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第3章 おてんば姫の冒険録
45 悲しい再会
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♢♢♢
アリステア王国へ向かう途中も、ティアラは守護の力が弱体化しているいくつもの村や街、森の中にできるだけ立ち寄り、結界を施した。
魔物の被害を減らすためには、できるだけ広範囲に結界を張っていく必要がある。通常これだけ大規模な結界を張るにはかなりの魔力を消費するが、魔石を使うことでほとんど魔力を消費せずに済んだ。
(魔石を沢山作っておいて本当に良かった。一つずつ魔力を込めていたらさすがに魔力切れを起こしてたわ)
「これで、少しでも魔物の被害が減るといいんだけど……」
「結界によって瘴気の発生がかなり抑えられています。瘴気から生まれる魔物の発生を防ぐと同時に弱体化させる効果もあるので、従来のモンスターへの対応としては十分でしょう。ただ……」
「分かってる。無理やりモンスターを大量に生み出すような場合には、対応できないよね」
ティアラもエリックも、突然現れた瘴気の渦から魔物が生み出されたあの日のことを思い出していた。もしあれが、自然発生的なものでなく、何らかの意図をもって生み出されたものだとしたら。そして、何らかの方法で、フィリップが関わっていたとするならば。
(まだ、分からないわ。私の杞憂であって欲しいけど……)
だが、その心配は最悪の形で現実のものとなってティアラ達の前に突きつけられた。
♢♢♢
「に、逃げろ!!ドラゴンだっ!ドラゴンが襲ってきたぞ!」
アリステア王国の隣国の一つであるラティシア王国の宿屋で休憩を取っていたティアラ達は、突然のドラゴン襲撃の一報に店を飛び出した。
突如上空に渦巻く濃い瘴気の渦から現れたのは、紛れもないドラゴン。しかも、一匹や二匹ではない。影のように黒いドラゴンが、悪夢のように次々と生み出されていく。
「あ、ああ。なんてことだ、こ、こんなことが」
「ド、ドラゴンがどうしてこんなところに……」
「これは、この世の終わりなのか」
絶望の表情を浮かべ、立ち尽くす人々。あまりに多くのドラゴンを前に、誰もが戦意を失っていた。
「こんなの、どこに逃げろって言うんだ。どこにも逃げ場なんてないじゃないか」
ティアラもまた、ドラゴンの姿をまのあたりにして、言葉もなく立ち尽くしていた。
「ティアラ……あの中にフィリップはいるのか?」
空を見つめていたティアラは、静かに首を振る。
「いいえ。あれは、ドラゴンじゃないわ。ドラゴンの形を取ってるけど、あれは違う」
「そうか」
ティアラの言葉にアデルは軽く頷いた。
「では、あれが何か分かるか?」
「あれは……瘴気そのもの。悪意や憎しみが、形を持ったもの。そして……フィリップではない。ないけれど。確かにフィリップの魔力を感じるわ」
ティアラは瘴気に覆われていく空を見つめながら、涙を流した。
(フィリップ、あなたの魔力を感じて、こんなに胸が痛む日がくるなんて)
アリステア王国へ向かう途中も、ティアラは守護の力が弱体化しているいくつもの村や街、森の中にできるだけ立ち寄り、結界を施した。
魔物の被害を減らすためには、できるだけ広範囲に結界を張っていく必要がある。通常これだけ大規模な結界を張るにはかなりの魔力を消費するが、魔石を使うことでほとんど魔力を消費せずに済んだ。
(魔石を沢山作っておいて本当に良かった。一つずつ魔力を込めていたらさすがに魔力切れを起こしてたわ)
「これで、少しでも魔物の被害が減るといいんだけど……」
「結界によって瘴気の発生がかなり抑えられています。瘴気から生まれる魔物の発生を防ぐと同時に弱体化させる効果もあるので、従来のモンスターへの対応としては十分でしょう。ただ……」
「分かってる。無理やりモンスターを大量に生み出すような場合には、対応できないよね」
ティアラもエリックも、突然現れた瘴気の渦から魔物が生み出されたあの日のことを思い出していた。もしあれが、自然発生的なものでなく、何らかの意図をもって生み出されたものだとしたら。そして、何らかの方法で、フィリップが関わっていたとするならば。
(まだ、分からないわ。私の杞憂であって欲しいけど……)
だが、その心配は最悪の形で現実のものとなってティアラ達の前に突きつけられた。
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「に、逃げろ!!ドラゴンだっ!ドラゴンが襲ってきたぞ!」
アリステア王国の隣国の一つであるラティシア王国の宿屋で休憩を取っていたティアラ達は、突然のドラゴン襲撃の一報に店を飛び出した。
突如上空に渦巻く濃い瘴気の渦から現れたのは、紛れもないドラゴン。しかも、一匹や二匹ではない。影のように黒いドラゴンが、悪夢のように次々と生み出されていく。
「あ、ああ。なんてことだ、こ、こんなことが」
「ド、ドラゴンがどうしてこんなところに……」
「これは、この世の終わりなのか」
絶望の表情を浮かべ、立ち尽くす人々。あまりに多くのドラゴンを前に、誰もが戦意を失っていた。
「こんなの、どこに逃げろって言うんだ。どこにも逃げ場なんてないじゃないか」
ティアラもまた、ドラゴンの姿をまのあたりにして、言葉もなく立ち尽くしていた。
「ティアラ……あの中にフィリップはいるのか?」
空を見つめていたティアラは、静かに首を振る。
「いいえ。あれは、ドラゴンじゃないわ。ドラゴンの形を取ってるけど、あれは違う」
「そうか」
ティアラの言葉にアデルは軽く頷いた。
「では、あれが何か分かるか?」
「あれは……瘴気そのもの。悪意や憎しみが、形を持ったもの。そして……フィリップではない。ないけれど。確かにフィリップの魔力を感じるわ」
ティアラは瘴気に覆われていく空を見つめながら、涙を流した。
(フィリップ、あなたの魔力を感じて、こんなに胸が痛む日がくるなんて)
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