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娼館の制圧

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「私はオリヴィエよ。オリヴィエ・シルバーモント。これでも、騎士団の一員なの」

「シルバーモント……!」

 暗闇なのに、少女の瞳が大きく開くのが見て取れた。

「そうだけど、どうしたの?」

「いえ、領地と同じお名前だと思って……。私は、イレーネ・ロドリーゴと申します」

 イレーネは一度目を落とし、また、名を名乗るために向き直った。

「シルバーモント出身なの?」

「隣のギラティナです。オリヴィエさんは、どうして……」

 オリヴィエは驚いた。ギラティナからボッカへは随分と距離がある。

「オリヴィエさん! 無事ですか? そっちにいるのは、イレーネ!?」

「その声、リリアなの?」

 木の影に潜ませていた少女から声が上がる。オリヴィエは控え目に制止した。

「待って、2人とも。再会を喜ぶのはもう少し後よ。早く馬車へ行きましょう」

 少女たちにも、色々と事情があるようだ。

 しかしまだ、安全は確保されていない。

 制圧の報せと、皆と合流を果たすまでは気を抜けない。

 オリヴィエは残りの1人を立たせると、急ぎ馬車へと引き返す。

 心細いかもしれないが、3人いれば大分ましだろう。

 馬車に匿うとオリヴィエは単身、ギャレットへと舞い戻った。







 ***







 その後およそ1時間のうちに、ギャレットの制圧が完了した。

 ルーカスが松明を片手に姿を現わし、終了を宣言する。

 団員たちはいずれも無事で、ルーカスとオリヴィエ、セルゲイは、王都へ戻る手筈となった。

 先ほど暴れた男を始め、拘束した従業員は全部で14人。全員をリュートへ引致する。

 元々先発隊に配置された6人が輸送を担う。

 後の2人はマダムクレアと、フェルナンド子爵を招聘……という名の連行へ向かう。

 オリヴィエが保護したリリアと名乗る娘とイレーネは、王都へ同行する運びとなった。

 リリアは個人の感情から、帰郷を望まない。

 イレーネは聞き取りの結果、誘拐の末ギャレットに売り飛ばされていた事が判明した。

 証人に適している点と、一家が離散し戻る場所がない点などの理由から、イレーネも王都行きに加わった。

 証人は2人もいれば充分だった。

 他の娘は、騎士団が責任を持って家まで送り届けた。

 家庭環境と事実も確認できるため、一石二鳥だ。

 そのような流れで、今はルーカスとオリヴィエは、少女2人と客車に同乗した。

 少女2人の身に起きた不幸を聞いて、オリヴィエは心を痛める。

 自分もオルガノに不吉な預言を受けたが、2人に比べればまだましだったと思い知った。

 オリヴィエの人生は短いかもしれないが、結局は今現在、文字通りルーカスの隣にいる。

 願いの半分は叶っていた。
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