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3 新しい竜王陛下

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 ◇◇◇



 フェリシエの暮らすオリテント帝国は主に人間が暮らす国。しかし、すぐ隣国のマドラス竜王国はその名の通り竜王の治める亜人の国である。



 千年の時を生きると言う竜王は信仰の対象であり、オリテント帝国はもともと竜王を信仰する人間が集まってできた国だ。



「どうして竜王陛下がわたくしを?陛下には最愛の番がいらっしゃるはずです」



 竜人族は非常に愛情深い種族で、生涯番と定めた一人しか愛さないと言われている。一度番を得た竜人族は決して他人には目を向けないとか。今の竜王の治世は長く続いており、竜王の番に不幸があったなどという話も聞いたことがない。なんて理想的な恋人だろうか。口では愛だの恋だの言いながら平気で裏切る人間とは大違いだ。



「前竜王陛下の譲位により、新たなる竜王陛下が誕生したのだ」



 それはフェリシエにとっても初耳だった。竜王は血筋ではなく、竜人族の中で最も強いと認められた強者がなる習わし。新たなる強者が誕生したときのみ、代替わりが行われるとされている。竜王は竜人族で最強。いや、この世界最強の存在と言うわけだ。そのため、竜王の代替わりはどの国にとっても最大の関心事であるはず。何しろ、竜王の気まぐれ一つで国が滅びかねないので。竜王の持つ強大な力は、信仰と同時に人々の畏怖の対象でもあるのだ。



「でも、どうして私が番に?新しい竜王陛下とどこかでお逢いしたことでもありましたか?」



 隣国に行ったこともなければ、竜人族と公の場で会った記憶もない。竜人族の番がどうやって選ばれるかは知らないが、フェリシエには全く身に覚えがなかった。



「そんなものわしが知るかっ!とにかく国王陛下と兄上宛にお前に婚約を申し込む書状が正式に届いたのだ。我が国の貴族令嬢が竜王陛下の花嫁に選ばれるなど、オリテント帝国史上初めてのことだ。非常に喜ばしいことだが、万が一竜王陛下の機嫌を損ねたらこの国がどうなるか……だから頼む!お前が竜王陛下にすぐさまその身を捧げ、この国を守ってくれ!」



 そんな無茶な。
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