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秘密の聖女様、魔王と共謀する件 3

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 もはやここまで理解しては‥‥‥逃げても仕方がない。
 いまさら、債権を売り渡しました、はいさようなら。
 そんなことは出来なくなっていた。

(参ったわねえ‥‥‥。
 あの少女を債権の最重要案件にするつもりだったのにーー)

 ハーミアは隣で震えて蒼白になっているエリーゼに視線をやる。
 皇族としての影はどこにもなく、ただ自身の未来だけを案じている。
 そうとしたハーミアの瞳には映らなかった。

「情けないわねえ、エリーゼ様!
 帝国の犯した罰の一端を、皇族なら受けいれようという程度の気概もないのですか?
 もう喋れるでしよう!?
 あなたは皇族なのですよ?
 少しは自覚されたらいかがですか!!!」

 大地母神の大神官でもあるくせに。
 なにを、そこいらの十代の少女が恐怖に打ち震えるようにしてるのよ!!!
 まだ十六‥‥‥ああ、そうか。
 わたしと同年代か。
 大神官としての責務や皇族としての公務にまで目が行かないのか。
 それとも、ただ愚かなのか。
 返事はその後の言葉に現れていた。

「お‥‥‥お黙りなさい、女公爵殿。
 わたしはこれでも、皇女を名乗れる身よ‥‥‥。
 あなたよりは上だわ」

 少女が背伸びをしているようにしか見えないわねえ。
 ああ、情けない。
 これで魔王は息子の嫁に迎え入れようなんて思わないだろうし。

「どこかで殺して帰るしかないか‥‥‥。
 もう、債権の価値もない大神官四名。
 生かしておいても無駄だわー‥‥‥」

 ぼそりとたまたま呟いた言葉が、エリーゼ以下三名の大神官たちの蒼白な画面に死相を表した。
 あ、しまった。
 まあ、いいか。
 恐怖を与えた方が、魔族の方々には美味しい食事になるでしょ。
 食料品として買い取ってもらおうかなー?
 
「魔王様。
 宜しいですか?」

 ハーミアは過去を見ていたのだろう。
 少しばかりぼんやりとしていた魔王に声をかけた。

「ん?
 あ、ああ。
 何かな? 債権の価値がどうとやら言われていたが。
 まさか、食糧として買い取れなどど言わんだろうな?」

「あれ‥‥‥。
 いえ、まあ、その。
 そうですね、もう用済みでして。
 そちらも何か使い道ございませんでしょ?」

「あのなあ、ハーミア殿。
 魔族をなんだと思われている‥‥‥。
 人を食す魔族な確かにいるぞ?
 吸血鬼、人狼、その他にもな。
 しかし、我らは文明人だ。
 戦いはすれど、同じ言葉をしゃべる者同士を食すなど‥‥‥勘弁願いたいな」

 あらら‥‥‥断られたわ。
 そんなにほっとするようなことないじゃない。 
 単なるモノが、意志を持つなんて生意気なのよ‥‥‥
 あの、エミリオ皇太子にも同じようにさんざん恐怖を味わわせてやるわ。
 皇帝にも、ね。

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