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それぞれの想い
全てを話して
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ルーイの目に見つめられ、私はついに心を決めた。
「私は、多分コーゼにいるだろう。」
「コーゼ?!何でですか?!」
ステフの反応は当然だろう。これまで何も話をしていない。私が姫に仕えていたことも、黒髪の姫の話ばかりで、クリュスエント様の話が聞こえてこぬことも。
「コーゼで何するの?」
ルーイはきっと私の考えを予想していたのだろう。それほど驚くほどことなく、話の続きを促した。
「姫に、クリュスエント様に会いに行く。」
「姫?!ク、クリュスエント様って誰ですか?!」
「ククッ。ルーイ、ステフにも説明する。」
「あぁ。そうしてやって。」
話についていこうと必死に問いを投げかけてくるステフが可愛らしくて、つい笑いが溢れる。
必死な様子のステフのことを可愛く思うのか、それとも少し鬱陶しく思うのか、ルーイの顔にも笑みが浮かぶ。
「ステフ、これまで話をしなくて悪かった。クリュスエント様は私がお仕えしていたシャーノ国の第一王女だ。今から一年半くらい前にコーゼに嫁いでいかれたのだが、今どうされているか全くわからない。嫁がれてから、一度も連絡がない。ロイドに話を聞けば、側室であろう黒髪の姫のことは知っていても、クリュスエント様のことは何もわからなかった。その姫に会いに行こうと思う。」
私はこれまでルーイと話をしていた姫のことを、かいつまんでステフに話した。
口に出せばたったこれだけのことしか、姫についてはわかっていない。結局、コーゼに行かなければ何もわからないのだ。
「アイシュタルトが、王女に仕えて……連絡がなくって……コーゼに……」
私の話を理解しようと、ステフがぶつぶつと口の中で言葉を繰り返す。頭の中はきっと混乱しているだろう。
「ステフ、すぐには理解できなくても良い。話を続けても良いだろうか?」
「は!はい!大丈夫です!」
「それで、コーゼで姫に会えるの?」
「王宮に行くしかないと、ロイドに言われた。」
「王宮?!」
「あぁ。ステフはどこにあるか知ってるのか?」
「は、はい。知っています。コーゼの都のほぼ中心です。カミュートやシャーノの王宮も都の中にありますので、場所はほぼ変わりません。ですが、コーゼの王宮は周りの壁が高く、中の様子は全くわからないのです。」
「シャーノの城壁も低くはないが?」
「はい。カミュートも別段低くはありません。ですが、壁の外から王宮の一部を見ることができますよね?」
「城の上部のことだろうか?」
「はい。屋根……と言っても良いのでしょうか、そういった部分です。」
「コーゼの城は見えないってこと?」
「うん。壁が高くて、多分城が低く造ってあるんだと思う。」
「城壁の中に入らねばならぬということだな。」
カミュートは攻める予定はないのだろうか。大規模な戦で、まさか防戦に専念することはないだろう。
「アイシュタルトはコーゼにどうやって入っていくつもり?」
「戦に紛れて行こうと思う。それしかない。」
「そんなことできるの?」
「戦が始まれば、兵士が国境を行き交うからな。どちらがどちらの領土にいてもおかしくない。それに紛れて居住地を変える人間もいるぐらいだ。」
「そのようなことは、禁止されていますよね?」
「もちろん。ただ、そうやって動いた人間を捕まえるほどの余力も戦いの後は残らぬからな。三国間では仕方のないことだと、諦めているだけだ。」
「そうやってコーゼの中に行こうとしてるってことか。」
「あぁ。私が一人でコーゼに入るにはそれしかない。」
シャーノからカミュートに移動してきた時のように商人とともに入っていっては、今は目立ちすぎるだろう。コーゼとの関係が緊張状態にある今、国境門の監視も厳しくなっているはずだ。
「アイシュタルト、それなら都に行こう。」
「私は、多分コーゼにいるだろう。」
「コーゼ?!何でですか?!」
ステフの反応は当然だろう。これまで何も話をしていない。私が姫に仕えていたことも、黒髪の姫の話ばかりで、クリュスエント様の話が聞こえてこぬことも。
「コーゼで何するの?」
ルーイはきっと私の考えを予想していたのだろう。それほど驚くほどことなく、話の続きを促した。
「姫に、クリュスエント様に会いに行く。」
「姫?!ク、クリュスエント様って誰ですか?!」
「ククッ。ルーイ、ステフにも説明する。」
「あぁ。そうしてやって。」
話についていこうと必死に問いを投げかけてくるステフが可愛らしくて、つい笑いが溢れる。
必死な様子のステフのことを可愛く思うのか、それとも少し鬱陶しく思うのか、ルーイの顔にも笑みが浮かぶ。
「ステフ、これまで話をしなくて悪かった。クリュスエント様は私がお仕えしていたシャーノ国の第一王女だ。今から一年半くらい前にコーゼに嫁いでいかれたのだが、今どうされているか全くわからない。嫁がれてから、一度も連絡がない。ロイドに話を聞けば、側室であろう黒髪の姫のことは知っていても、クリュスエント様のことは何もわからなかった。その姫に会いに行こうと思う。」
私はこれまでルーイと話をしていた姫のことを、かいつまんでステフに話した。
口に出せばたったこれだけのことしか、姫についてはわかっていない。結局、コーゼに行かなければ何もわからないのだ。
「アイシュタルトが、王女に仕えて……連絡がなくって……コーゼに……」
私の話を理解しようと、ステフがぶつぶつと口の中で言葉を繰り返す。頭の中はきっと混乱しているだろう。
「ステフ、すぐには理解できなくても良い。話を続けても良いだろうか?」
「は!はい!大丈夫です!」
「それで、コーゼで姫に会えるの?」
「王宮に行くしかないと、ロイドに言われた。」
「王宮?!」
「あぁ。ステフはどこにあるか知ってるのか?」
「は、はい。知っています。コーゼの都のほぼ中心です。カミュートやシャーノの王宮も都の中にありますので、場所はほぼ変わりません。ですが、コーゼの王宮は周りの壁が高く、中の様子は全くわからないのです。」
「シャーノの城壁も低くはないが?」
「はい。カミュートも別段低くはありません。ですが、壁の外から王宮の一部を見ることができますよね?」
「城の上部のことだろうか?」
「はい。屋根……と言っても良いのでしょうか、そういった部分です。」
「コーゼの城は見えないってこと?」
「うん。壁が高くて、多分城が低く造ってあるんだと思う。」
「城壁の中に入らねばならぬということだな。」
カミュートは攻める予定はないのだろうか。大規模な戦で、まさか防戦に専念することはないだろう。
「アイシュタルトはコーゼにどうやって入っていくつもり?」
「戦に紛れて行こうと思う。それしかない。」
「そんなことできるの?」
「戦が始まれば、兵士が国境を行き交うからな。どちらがどちらの領土にいてもおかしくない。それに紛れて居住地を変える人間もいるぐらいだ。」
「そのようなことは、禁止されていますよね?」
「もちろん。ただ、そうやって動いた人間を捕まえるほどの余力も戦いの後は残らぬからな。三国間では仕方のないことだと、諦めているだけだ。」
「そうやってコーゼの中に行こうとしてるってことか。」
「あぁ。私が一人でコーゼに入るにはそれしかない。」
シャーノからカミュートに移動してきた時のように商人とともに入っていっては、今は目立ちすぎるだろう。コーゼとの関係が緊張状態にある今、国境門の監視も厳しくなっているはずだ。
「アイシュタルト、それなら都に行こう。」
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