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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!

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 躰を洗って、ゆっくりと湯船に浸かって芯から温まる。おれがルードの前に座って、こてんとルードの胸板に頭を乗せると、ぎゅっと抱きしめられた。ちゃぷんと水が跳ねる音が聞こえた。



「ふふ」

「ルード?」

「いや、髪が短いと洗う時間も短くなってしまうから、そこだけは少し残念だなと」



 それにしてはあまりにも柔らかい声だった。眠いのだろうか。今にも瞼がくっつきそうなくらいの声。髪を切ってから、ルードの体調が少しおかしいような? だって今まで、あんなに眠そうなルードを見たことがない。



「眠いんですよね……?」

「ああ。一気に、魔力をあげたから……だと、思う……」



 そう言えば髪に魔力が宿るとか宿らないとか聞いたことがあるような気がする。うとうととし始めたルードを、ここで眠らせるわけにはいかない! と起こして手を引っ張る。さすがにおれじゃルードを背負えないし。

 こうして眠そうにしているルードを見るのがすごく嬉しい。生活魔法で躰と髪を乾かして、着替えて、寝室へルードを連れて行く。ベッドに横になると、ルードはすやすやと気持ちよさそうな寝息を立ててしまった。

 そして、にゅっとフェンリルが出て来た! 床から! 思わず叫びそうになったおれは慌てて口元を両手で押さえる。フェンリルはそれを楽しそうに目元を細めて見ていた。



「先日ぶりだな」

「はい。ええと……ルードに用が? 寝ちゃいましたけど……」

「いや、用があるのはお前のほうだ」



 口元から手を離して小声で話す。ルードを起こさないように気を付けながら。フェンリルはぽんと飛び出たと思ったら、大型犬くらいの大きさに変化して床に横になる。じっとおれを見ながら。フェンリルがおれに用事? と自身を人差し指で指すと、フェンリルはクククと喉を鳴らして笑う。



「契約が切れた土地のことを気にしていただろう」

「なんで知っているんですか?」

「精霊が教えてくれた」



 精霊さんが伝達してくれたのか。おれはベッドから降りて、フェンリルの前で正座する。フェンリルはそんなおれを見て、もう一度クククと喉で笑い、それから撫でろと要求してきた。もふって良いのなら喜んでもふるけど。優しい手つきで撫でると、心地よさそうにとろりと目を閉じるのが見えた。



「次の精霊が契約されるまで、あの土地には試練が待っているだろう。例年以上に寒くなり、土地が枯れる。だが、それも次の精霊が土地と契約するまでだ。あの男が動き出したのなら、五年以内には契約されるだろう。その間にどれだけの犠牲が出るかはわからぬがな」

「……なんて言うか、領の人たちの巻き添え感がすごいですね……」

「フン、あやつらは同罪だ。ルードを恐れ、嫌悪し、疎外した。そのような者たちに優しくする気など、我にはない」



 ――フェンリルもルードの保護者枠だったりする? 撫でながらそんなことを考えているとフェンリルは目を開けておれを見た。じぃっと見られて、どうしたのだろうと首を傾げると、フェンリルはふはっと笑う。なんで笑ったのかも全然わからなくて、頭の中に『?』マークがいっぱい浮かんだ。



「覚えておけよ、精霊は基本的に人を好いているが、個人的に好いている者をないがしろにされればしっぺ返しをするとな」

「ああ、ルードを心配しているんですね」

「お前のこともな。ヒビキ、お前は精霊に好かれている。お前に危害を加えようとする者を、精霊は攻撃するだろう」

「……おれの意志とは関係なく?」

「そうだ」



 ……ありがたいけど、おれの意志とは関係なく攻撃されるのは困るような。おれが困惑の表情を浮かべているのを慰めるように、フェンリルはおれの膝に手を置いた。肉球のぷにぷにした感じがすっごく気持ちいい。って、そうじゃない、そうじゃなくて!



