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白牢の鳥と壊錠の獣
しおりを挟む数ヶ月が過ぎ、戦争は更に激しさを増した。
死者は日を追う毎に数が増し、救護班の者さえも兵として駆り出される状況に陥っている中、レンは魔族を助けた事が上層部へ報告され、純白に塗られた部屋に幽閉されていた。
「何故生きる者を助けてはいけないのか」と掛け合ってみたものの通る筈はなく、ただ大人しく外の世界に戻れる日を待つしかなかった。
この部屋 ─ 白夜の牢に入れられた物は何もかもが純白に染まる。
運ばれる食事すら色が失われ、歩く音も消えて影さえも出来ない。
唯一、色と言えるのは自分の髪と肌だけで、幽閉されてからは毎日の様に泣いていたが、最近は枯れ果てたのか涙も流れなくなっている。
何日閉じ込められているか解らないが部屋に入れられてからは水以外何も口にしていない。
眩しい程の白はレンから何もかもを奪い取るかの様に記憶を浸食してきていた。
『…傷…癒えたかな……』
薄れゆく記憶に強く残る手当てをした男の髪と強い瞳。
焦点が合わなくなりつつある瞳を閉ざして一時的に白から逃げようとするが、周りが明るいせいで其すら赦されない。
レンは牢獄から出られることをひたすら祈り続けた。
**********
同じ頃、ガウルは軍団長暗殺のため城内に忍び込んでいた。
『たかだか魔族の一人を治療しただけで牢屋行きだとよ…』
『上層の命じゃあの人も聞くしかねえが、罰と言うより幽閉だよなぁ…』
自分の存在に気付かない兵士達が話をしているのを耳に挟み、信頼している男から渡された城内見取を影の中で広げる。
(…あの話から三日は過ぎている。処刑されたか…?)
自分を助けた女がただ処刑されるのは面白くないと思い、牢獄へ足を運んだ物のその姿はなく、本来の目的を早々に遂行すべく城内に戻ってきた。
見取図をしまおうとした瞬間、甃に響く足音に気付き影に紛れ、影の中自らの気配を殺し、耳をすます。
「レン様は今だに白夜の牢らしいな…」
「重傷者も多く出ているのに…困りましたね…」
兵士達が通り過ぎ、姿が無いことを確認して、足音を立てる事なく影から抜け出す。
内容からすると幽閉された少女の事だろう、自分達本意の会話に顔をしかめ、もう一度見取図を開く。
完璧なまでに細やかに書かれたそれは、たった一ヶ所だけ説明が書かれていない。
「何があるか解らない部屋だった」と言われた事を思い出し、ガウルはそこに居ると確信を抱き、辺りを見回し影から影へと跳び、進路を変えた。
**********
あれからどの位の時間が過ぎたのだろうか。
白い闇はレンの全てを否定するかのように相変わらず色を見せない。
右も左も解らない恐怖に自らの体を抱きしめる。
『もう…出して貰えないのかな…』
何もかも白に埋め尽されて記憶が消えるまで。
固く目を閉じて小さく蹲り、絶望から逃げるように自分を抱く腕をきつくする。
「も…イヤ……助けて……」
呟いた瞬間、吸音されている筈の部屋に何かが倒れる音が響く。
驚いて振り返ると、純白と自分しか存在しない筈の場所に、強い黒が存在していた。
見覚えのある黒髪の男がゆっくりと近づいてくる。
動くなと命じられた訳でも無いのに身体は動かず、近づいてくる黒を見つめる事しか出来ない。
目の前に立ち止まった男の手がレンの手首を掴むと強引に立ち上がらされた。
「…随分気味悪い部屋にいるんだな」
長身の男は部屋の白さに忌々しさを感じているらしく舌打ちを響かせ、目を細めた。
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