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2章 赤ちゃんと孤児とオークキング

第21話 3人の少年少女

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 情報を得るために冒険者ギルドに行った。今日は仕事に行くのが憂鬱で、本当は家から出たくなかった。
 オークが大量発生したことで騎士団が動いてくれているんじゃないか、と楽観的な事を考えてしまう。
 冒険者ギルドに入ると荒くれ者の冒険者が、男の子を蹴っていた。
 他の冒険者の連中は、それを薄ら笑いで見ている。最悪な光景だった。
 2人の女の子が男の子を庇うように、荒くれ者の冒険者の前に立った。
「おめぇらクセぇーんだよ。とっとと出ていけよ」
 ゴリラみたいな荒くれ者の冒険者が叫んで、女の子を蹴ろうとした。

「やめろ」
 と俺は咄嗟に止めに入った。
 俺が止めなければ他の奴は止めない。薄ら笑いで見ているだけなのだ。
 ゴリラみたいな荒くれ者の冒険者が、俺を見る。
 チェ、と舌打ちした。
 彼は俺の強さを知らない。いや、俺の弱さを知らないと言うべきか。日本人だから俺のことを強いと勘違いしているのだろう。
「とっとと出ていけよ」とゴリラ男は捨て台詞を言って、テーブルに戻ってお酒を飲んだ。
 なぜか冒険者ギルドは飲食店もやっている。お酒も出しているのだ。酔わないと怖くて魔物と戦えない奴もいるんだろう。

「君達は昨日の」と俺は呟いた。
 蹴られていた少年。
 冒険者から男の子を庇った少女2人。
 3人は俺が昨日助けた子ども達だった。
 ボロボロな服。
 名前も知らない少年少女。

「先生」
 と3人が言って、親鳥を見つけたヒナみたいに俺に近づいて来た。
「えっ、なに? 先生? 君達は俺のことをココで待ってたの?」
 溢れ出す疑問。
 俺、先生って呼ばれてる? なんで先生なんだよ。
「オジサンって言うのも失礼だし、お兄さんっていう年齢じゃないし、私達に優しい大人だから先生って呼ぼうって3人に決めたの」
 とモジモジしながら、癖毛の少女が言った。
 3人の知り合いに先生という人がいて、その人が自分達に優しい大人だったから俺のことも先生と呼ぶことに決めたらしい。オジサンと呼ばれるよりいいのか? 俺だって平成生まれだし。……もう平成生まれもオジサンか。
「それで何で俺を待ってたんだ?」
「一緒に、一緒に森に入ってほしいの」
 と癖毛の女の子が言った。

 3人は『魔物の場所』に行こうとしている。魔物の場所という概念が無くても、すぐに森に入らないと2度と森に入れないことがわかっているんだろう。
 でも怖いから俺の事を待っていたんだろう。

「ダメだ。君達はもう森に入るな」
 と俺は言った。
 こんな子どもに冒険者は向かない。死ぬだけである。
「森に入れないと私達はご飯が食べれない」
 と癖毛の女の子が言った。
 この国には孤児に支援が行かないのか?
「君達を保護する大人はいないのか?」
「保護?」と3人が首を傾げた。
「俺以外の大人の知り合いはいないのか?」
 と俺は質問を変えた。
「先生がいたけど、しばらく帰って来ていない」と少年が答えた。
「他に仲間は?」と俺は尋ねた。
「みんな森に行ったきり帰って来ていないの」と癖毛の女の子が言った。
 
 昨日の受付のお姉さんが言っていたことを思い出す。「孤児は死んでもいいじゃないですか?」と彼女は言ったのだ。
 その言葉の通り、死んでいったのだろう。
 孤児は支援を受けることができず、幼い状態で冒険者になり、死ぬ環境に置かれているのだろう。冒険者で日銭を稼がなくては明日の暮らしができない状態なんだろう。

「はぁ」と俺は深い溜息をついた。
 どうなってんだよ、この国は。

「君達名前は?」
 と俺は尋ねた。
「アイリーン」と癖毛の女の子が言った。
「マミ」とストレートでショートヘアーの女の子が言った。
「クロス」と少年が言った。

『アイリが庇護下に入りました。ステータス画面が確認できるようになりました』
『マミが庇護下に入りました。ステータス画面が確認できるようになりました』
『クロスが庇護下に入りました。ステータス画面が確認できるようになりました』

 俺はまた深い溜息をついた。
 俺の庇護下に入ってしまった。

「わかった」と俺が言う。「俺に付いて来てもいいけど、ちゃんと俺の話を聞けよ」
「はい」と3人がいい返事をした。
「無茶はしない。命が一番大切。危ないと思ったら、すぐ逃げる」
「はい」と3人が返事をする。
 海外の作家が書いていたことを思い出す。能力を手にいれた者には、それの報いが生じる。それは試練かもしれないし、罰なのかもしれない。
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