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開戦
開戦
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「結局、開戦はいつになるの?」
コーゼの王の逝去がカミュート中に広まって、その後注目されているのは、もちろん戦のことだ。
「まもなく葬儀が行われて、そこでリーベガルド王子の即位式だ。カミュート王も招かれているだろう?」
「まだ出発されてませんが、そのうちでしょう。」
「即位後、民への披露目の儀式だろうな。開戦は後半月もすれば現実となる。」
「兵士の募集もそれまでには行われそうですね。」
私が狙うのは、騎士の募集であり、できたら二度目以降。コーゼに攻め入る部隊だ。
開戦後しばらくは国境門付近での応戦になるだろう。カミュートの武力が勝っていれば、そこを優勢に押し込んでいくはず。
ステフの話ではコーゼは武具を揃いきれていないとのこと。カミュートの軍は国境門の兵を破ってくれるだろうか。
コーゼの武力は国境と都に集中させるはずだ。カミュートの軍が国境の兵を破るのに、どれだけ余裕があるのだろうか。
コーゼを滅ぼすことが目標であるのなら、一直線に都を目指すに違いない。王であるリーベガルドを討てば、それで戦は決着する。
カミュート王が本当にコーゼの民を思うのであれば、戦を長引かせるような真似はなさらないはずだが。
「なるようにしかならねぇって。」
ルーイが考え込む私を見て、呆れたような声を出した。
「それは、そうであろうが。」
「王様の考えてること、俺たちにはわからねぇもん。俺たちには俺たちにはできることを、やるしかねぇだろ?」
「僕たちにできることって?」
「買い出し!アイシュタルトの装備、整えてやらなきゃ。」
「そうだね!」
まるで旅行にでも行く準備を整えるかの様に声を弾ませる二人を見ると、深刻な顔をしている私の方がおかしい様だ。
三人で外へ出て行くと、都の中の雰囲気は以前とは一変していた。
広場周辺にだけだった兵士が、そこら中を歩き回っている。体格のせいか、自分への自信か、人々を押し退け歩いている様に見える。
兵士といえども、同じ人間だろうに。どれだけ腕に自信があるというのか。
「アイシュタルト、ケンカ売るなよ。」
「だが!」
私の気持ちを読み取って、ルーイが釘をさす。
「兵士なんて、あんなもんだって。アイシュタルトが珍しいんだ。」
「そうです。兵士と目を合わせてはいけないと、僕たちはそう教えられて育ちました。」
「そのようなこと……」
「それが、俺たちと城の関係者との差だ。仕方ないよ。」
私たちの存在は、それ程人々を圧迫していたのか。
以前、ルーイが騎士だということは黙っておいた方が良いと言っていたのは、こういうことだったのだろう。
「すまない。」
「アイシュタルトは何もしてねぇだろ?それに、アイシュタルトと会えて、城の関係者もあんなやつばかりじゃないってわかったから。」
「こんな風に話ができるなんて、思ってもいませんでした。」
「会えてよかったよ。」
「私もだ。」
ルーイやステフに会って、私は色々なものを貰った。
次は私が返す番だ。間もなく始まるであろう戦に行って、少しでもカミュートの為に、二人の為に、剣を振るってこよう。
私たちの予想通り、リーベガルド王が即位されておよそ半月後。ついにコーゼの軍が国境門を無理に通ろうと侵攻を始める。
カミュート王も当然時期は読んでいたようで、カミュートの兵士達は既に国境門やその周辺の村や町に分かれて、開戦の日を待っていた。
つまりコーゼの軍が国境門を破ろうとしたその日、すぐさまコーゼ軍とカミュート軍は対時することになる。コーゼとカミュートの国を賭けた戦いはこうして始まったのだ。
その日は、今にも雪が舞いそうなほどの本格的な寒さのこの時期には珍しく、澄んだ青空が頭上に広がっていた。
コーゼの王の逝去がカミュート中に広まって、その後注目されているのは、もちろん戦のことだ。
「まもなく葬儀が行われて、そこでリーベガルド王子の即位式だ。カミュート王も招かれているだろう?」
「まだ出発されてませんが、そのうちでしょう。」
「即位後、民への披露目の儀式だろうな。開戦は後半月もすれば現実となる。」
「兵士の募集もそれまでには行われそうですね。」
私が狙うのは、騎士の募集であり、できたら二度目以降。コーゼに攻め入る部隊だ。
開戦後しばらくは国境門付近での応戦になるだろう。カミュートの武力が勝っていれば、そこを優勢に押し込んでいくはず。
ステフの話ではコーゼは武具を揃いきれていないとのこと。カミュートの軍は国境門の兵を破ってくれるだろうか。
コーゼの武力は国境と都に集中させるはずだ。カミュートの軍が国境の兵を破るのに、どれだけ余裕があるのだろうか。
コーゼを滅ぼすことが目標であるのなら、一直線に都を目指すに違いない。王であるリーベガルドを討てば、それで戦は決着する。
カミュート王が本当にコーゼの民を思うのであれば、戦を長引かせるような真似はなさらないはずだが。
「なるようにしかならねぇって。」
ルーイが考え込む私を見て、呆れたような声を出した。
「それは、そうであろうが。」
「王様の考えてること、俺たちにはわからねぇもん。俺たちには俺たちにはできることを、やるしかねぇだろ?」
「僕たちにできることって?」
「買い出し!アイシュタルトの装備、整えてやらなきゃ。」
「そうだね!」
まるで旅行にでも行く準備を整えるかの様に声を弾ませる二人を見ると、深刻な顔をしている私の方がおかしい様だ。
三人で外へ出て行くと、都の中の雰囲気は以前とは一変していた。
広場周辺にだけだった兵士が、そこら中を歩き回っている。体格のせいか、自分への自信か、人々を押し退け歩いている様に見える。
兵士といえども、同じ人間だろうに。どれだけ腕に自信があるというのか。
「アイシュタルト、ケンカ売るなよ。」
「だが!」
私の気持ちを読み取って、ルーイが釘をさす。
「兵士なんて、あんなもんだって。アイシュタルトが珍しいんだ。」
「そうです。兵士と目を合わせてはいけないと、僕たちはそう教えられて育ちました。」
「そのようなこと……」
「それが、俺たちと城の関係者との差だ。仕方ないよ。」
私たちの存在は、それ程人々を圧迫していたのか。
以前、ルーイが騎士だということは黙っておいた方が良いと言っていたのは、こういうことだったのだろう。
「すまない。」
「アイシュタルトは何もしてねぇだろ?それに、アイシュタルトと会えて、城の関係者もあんなやつばかりじゃないってわかったから。」
「こんな風に話ができるなんて、思ってもいませんでした。」
「会えてよかったよ。」
「私もだ。」
ルーイやステフに会って、私は色々なものを貰った。
次は私が返す番だ。間もなく始まるであろう戦に行って、少しでもカミュートの為に、二人の為に、剣を振るってこよう。
私たちの予想通り、リーベガルド王が即位されておよそ半月後。ついにコーゼの軍が国境門を無理に通ろうと侵攻を始める。
カミュート王も当然時期は読んでいたようで、カミュートの兵士達は既に国境門やその周辺の村や町に分かれて、開戦の日を待っていた。
つまりコーゼの軍が国境門を破ろうとしたその日、すぐさまコーゼ軍とカミュート軍は対時することになる。コーゼとカミュートの国を賭けた戦いはこうして始まったのだ。
その日は、今にも雪が舞いそうなほどの本格的な寒さのこの時期には珍しく、澄んだ青空が頭上に広がっていた。
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