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24.カルロの末路
しおりを挟む「さあ、分かったらさっさと出て行け…と言ってやりたい所だが…」
エーリク様が不敵に笑う。
「お前は牢獄に入って貰う事になる」
「な…ぜだ…妻に会いに来た…だけだ…」
戦意喪失したようにカルロが呟く。
確かに、カルロは不倫したり家の物を他人に渡したりしつこく迫ったりしたが、大きな額の横領や暴力を振ったわけではない。
牢獄に入るとまではいかないだろう。悔しいがこの国では、平民同士の揉め事等に関してはよほど良い領主の元でなければキチンと統制されていない。
そのため、泣き寝入りになる事が多いのだ。
だから私もカルロをどうにかする事が難しかった。
「なぜ?お前が私に無礼を働いたからだ。今まで貴族の柵を煩わしく思っていたが…こんな所で役に立つとは皮肉なものだ」
自嘲するように吐き捨て、エーリク様はカルロを見下し低い声で続ける。
「私はエーリク.クローループ。クローループ侯爵家の五男だ。お前は私を幾度と無くお前呼ばわりをし、あげくに私の忠告を再三無視した。これは十分に不敬罪に値する」
王女様の護衛騎士ということは、どこかの貴族のご令息だとは思っていたがまさかこの国でも屈指の権力を持つクローループ侯爵家のご令息だったなんて…!!
「クローループ侯爵家……そんな……」
無知なカルロもクローループ侯爵家の名前は知っていたようだ。更に、その方に逆らってしまった自分のこれからの処遇も想像できたのだろう。
必死に抵抗していたカルロが力無くその場に倒れ込んだ。
「兵よ。この者を連れていけ!!」
エーリク様の号令で数人の衛兵達が店になだれ込み、驚く速さでカルロを引きずり連れ出した。全てを諦めたように何も抵抗する事無く、茫然自失のまま連れて行かれた。
もう、彼に会うことは二度と無いだろう…。
扉が閉まり、エーリク様と二人きりになる。
「あの…エーリク様、ありがとうございました…」
エーリク様が私を庇う為とはいえ、私に結婚を申し込むつもりだなんて言うから意識してしまう。
「いえ。力になれて良かったです。まぁ、私が来なくても店の周りには沢山控えていたようですが…」
実は、カルロの動向は追っていた。
特に、半年経てば再婚できると思い店にやってくるのではないかと思い、特に警護を強化していたのだ。今日もマックスさん達が店の警護に当たってくれていた。
それでもカルロがこの店に入ってこれたのは、もし店に現れたら不倫の慰謝料を改めて請求し、一発くらい軽く殴らせて暴行罪で牢獄に入って貰おうかと思っていたからだ。
護身術は身につけている。大きな怪我はしないだろうと考えていた。
そんな事はエーリク様には言えるわけが無いが…。
「でも、その…私を庇う為に、私に結婚を申し込むつもりだなんて…少し冗談が過ぎますわ。あっ、指輪でしたよね。用意できています」
気まずさを紛らわすように冗談めかして言い、用意していた指輪を出す。
「冗談…?」
「え…?だって…冗談ですよね…?この指輪は女性への贈り物だと…」
エーリク様が急に真剣な表情に変わる。
真剣な眼差しから目を離せない。
エーリク様が1歩2歩と私に近付き私の手から指輪を奪った。
「あの…?」
すると急にエーリク様が私の前に跪いた…。
次回最終話です。
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