(完結)夫の不倫相手に「彼を解放して！」と押しかけられました。

25.想い合って（最終話)

「エーリク様っ！？」

侯爵家の御令息が平民である私に跪くなんて…！
慌てて止めようとするが…。

「どうかそのまま聞いてください。先程は勢いのまま言ってしまいましたが…先程の言葉は何一つ嘘偽り無い言葉です。私は随分前から…きっと、貴女を初めて見た時から貴女に惹かれていました。少しずつでも良いですから、私と共に歩む未来を考えてくれませんか…？」

そう言って目を見つめられると、思わず身体が身震いしてしまいそうになる程の電撃が身体に走る。
この瞳から逃げられる女性がどこにいるだろう…。

エーリク様が他の女性への贈り物を選んだと思ったあの日から1ヶ月間。
本当に胸が痛かった。エーリク様にこの指輪を贈られる女性はどんな素敵な方なのだろう。どんなに幸せだろうと涙が滲んでしまう程嫉妬に駆られてしまっては、自分の器の小ささに自己嫌悪に陥っていた。


その胸の痛みが、私がエーリク様に惹かれているという確かな証拠だろう。

答えは1つしか無い。


「はい…！私で良ければ…！」

そう答えると、エーリク様は指輪の箱を開けてそっと指輪を取り出し私の指にはめてくださった。

よく見ると、エーリク様の手が震えている。
私が震える指を見ている事に気付いたエーリク様は少し照れながら、

「その…何万の兵を目の前にしても手が震えた事など無かったのですが……」

と頬を染めながら答えた。

エ、エーリク様…可愛すぎる……！！
初めて男の人を可愛いと思った。

震える手で指輪をはめて貰い、思わず指輪に見入ってしまう。

が、指輪を見ているとある現実をふと思い出してしまう。

浮かれていたけれどエーリク様は侯爵家の御令息で私は平民…。その上離婚歴があるなんて…皆に祝福されるのだろうか…。
ふと不安に駆られる。

エーリク様はそんな私を見て何かを察したのか、私の手を握った。

「私は侯爵家と言っても五男で、貴族の柵しがらみを煩わしく思い早々に家を飛び出すようにして騎士団に入りました。そして護衛している王女様ももうすぐ隣国へ嫁がれます。私は貴族に未練はありませんし、侯爵家からもお前は好きにしろと言われています。できればフルールさんの宝物であるこの店を共に守って行けたらと思うのですが…」

なんて夢のような提案だろう。


「エーリク様…ありがとうございます…！そして、どうかフルールと呼んでください」

「フルール…」

私の名を呼んで抱き締めてくれたこの方を大切にしたい。
心からそう思ったのだった…。















そして数時間後。
王女が、エーリクからフルールと思いが通じ合ったとの報告を聞いて、高価なティーカップを落として割ってしまう程驚いた事は言うまでもないだろう。









一年後。


ブティックフリージアは侯爵家との繋がりを持ち更なる躍進を遂げ、この国でこの店を知らない者はいない程有名な店となった。

更に、隣国へ嫁いだ王女がこの店の大ファンだという事が噂になり、隣国からもブティックフリージアの商品を求める人はあとを立たなく、フルールとエーリクは本当に忙しい日々を送った。

そんな多忙の中でも二人はすれ違う事なくお互いを大切にして、もうすぐ産まれてくる新しい家族を心待ちにしているそうだ。











fin.













ここまでお読み頂きありがとうございました。
完結させる事ができたのは、読者の皆様のおかげです。
お気に入り登録、感想、執筆の励みとなりました。感謝の気持ちでいっぱいです。


良ければ、次作「婚約者にいつも従姉妹と比べられて来ましたが、そんなに彼女が良いならどうぞ彼女とお幸せに。」もお読み頂けたら幸いです！


ありがとうございました！