43 / 91
第3章 おてんば姫の冒険録
3 クリスタルのドラゴン
しおりを挟む
◇◇◇
「アリステア王国とノイエ王国が戦争になる……」
冒険者ギルドでいつものように卓を囲んでいた面々だったが、深刻な顔で切り出したジャイルの言葉にティアラは息を呑んだ。
「ああ、その可能性が高い。俺たち二人にも帰国要請が届いている。エリックの元にも届いているんじゃないか?」
「ええ。神殿に圧力がかかっているようですね。アリシア王国の神官への帰国命令は今のところ大神官様が全て跳ねのけてくれてますが、いつまで持つか怪しいところです……」
「エリック様は聖人であると同時にアリステア王国第二王子。帰国要請を撥ね退けるのは難しいのでは?」
ミハエルの言葉にエリックは深刻な顔で頷く。
「もとよりこの身は女神アリステアに捧げた身。王族の地位や聖人の位に未練などありませんが……。いずれにせよこのままでは国内外で難しい立場になってしまいますね」
「実は……俺たち二人にエリックの暗殺を示唆するような内容の文書も届いてるんだ」
ジャイルの言葉にティアラは思わず立ち上がった。
「そんなっ!私たちは同じチームの仲間なのに!」
「ああ。もちろんそんな命令に従うつもりはないさ。だが、それだけ両国の関係は悪化しているということだ。おそらく数か月後の開戦に向けて準備段階に入っているところだ」
「アリステア王国はノイエ王国だけじゃなく周辺国家も巻き込んでの宣戦布告を考えているようじゃからのお」
「じいや……それ、本当?もしかしてアリシア王国も戦場になる可能性がある?」
「周辺各国が臨戦態勢になっていることは間違いござらん。アリシア王国に面と向かって戦を仕掛けてくることはないと思いますが、アリシア王国は資源にも人材にも恵まれた土地。どこぞに暗殺者や略奪者が隠れていてもおかしくありませんな。戦になれば、姫様も喉から手が出るほど欲しい人物の一人ですじゃ。ゆめゆめご油断めさるな」
「わかった……戦争にはここ数年の魔物被害や天災が影響してるんだよね……でも、アリステア王国だって被害は深刻なはずでしょう?周辺諸国に戦を仕掛けるだけの軍事力は一体どこから……」
戦に勝てば領地が増える。侵略した国で略奪をすれば一時しのぎにはなるかもしれない。しかし、世界中が疲弊しているなか、今このタイミングで戦を仕掛ける意図がつかめない。
「アリステア王国の守護神である、ドラゴンが……関わっているかと」
「ドラゴン!?」
エリックの言葉にティアラは驚きの声を上げた。ずっと消息のつかめなかったフィリップのことが頭をよぎる。いえ、でもフィリップはティアラとともにアリシア王国にやって来たのだ。フィリップがティアラの死後、自力でアリステア王国に戻ったとは考えられない。
「エリック、アリステア王国にドラゴンが……いるの?」
「はい……このことは、王族にしか知らされていないことです」
「エリックはそのドラゴンを……見たことはある?」
「はい。ドラゴンはずっと、眠り続けているようでした。動いているドラゴンを見たことはありませんが、アリステア王国の王宮の地下深く。クリスタルに閉じ込められたドラゴンが眠り続けているのです」
「クリスタルに……閉じ込められている!?そ、そのドラゴンの色は!?」
「色?色は漆黒でしたが……」
「そんな……」
フィリップは綺麗な白金の翼に金の目を持つ美しいドラゴンだった。漆黒ではない。しかし……嫌な予感がティアラを突き動かす。
「行かなきゃ。私、アリステア王国にいくわ」
「アリステア王国とノイエ王国が戦争になる……」
冒険者ギルドでいつものように卓を囲んでいた面々だったが、深刻な顔で切り出したジャイルの言葉にティアラは息を呑んだ。
「ああ、その可能性が高い。俺たち二人にも帰国要請が届いている。エリックの元にも届いているんじゃないか?」
「ええ。神殿に圧力がかかっているようですね。アリシア王国の神官への帰国命令は今のところ大神官様が全て跳ねのけてくれてますが、いつまで持つか怪しいところです……」
「エリック様は聖人であると同時にアリステア王国第二王子。帰国要請を撥ね退けるのは難しいのでは?」
ミハエルの言葉にエリックは深刻な顔で頷く。
「もとよりこの身は女神アリステアに捧げた身。王族の地位や聖人の位に未練などありませんが……。いずれにせよこのままでは国内外で難しい立場になってしまいますね」
「実は……俺たち二人にエリックの暗殺を示唆するような内容の文書も届いてるんだ」
ジャイルの言葉にティアラは思わず立ち上がった。
「そんなっ!私たちは同じチームの仲間なのに!」
「ああ。もちろんそんな命令に従うつもりはないさ。だが、それだけ両国の関係は悪化しているということだ。おそらく数か月後の開戦に向けて準備段階に入っているところだ」
「アリステア王国はノイエ王国だけじゃなく周辺国家も巻き込んでの宣戦布告を考えているようじゃからのお」
「じいや……それ、本当?もしかしてアリシア王国も戦場になる可能性がある?」
「周辺各国が臨戦態勢になっていることは間違いござらん。アリシア王国に面と向かって戦を仕掛けてくることはないと思いますが、アリシア王国は資源にも人材にも恵まれた土地。どこぞに暗殺者や略奪者が隠れていてもおかしくありませんな。戦になれば、姫様も喉から手が出るほど欲しい人物の一人ですじゃ。ゆめゆめご油断めさるな」
「わかった……戦争にはここ数年の魔物被害や天災が影響してるんだよね……でも、アリステア王国だって被害は深刻なはずでしょう?周辺諸国に戦を仕掛けるだけの軍事力は一体どこから……」
戦に勝てば領地が増える。侵略した国で略奪をすれば一時しのぎにはなるかもしれない。しかし、世界中が疲弊しているなか、今このタイミングで戦を仕掛ける意図がつかめない。
「アリステア王国の守護神である、ドラゴンが……関わっているかと」
「ドラゴン!?」
エリックの言葉にティアラは驚きの声を上げた。ずっと消息のつかめなかったフィリップのことが頭をよぎる。いえ、でもフィリップはティアラとともにアリシア王国にやって来たのだ。フィリップがティアラの死後、自力でアリステア王国に戻ったとは考えられない。
「エリック、アリステア王国にドラゴンが……いるの?」
「はい……このことは、王族にしか知らされていないことです」
「エリックはそのドラゴンを……見たことはある?」
「はい。ドラゴンはずっと、眠り続けているようでした。動いているドラゴンを見たことはありませんが、アリステア王国の王宮の地下深く。クリスタルに閉じ込められたドラゴンが眠り続けているのです」
「クリスタルに……閉じ込められている!?そ、そのドラゴンの色は!?」
「色?色は漆黒でしたが……」
「そんな……」
フィリップは綺麗な白金の翼に金の目を持つ美しいドラゴンだった。漆黒ではない。しかし……嫌な予感がティアラを突き動かす。
「行かなきゃ。私、アリステア王国にいくわ」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
87
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる