23 / 79
秘密の聖女様、魔王と共謀する件 3
しおりを挟むもはやここまで理解しては‥‥‥逃げても仕方がない。
いまさら、債権を売り渡しました、はいさようなら。
そんなことは出来なくなっていた。
(参ったわねえ‥‥‥。
あの少女を債権の最重要案件にするつもりだったのにーー)
ハーミアは隣で震えて蒼白になっているエリーゼに視線をやる。
皇族としての影はどこにもなく、ただ自身の未来だけを案じている。
そうとしたハーミアの瞳には映らなかった。
「情けないわねえ、エリーゼ様!
帝国の犯した罰の一端を、皇族なら受けいれようという程度の気概もないのですか?
もう喋れるでしよう!?
あなたは皇族なのですよ?
少しは自覚されたらいかがですか!!!」
大地母神の大神官でもあるくせに。
なにを、そこいらの十代の少女が恐怖に打ち震えるようにしてるのよ!!!
まだ十六‥‥‥ああ、そうか。
わたしと同年代か。
大神官としての責務や皇族としての公務にまで目が行かないのか。
それとも、ただ愚かなのか。
返事はその後の言葉に現れていた。
「お‥‥‥お黙りなさい、女公爵殿。
わたしはこれでも、皇女を名乗れる身よ‥‥‥。
あなたよりは上だわ」
少女が背伸びをしているようにしか見えないわねえ。
ああ、情けない。
これで魔王は息子の嫁に迎え入れようなんて思わないだろうし。
「どこかで殺して帰るしかないか‥‥‥。
もう、債権の価値もない大神官四名。
生かしておいても無駄だわー‥‥‥」
ぼそりとたまたま呟いた言葉が、エリーゼ以下三名の大神官たちの蒼白な画面に死相を表した。
あ、しまった。
まあ、いいか。
恐怖を与えた方が、魔族の方々には美味しい食事になるでしょ。
食料品として買い取ってもらおうかなー?
「魔王様。
宜しいですか?」
ハーミアは過去を見ていたのだろう。
少しばかりぼんやりとしていた魔王に声をかけた。
「ん?
あ、ああ。
何かな? 債権の価値がどうとやら言われていたが。
まさか、食糧として買い取れなどど言わんだろうな?」
「あれ‥‥‥。
いえ、まあ、その。
そうですね、もう用済みでして。
そちらも何か使い道ございませんでしょ?」
「あのなあ、ハーミア殿。
魔族をなんだと思われている‥‥‥。
人を食す魔族な確かにいるぞ?
吸血鬼、人狼、その他にもな。
しかし、我らは文明人だ。
戦いはすれど、同じ言葉をしゃべる者同士を食すなど‥‥‥勘弁願いたいな」
あらら‥‥‥断られたわ。
そんなにほっとするようなことないじゃない。
単なるモノが、意志を持つなんて生意気なのよ‥‥‥
あの、エミリオ皇太子にも同じようにさんざん恐怖を味わわせてやるわ。
皇帝にも、ね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,194
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる