を捲る。気になっていた本が全く頭に入らない。ヴィルヘルムは先程見た光景が頭から離れないのだ。奥歯をぎりぎりと噛む。


 「(あの女・・・他の女達の様に私に媚びないと思っていたが、まさか父上を籠絡していたとは!!そう言えば昔彼女は『イグリール公爵家の家族になれるなら、冷笑だろうと冷酷だろうと耐えられる』と言っていたな・・・。ーーそういう事か!!私が父上に代わってあの女からイグリール公爵家を何としてでも守らねば・・・。)」

しばらく頭に入って来ない本を開いたまま父親と婚約者の事を考えていたが、今日はもう集中して本が読めそうにないのでヴィルヘルムは持っていた本を借りて帰った。





屋敷に戻ったヴィルヘルムは部屋にすぐ向かおうと階段に向かったが、そこでスチュアートに声を掛けられた。

 「ヴィルヘルム様、お帰りなさいませ。」
 「・・・父上はすでに帰っていらっしゃるのか?」
 「はい、本日ヴィルヘルム様の婚約者、エミリヤ様が王妃様のパーティーで婚約者の贈り物着られるドレスやアクセサリーの注文に出向いた後はバラ園をお二人で巡られてから先程帰宅致しました。」

スチュアートはヴィルヘルムがバラ園に居たのを知っているにも関わらず、敢えて全て伝えた。ヴィルヘルムは眉間に皺を寄せ不機嫌さを露わにする。

 「ーーフンッ。あの様な下位である身分の女に父上は何を考えていらっしゃるのだか。耄碌したのやも知れん。早めに爵位を私に譲って領地で畑でも耕せば良いものを・・・。」

 「・・・ヴィルヘルム様?それは私共わたくしども使用人に対する侮辱でもあるのですがお分かりでございますか?」

スチュアートは普段居るのか居ないのか分からないような雰囲気で佇んでいるのだが、今の彼は城の中でも会ったことのない様な異質な雰囲気を放っている。ヴィルヘルムは背中に嫌な汗が滲み本能的に一歩後ずさってしまう。

 「ーー今回の事は聞かなかった事にしておきましょう。ヴィルヘルム様、勘違いしないで頂きたいのですが今いる使用人は全てギルベルト様の手足でございます。主を蔑む様な発言はお控え下さい。」

彼の笑顔は間違いなく笑顔なのだが明らかに雰囲気は真逆のものであった。ヴィルヘルムは思わず謝罪して急いで自室に逃げ込んだ。



 「私を愛してくれる者に逢いたい・・・。」


ベッドに倒れ込んだヴィルヘルムは虚しさと哀しさでやる気を無くして、食事すら摂らず日を終えた。





♢♢♢♢♢♢♢




 

イグリール公爵からエミリヤの署名が必要な部分があったので本日中に城に来て欲しいという内容の連絡があり、エミリヤは城に行くとイグリール公爵がいるという部屋に案内された。

 「エミリヤ嬢、急に呼び立ててすまなかったな。書類はこちらだ。」

部屋の中には他に文官がいた為淡白な言い方をしている。文官は署名された書類を確認後去って行った。

 「ふぅ・・・。急で驚かせたな。どうも一枚抜けていたと出仕後言われてな。私はまだ帰られ無いからせめて立ち入り可能な庭園を見て帰ると良い。ーー今度の休日、一緒に王都近くにある綺麗な湖に行かないか?」

 「嬉しい・・・楽しみにしておりますわ!でも、お疲れでしたらお屋敷でもどちらでも構いませんわ♪」

名残惜しいがそこで仕事の為に公爵とは別れエミリヤは来た道を引き返した。庭園の横の通路を歩いていると、庭園を挟んで反対側の通路を焦茶でサラサラ髪の美青年がいるのが見えた。

 「(あら、婚約者様ではないの。んんん???あれは・・・。)」

1人でいると思っていたがどうやら誰かいる様で話している。誰と話しているのか少し通路を移動すると、可憐な美少女である。女性はコロコロと笑いながら何やら話しているが、ヴィルヘルムは無表情で返している様である。

 「(へー女性嫌いって話だけど、話し相手になる女性いたんだ~。ま、どうでもいっかかえろ・・・え?どうでも良くないんじゃ無い!?ヴィルヘルム様との婚約解消されたらギルベルト様とお家イチャコラできないじゃ無いの!!ど、どうしよう・・・。彼女の家に婿に入ってくれたら良いけど・・・。彼女の内情調べなきゃ!!)」

庭園の花々にも目も暮れず一目散に帰宅したエミリヤは、お茶会で繋がった友人に連絡し彼女がどこの誰か家は婿を入れるのか自分が嫁ぐのかを調べた。




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