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第一章

5:主に、俺のが当たっちゃう

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「だって」
「でもでもだって。ルルはさっきからそればっかりだ。観念しろー」
 観念しろ、はアスランの口癖だ。
 よく茶化したように使うのだは、今みたいに足の間に入ってこちらを見下ろすようにしてそれを言われると、何だかぞくぞくする。
 アスランが急に身体を折って、今度はルルの腹に口づけてきた。
「あっ、ん」
 慌てて口元を抑えた。
 俺、なんて声を。
「安心しな」
 抑えた手をアスランがルルの手首を掴んで外しながら言った。
「いくらでも声を出していい。どうせ、この城には僕とルル以外、誰もいないんだからら」
「そりゃ、そうですけど」
 小さな村で育ったルルにとって、ゴート城はとてつもなく大きな建物だった。
 ここに、アスランは七年、ずっと一人で住んでいる。
 王都からたくさんの従者を連れてくることが可能な身分にも関わらず。
 人嫌いというわけではなさそうだ。
 しゃべるのだって上手だし、人当たりもいい。
 魔法使いより弱い剣士を拾って、一から側仕えとして育ててくれている。
 浮世離れしているようで、経済観念はしっかりしているし、剣士をちゃんと人として扱ってくれる。なのに、なんというか、心は閉じられていて、誰にも本心も見せようとしない、そんな感じなのだ。
 太ももに手が伸ばされた。
 何度もオイルを付けた手で上下されるので、血の巡りが良くなっていくのが分かる。
 また内側にアスランの手が入り込んできて、今度はきつく閉じることを我慢した。
 だがアスランの手はそこに深入りすることなく、ルルの腰を伝って、脇腹を通り抜け、腕まで伸びていく。
 脇も、肘も指先も丹念にオイルを塗り込まれた。
 手の指一本一本、足の指もだ。
 慈しまれているような気分になった。
 自分が高貴な生まれで、とても大切にされる人物なのだと勘違いしそうだ。
 今度はうつ伏せにされ、背中や尻にもアスランの手が這っていく。
 もう、アスランがルルの身体に触れていない部分がほとんどない。
「ふう」とアスランが息を付いた。
 少し疲れたらしい。
「主。変わりましょう」
 すると、アスランが上下分かれた寝間着の上を脱いだ。
 細いだけのルルとは違って、少し厚みのある大人な身体だ。
「これをつければいいですか?」
 恥ずかしくて直視できず、オイルの入った瓶を焦りながら取ろうとすると、「魅力的な提案だけど、また今度」と止められた。
「おいで」と両手を広げられ、ルルは拒む仕草も、言葉も口に出せない。
 魔法にかけられたみたいに腕に中に入っていくと、皮膚が吸い付くみたいにピッタリと重なった。
 ルルの身体にたっぷり付けられたオイルが、やがてアスランの肌にも馴染んでいく。
「---ああ。すごい」
 勝手に声が漏れていた。
 アスランの肩に額をくっつけて、深く息を吸い込んだ。
 互いの肌から甘いオレンジの香りがする。
「同じ香り、安心します」
「うん」
 誰かと、しかも裸で一緒にいて、安心するだなんて。
 とろ火で煮込まれたように、なんだか眠くなってくる。だが、それをアスランは許さなかった。
 ルルの腰を引き寄せてきたのだ。
「主に、俺のが当たっちゃう」
 屹立しているは、寝間着を脱がされる前から自覚していた。
 自分の思い通りにならず勝手に暴走するこの部分をルルは持て余し、そして嫌っている。
「いいから」
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