「精霊は良くも悪くも素直だからな。ま、大丈夫だろうが。用心しておくに越したことはない」

「わかりました、ありがとうございます」



 ぺこりと頭を下げると、フェンリルは「うむ」と一言だけ呟いて、そのままシュッと消えてしまった。

 おれはベッドに戻って横になる。そっとルードの頭を包み込むように抱きしめて、目を閉じる。すやすや眠るルードの姿を見て、好きだなぁとしみじみ思った。









 翌朝、目覚めるとルードは既に仕事に行ったみたいだった。おれはのろのろと起き上がって、クローゼットに向かい、服を着替える。ショートパンツも穿いて、シャノンさんのお店に行く準備をした。

 ナイトテーブルの上に置手紙があって、ルードから『気を付けて行ってくるんだよ』って書いてあった。おれはそれを大事にしまって、緑色の鈴を取り出してニコロと連絡を取る。



「おはよう、今日なんだけど……」

『ああ、隊長から聞きました。刺繍糸買うんですよね』

「うん。一緒に来てくれる?」

『もちろんですよ。今、向かいます』



 そう言ってくれたのでおれはお金の入った、ルードが作ってくれた袋を取り出してしっかりと握りしめてニコロを待つ。五分もしないうちにニコロが扉をノックして「ヒビキさまー」とおれの名を呼んだ。

 おれは寝室の扉を開けて、ニコロを迎える。



「朝食はどうします?」

「噴水広場で食べようかなって」

「じゃ、早速行きますか」



 うん、とうなずいてワープポイントの部屋に向かう。ソニアさんのお店に行って、ソニアさんに挨拶をした。ソニアさんも挨拶を返してくれた。食堂の準備をしているから、挨拶だけで終わらせておれらは噴水広場に向かった。



「クレープでも食べようかな」

「良いですね」



 ニコロも食べるつもりらしい。多分、甘い物を食べたいんだろうなって思った。噴水広場について、クレープ屋さんに向かってどれを食べようかとメニューとにらめっこ。どのクレープも美味しそうだから迷ってしまう。とはいえ、朝ご飯代わりなので、おれは甘くないクレープを選んだ。サラダクレープって言うのかな? ちなみにニコロはおれの想像通りに甘いクレープだった。チョコバナナ。

 ベンチに座ってクレープを食べる。シャキシャキのレタスとハムの塩気が美味しい。ニコロも美味しそうにクレープを食べていた。

 全て食べ終えてシャノンさんのお店に向かう。結構な人が歩いていて、賑わっている。ここが安心できる場所ってことだよなぁ……。



「ヒビキさま?」

「ううん、なんでもない。どんな刺繍糸買おうかな……」



 フェリクス陛下の顔を思い出しながらおれは歩く。ニコロは隣に居て、「俺も買おうかな」と呟いた。おれがニコロを見上げると、ニコロはハッとしたような表情を浮かべてひらひらと手を振った。



「あ、孤児院の子に作り方教えるためですよ!?」



 と慌てたように言ったけど、頬が赤らんでいるからきっとサディアスさんにプレゼントするつもりなんだろうなって思った。



「良い色の刺繍糸が見つかるといいね」

「ヒビキさまこそ」



 そんな会話をして、笑い合う。



「ところでサディアスさん、帰って来た?」

「あー……家令と一緒になって、なにかしてるみたいなので……えー……そのうち帰って来るんじゃないですかね?」

「仕事大丈夫なのかなぁ……?」



 サディアスさん、どのくらいメルクーシン領に居るつもりなんだろう。



「サディアスのことなら心配しなくても大丈夫だと思いますよ……」

「もしかして連絡来てる?」



 おれが聞くと、小さくうなずくニコロ。どうやって連絡を取っているんだろうと思ったら、ニコロがポケットに手を入れて鈴を見せてくれた。



「いつの間に!?」

「馬車で渡されました」



 サディアスさん、さすがです……。

 そんな会話をしながら歩いていると、あっという間にシャノンさんのお店についた。
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