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20 平穏
しおりを挟むそれから半月エミリヤはたまにヴィルヘルムと一緒に式の準備を行い、昼食を外で一緒に食べるまでになった。しかし、公園へ行ったり屋敷で一緒にいるのはギルベルトである。本日は4日後の結婚式で使用するネックレスがギリギリで出来上がった為ヴィルヘルムと受け取りに来ていた。
「ヴィルヘルム様は、ここのお菓子食べた事ありますか?」
馬車を待たせている所まで2人で歩いている時に見つけた、可愛いお菓子屋さんについてエミリヤが尋ねる。
「いや、無いな。菓子は食べないからな」
「甘いもの苦手なんですか?」
「そう言うわけでは無いが、機会がなくてな」
外にいる事でヴィルヘルムの焦茶のサラサラした髪が光を纏う。エミリヤの髪の毛も子猫の毛の様にふわふわとそよ風で揺れる。この半月でヴィルヘルムのエミリヤに対する雰囲気は随分柔らかくなった。
「エミリヤ嬢はお好きなのか?」
「好きですよ?むしろ大好きです!!子爵家では結構緩くて、貴族らしく無いって言われるお菓子作りしてる程には好きですよ!!」
「自身で作るのか?エミリヤ嬢は多趣味だな・・・。私は趣味が無いので羨ましいよ」
「今度一緒に料理か香水作って見ますか?楽器は苦手なのでそれ以外でしたら、読書絵画工作等でしたらお付き合い致しますよ?剣術はやった事ないですけど気にはなっていたのでそう言ったものでもお付き合いしますよ」
「エミリヤ嬢は何でもやってみるんだな」
2人は会話を楽しむ様に石畳の上をゆっくり歩く。街の喧騒も心地よい音楽に聴こえる。
「折角やれる環境があるのですからこの際何でもやって見なければ!!経験は宝ですわ!!」
「出来なかったらどうするんだ?」
「勿論3ヶ月やってダメダメでしたらすぐ辞めますわ。だって世の中には私のやった事のない面白そうな事が星の数程ありますのに、一つの事に囚われる必要性御座います?一芸に秀でた方が良いとは申しますけど、合っていない事を死ぬまでやってそこそこ上手くなっても天才の足元にも及びませんわ。それならば、死ぬまでやりたい事やって合っている事を追い求めながら生きた方が楽しくありません?」
「結局見つからなくてもか?」
「勿論ですわ!!ですが、どちらにも言えますが途中で心折れる可能性が高いですので鈍感に生きれるかは重要ですわね」
停車していた馬車まで帰り着き、御者が扉を開ける。
「貴女は本当に変わった考えの人だな」
「ーーふふっ、そうかしら?」
馬車に乗り込む際にヴィルヘルムがエミリヤに手を差し出す。初めて見るヴィルヘルムの作ってない笑顔にエミリヤはこれからヴィルヘルムが自身の幸せを見つけられる事を祈った。
♢♢♢♢♢♢♢
「よう!ヴィルヘルム。お前随分と婚約者と上手くいってんだな?」
ヴィルヘルムは今、宰相補佐をしているが以前騎士団に勤めていた事があった。その時の上官に廊下ですれ違ったら呼び止められ話しかけられた。
制服を着ていてもはっきりと分かる筋肉が現在も剣の腕が衰えていないだろう事を伺わせる。
「え・・・そうなのでしょうか?特に上手く行っているとは思えませんが・・・。」
「な~に言ってんだ!!お前雰囲気柔らかくなったぞ?前の冷笑伯爵までは戻ったな!!お前狙ってた伯爵のお嬢さんと一緒になると思っていたのになぁ~まぁ女嫌いのお前にゃあのお嬢さんは無理だっただろうけどな!!」
豪快に笑いながら背中をバシバシと叩かれヴィルヘルムは不機嫌な顔になる。
「おおっと!!これ以上遊んだら冷血伯爵に戻っちまうな!!祝いの品は今度贈るぜ!!じゃあなっっ!!」
以前の上官の背中を見送り、自身の仕事場へと踵を返す。
「・・・雰囲気が柔らかくなったの・・・か・・・?」
確かに最近は女性に対するストレスも減った気がするが、それは女性に関わることがなかったからだと思っていた。それが知り合いに雰囲気が柔らかくなったと言われたら原因は彼女だという結論に辿り着く。ヴィルヘルムはそう言われた事は案外嫌で無い自分に驚いた。
♢♢♢♢♢♢♢
「ギルベルト様は本日お休み取られたのですね?」
ギルベルトは出仕せずエミリヤを屋敷に招いていた。
「あぁ・・・。書類上でも君が私で無い者の嫁になると式が近付くにつれて、焦燥感に駆られて仕事が手に付かんからな。だが、エミリヤが結婚したら私は早々にヴィルヘルムに爵位を譲って君との生活を楽しむつもりだから覚悟しなさい」
ギルベルトの手招きに引き寄せられエミリヤは自分の居場所の様に、1人掛けソファーに座っているギルベルトの太腿の間に座った。後ろからギルベルトの両腕がエミリヤの胸の下に回されて密着した状態である。
「アイツとだいぶん打ち解けた様だな。」
「ギルベルト様もそろそろヴィルヘルム様とお話になっては如何ですか?」
エミリヤは自身の前にあるギルベルトの腕を撫でながら話す。
「そうだな・・・。考えておこう・・・。」
「だーめっ!考えておこうって結局しないじゃ無いですか!!」
エミリヤは向き直ると近くにあったギルベルトの頬に手を添え触れるだけの口付けをそっとした。
「ギルベルト様には私が居ますから安心してください」
「・・・エミリヤは昔も今も私の居るべき場所であってくれるんだね」
「そうですよ!!ギルベルト様は私の護衛騎士なのでしょ?でしたら離れないでくださいね?」
「そうだな・・・」
「はいっ♪これからも宜しくお願いします!!」
向かい合う様に座ったままの2人は口付けをどちらとも無く始めた。
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